最近、近所で見かけなくなった? 書店の衰退トレンドやこれからの見通しとは
配信日: 2020.01.16
執筆者:上野慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士
不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。
はやり・すたりは、時の流れ
技術の進歩や社会の価値観が変化していく中で、必要性がなくなり、代わりのものに取って変わられていくのは、時の流れです。運営者側の都合によるもののほかに、ユーザーがどんどん減っていることに起因するものもあります。
昭和の終わりから平成の初期にかけて流行した「ポケベル」は、2019年9月にサービスを終了しました。続いて登場した携帯電話の「ガラケー」も、機種によっては2026年3月までに通信サービスが終了することが決まっています。
本屋さん(書店)では、どうでしょうか
かつては2万を超えていた日本の書店数。2010年度1万2649、2015年度1万855と減少を続けて、2018年度には1万の大台を下回る9692となりました。
売り場面積も、ここ10数年間のピーク時で96万坪弱だったものが、2015年度90.2万坪、2018年度82.5万坪と、こちらも大きく減少しています。(日本出版販売株式会社『出版物販売額の実態』より引用)
1店あたりの売り場面積は、2015年度の約83坪が2018年度には約85坪と少し増えています。あくまでも単純な割り算結果ですが、中小規模の書店が減る一方でショッピングセンターなどに見られる大型店に集約化されている状況なのかもしれませんね。
また、総務省の家計調査(※)によれば、1世帯あたりの読書に関する年間支出金額は2017年で1万628円(書籍7478円+週刊誌を含む雑誌3150円)。2007年の1万3896円(書籍9462円+週刊誌を含む雑誌4434円)に対して、10年間で1/4近く減少しています。
若者層を中心に「活字離れ」が指摘されるようになってから久しい状況です。
また、ネット環境の進展等によって紙媒体に頼らなくてもスマホ・タブレットなどのモバイル機器で活字に容易にアクセスできる「紙離れ」の時代でもあります。さらに、わざわざ書店まで出掛けなくても書籍は簡単にネットで購入することもできるのです。
こうした状況を考えると、冒頭のような乗り物関係の事例のように、書店もいずれその姿をほとんど見られなくなってしまうのでしょうか。
書店や書籍(本)に対する人びとの意識は?
読書週間(10月27日~11月9日)を前に、読売新聞社が2019年9~10月に実施した全国世論調査(対象は全国の18歳以上の有権者3000人)の結果によれば、書店や書籍(本)に関して次のような意識や志向が見られました。
◇住まいの地域で、書店が減っていると感じる 64%
◇書店が自宅から気軽に行ける場所にあった方がよい 82%
*あった方がよいと思う理由(2つまで回答)
・本を手に取って選びたいから 65%
・気軽に本を買えるから 54%
◇読む本を選ぶきっかけは?(いくつでも回答)
・書店の店頭で見て 46%
・ベストセラーなどの話題をきっかけに 26%
・新聞や雑誌などの広告を見て 22%
書店が住まいの近くにあってほしい存在であること、そしてネット社会とはいいながら、本は現物を書店で手に取って買いたいニーズがまだまだ健在であることを実感させられる結果なのではないでしょうか。
まとめ
店に関するこうした社会環境の変容の一方で、人びとの働き方やライフスタイル、そして価値観なども大きく変化しています。
書店も、カフェを併設して座ってゆっくりと本選びができるところ、宿泊してじっくりと本と向き合えるところ、本好きたちが各自こだわりのジャンルの書籍を持ち寄って共同運営する「ブックマンション」等々、これまでにはなかったスタイルも生まれています。書店の将来の発展や可能性につながる現象かもしれません。
書店を“絶滅危惧種”にしないためにも、生活圏にあるお店にときどきは出掛けて、お気に入りの1冊を探してみてはいかがでしょうか。
出典:(※)総務省統計局「家計ミニトピックス(家計調査)」[2018年10月]「読書に関する支出」
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士