更新日: 2019.12.09 子育て
10月に開始された幼児教育・保育の無償化、対象外の費用は?親の働き方への影響は?
筆者を含めすでに該当年齢を過ぎた子どもがいる家庭は「もっと早く実施されてほしかった」と残念な思いもありますが、子育て家庭の助けとなる制度が導入され、これから子育てと働き方の変化にも影響を及ぼしていくでしょう。
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
くらしとお金のFP相談センター代表
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。
2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。
全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。
東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。
自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。
2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。
学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。
無償化でキャッシュフローが改善される
幼児教育・保育の無償化によって、ファイナンシャルプランナーとしてライフシミュレーション・キャッシュフロー表を作成するのが楽になりました。無償化以前は希望する地域の幼稚園や保育所の利用料を調べる必要がありました。保育所については前年度の所得によって保育料が変わるため、その計算も必要でした。
しかし、無償化によって3歳~5歳の幼稚園・保育所の利用料については、ほぼ0円として考えることができます。そのため、この時期のキャッシュフローはとても良くなり、第2子以降の出産への金銭的負担の抵抗感は少なくなりました。
無償化となる利用料には上限がありますが、仮に月額2万5000円の利用料が無償になれば、3年間の36ヶ月の場合、90万円分貯蓄に回せます。とはいえ、無償化といっても対象外の費用はかかります。
無償化の対象外となる費用にはどんなものがあるのか
無償化の対象外となる費用として、延長保育料があります。例えば18時までが保育時間の場合、どうしても迎えに行くのが18時を過ぎて19時まで保育所に預かってもらうと、その延長利用料は有料となります。
また、勤務時間が夜間だったり、不規則な方の場合は、普段は認可保育所や認定こども園を利用していても、それとは別の認可外保育施設などを利用することがあります。
出勤しないといけない日や時間に普段利用している認可保育所や認定こども園がお休みの場合などです。その場合に利用した認可外保育施設などの利用料については無償化の対象とはなりません。
ほかには保護者が幼稚園、保育所へ直接支払っている送迎費、食材料費、行事費などの経費は対象外です。ただし、副食費(おかず・おやつ代など)は認定こども園、認可保育所、幼稚園に通う年収360万円未満相当世帯もしくは第3子以降の子どもたちが無償化の対象になります。
また、保護者の布団の持ち帰り負担を軽減するために、布団レンタル制度を導入している場合や、絵本や習い事を導入している施設では保護者にその費用負担を求める場合もあります。これらも無償化の対象外です。
さらに利用料が無償化となる上限を超えている場合もありますので、キャッシュフロー表には、幼稚園・保育所にかかる支出はある程度組み込むようにしてください。もちろん児童手当で対象外の費用の補填をすることもできます。
0歳~2歳児は無償化の対象にならない
0歳から2歳は、住民税非課税世帯の方のみが無償化の対象になります。0歳から2歳の子どもがいて住民税非課税で保育所に預けて働く方のことを想像すると、大変なご苦労をされているのかと思います。
該当する世帯はシングルマザーやシングルファーザーでなんらかの事情でほぼ1月~12月の一年間ほとんど収入を得られなかったものと思われます。夫婦2人と子どもの世帯だとしても、高齢家族の介護のために退職したり、自営業や独立して事業を立ち上げた場合には、当面は住民税非課税となる場合もあります。
育児との両立のために自宅でできる仕事を始める起業ママを応援する自治体も数多くあります。もしも該当する場合は、保育所の入所とともに無償化の申請をしましょう。
第2子の出産計画にも影響
夫婦共働きで子育てしている家庭の多くは、産休・育休で収入が減ったとしても住民税非課税までにはならないでしょう。所得によりますが、認可保育所の場合で0歳~2歳児は夫婦が一年間満額の給料をもらっていれば月額5万円以上の保育所利用料となるケースも珍しくありません。
そうなると職場復帰して第1子が保育所に入園し、無理して仕事と0歳~2歳の子育て(保育所の送迎負担を含む)の両立をして一年間満額の給料をもらうようになると、翌年の保育所利用料が上がります。
そうなる前に第2子を妊娠して、再び産休・育休に入って一年間満額の給料をもらわないようにした方が良いと考えるかもしれません。第2子の育休期間が明ける頃には第1子がもうすぐ3歳になって、その子の保育所利用料が無償になります。
先に挙げた起業やなんらかの事情で住民税非課税世帯だった場合は、なおさらそう考えるかもしれません。しかし、住民税非課税世帯に該当するままで子育てをしながら生活するのはとても大変です。
また、夫婦共働きでの収入を前提として子どもが生まれる前に住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合も、産休・育休での一時的な収入減が家計を苦しめる場合があります。
幼稚園・保育所利用料の無償化は歓迎ですが、それで油断することなく結婚、出産、育児、働き方、将来の教育資金・進学資金の準備についてしっかりと考えていきましょう。
執筆者:西村和敏
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士