更新日: 2019.10.24 その他

30代で世帯年収1000万円以上でも安心できない! 教育費を上手に貯める方法とは?

執筆者 : 新美昌也

30代で世帯年収1000万円以上でも安心できない! 教育費を上手に貯める方法とは?
教育費支援制度には所得制限があります。多くは低所得世帯を対象にしたものです。世帯年収1000万円以上の世帯となると教育費支援制度はほぼありません。高所得者層の中には、住宅ローンや、教育費(塾代、習い事を含む)、交際費にお金をかけすぎ、貯蓄ができない方がいます。
 
その結果、老後資金が貯められないだけではなく、大学進学費用を借り入れに頼らざるを得ず、多額の住宅ローンなどを抱えていると、教育費破たんする可能性があります。教育費で破綻しないために早めに大学進学費用の準備をしましょう。
 
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

教育費支援制度には所得制限がある

2019年10月1日から幼児教育・保育の無償化が始まります。10月から3~5歳児は原則全世帯、0~2歳児は住民税非課税の世帯を対象に認可保育所や認定こども園、幼稚園などの利用料が無料になります。
 
小学校、中学校における教育費支援制度には「就学援助」があります。だれもが義務教育を受けられるよう、経済的に困っている方に、小・中学校の学用品、学校給食等に係る費用を援助しています。一般に生活保護世帯とそれに準じた家庭が対象です。
 
高等学校における教育費支援制度には「高等学校等就学支援金」「私立高校等授業料軽減助成金」「高校生等奨学給付金」があります。
 
「高等学校等就学支援金」は、授業料の助成制度です。年収目安約910万円未満の世帯が対象です。公立高校では約12万円(授業料実質0円)、私立高校では保護者の所得に応じて約12~30万円が助成されます。
 
なお、2020年4月から私立高校等に通う生徒の「就学支援金」の上限額の引上げが行われますが、対象となるのは、年収目安590万円未満の世帯の生徒です。
 
「私立高校等授業料軽減助成金」(名称は自治体により異なる)は、自治体独自の支援制度です。東京都の場合、年収目安約760万円未満の世帯が対象です。就学支援金と授業料軽減助成金の合計で約46万円の授業料(在学校の授業料が上限)が軽減されます。
 
「高校生等奨学給付金」は、教科書代、教材費など、授業料以外の費用の助成制度です。年収約250万円未満の世帯が対象です。国公立高校では1年間に約3万~13万円、私立高校では1年間に約5万~14万円助成されます。
 
2020年4月1日より、大学や短期大学、専門学校などの授業料・入学金の減免と返済不要の給付型奨学金を支給する高等教育無償化が始まります。住民税非課税世帯、およびそれに準ずる世帯(世帯年収約380万円未満)の学生が対象です。
 
住民税非課税世帯の学生は、給付型奨学金として、設置者(国公立・私立)、通学形態(自宅通学・自宅外通学)により、月額2万9200円~7万5800円が支給されます(返済不要)。また、私立大学に通う場合は、最大で、入学金26万円、授業料70万円の減免を受けることができます。
 

「国の教育ローン」も「国の奨学金」も所得制限がある

教育ローンには、民間金融機関の教育ローンと国の金融機関である日本政策金融公庫の教育ローン(「国の教育ローン」)があります。金利や返済期間など有利な点がある「国の教育ローン」をまず検討したいところです。
 
しかし、扶養する子供の人数によって世帯年収の上限があり、たとえば、会社員で子ども2人の場合890万円、3人の場合990万円が上限となっています。
 
大学生の約3人に1人が利用している日本学生支援機構(国)の貸与型奨学金にも世帯年収の上限があります。高校で申し込む場合、4人世帯(給与所得者)では、年収の目安は、第一種奨学金(無利子)は747万円以内、第二種奨学金(有利子)は1100万円以内、併用貸与は686万円以内となっています。
 

どうやって教育費を貯めたらよいか?

高校までの教育費は家計の中でやりくりするのが基本です。大学等の学費を目標に貯めましょう。国立大学の場合、文系、理系かによって学費に大差はなく、4年間で約250万円程度です。私大文系は370万円~420万円、私大理系530万円~580万円程度です。
 
これを参考にいくら貯めるか目標を立てましょう。目標額が決まり何年で貯めるかを決めれば、毎月いくら貯めたらよいか決まります。目標額のうち一部は、子どもが15歳到達後の最初の年度末(3月31日)まで、児童手当を活用できます。
 
所得制限限度額未満の方は
(1)3歳未満は月額1万5000円
(2)3歳~12歳は、第1子および第2子は月額1万円、第3子以降は月額1万5000円
(3)中学生は月額1万円

が支給されます。15年間で200万円程度は貯めることができます。
 
一方、所得制限限度額以上の方の支給額は、一律、月額5000円ですので、15年間で90万円しか貯めることができません。所得制限限度額(令和元年6月から令和2年5月分)は、例えば、平成30年中の扶養人数2人の場合706万円となっています。
 
ここで、所得額とは、給与所得者の場合、給与等の収入金額から給与所得控除額を差し引いた後の金額をいいます。例えば、給与等の収入金額が1000万円超の方の給与所控除額は現在220万円(上限)ですので、所得額は780万円になります。なお、両親とも就労されている場合は、所得の高い方で判断されます。
 

教育資金の積立方法

安全性が高く(元本割れしない)、換金しやすい金融商品で積み立てるのがポイントです。運用期間が長ければ収益性を重視して投資信託で運用する手もあります。主な金融商品を見てみましょう。
 
確実に貯めるために、毎月、自動的に積み立てていく仕組みを活用するのがポイントです。貯蓄の苦手な方でも自動的にお金を貯めることができます。
 
「自動積立定期預金(貯金)」や保険を活用するとよいでしょう。保険では「学資保険(子ども保険)」のほか、「低解約返戻金型終身保険」などがあります。ただし、予定利率が低い現在、戻り率は期待できません。戻り率とは、払い込んだ保険料に対する満期までの受取総額の割合です。
 
勤務先に財形制度があれば、給与天引きで貯められる「一般財形貯蓄」を利用するのもよいでしょう。
 
運用期間が長ければ「つみたてNISA」を活用する手もあります。投資信託への投資から得られる分配金や譲渡益が非課税なのが特長です。年間40万円が限度で、非課税期間は最長20年間です。元本は保証されていませんが、長期間運用すればリスクを抑えながら大きな収益を得られる可能性があります。
 
そのほか、「個人向け国債(変動金利型10年満期)」などもあります。それぞれのメリット、デメリットを確認し、自分に合った金融商品で積み立てましょう。
 

まとめ

保育料は収入が多いほど高くなる仕組みなので、3~5歳児に関しては、無償化により高所得層の方が恩恵を受けることになります。
 
また、認可保育所では、両親ともフルタイムで働いている場合には入所の優先順位が高いので、例えば両親ともに外資系企業にフルタイムで働くことで、高所得世帯の子が認可保育所に入所できる確率も高まります。
 
幼児教育・保育の無償化は高所得世帯を優遇する制度といえます。浮いたお金は大学進学費用等に貯めておきましょう。その他の教育費支援策に関しては、所得制限(上限)があるので、高所得層は基本的に利用できない場合が多いでしょう。
 
金利など有利な「国の教育ローン」「国の奨学金」を利用できないと、相対的に金利の高い銀行などの教育ローンを利用せざるを得ません。
 
住宅ローンに教育ローンの返済が加わり、親の介護費用などの負担も加われば、老後資金が貯められないだけではなく、家計が破たんするリスクもあります。ライフプランをしっかり考え、家計を見直し、老後資金の準備とともに、早めに教育資金の積み立てを行いましょう。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー


 

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