更新日: 2019.06.26 その他

地方だけの話ではない?都市部でも増加する空き家問題の対策

執筆者 : 小山英斗

地方だけの話ではない?都市部でも増加する空き家問題の対策
総務省統計局の調査によれば、全国の空き家は増加の一途をたどり、地方だけでなく人口が集中している都市圏でさえも、増加がみられているようです。
 
空き家の増加の背景にはさまざまな問題があるため、解決のための決定打を見いだすのは難しそうです。
 
今回は、空き家の状況と、その対策の一つとしてある「空き家のための譲渡所得の特別控除」についてみていきたいと思います。
 
小山英斗

執筆者:小山英斗(こやま ひでと)

CFP(日本FP協会認定会員)

1級FP技能士(資産設計提案業務)
住宅ローンアドバイザー、住宅建築コーディネーター
未来が見えるね研究所 代表
座右の銘:虚静恬淡
好きなもの:旅行、建築、カフェ、散歩、今ここ

人生100年時代、これまでの「学校で出て社会人になり家庭や家を持って定年そして老後」という単線的な考え方がなくなっていき、これからは多様な選択肢がある中で自分のやりたい人生を生涯通じてどう実現させていくかがますます大事になってきます。

「未来が見えるね研究所」では、多くの人と多くの未来を一緒に描いていきたいと思います。
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増え続ける空き家の背景と問題

以下のグラフは、総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」から引用した「空き家の推移」です。
 
グラフからも、空き家が増加の一途であることがよく分かります。少し前の数字になりますが、平成25年時点の全国の空き家数は約820万戸、空き家率は13.5%でした。10軒あったら1軒以上は空き家があるという状況です。
 

※1
 
空き家が増加している背景として、以下のような要因が絡み合っていることが考えられます。
 
・雇用が都市部に集中することによる地方の空洞化
・核家族化により相続時に引き継ぐ者がいない
・出生率低下による人口減少
・世帯数の増加以上に住宅数が増えている
・高齢化により介護施設の利用増加
 
また、長期間放置された空き家が増えることにより、以下のような問題が地域住民にも深刻な影響を及ぼす可能性があります。
 
・風景・景観の悪化
・防災性の低下:倒壊、崩壊、屋根・外壁の下落、火災発生の恐れ
・防犯性の低下:犯罪の誘発
・ごみの不法投棄
・衛生の悪化、悪臭の発生:蚊、蝿、ねずみ、野良猫の発生・集中
・その他:樹枝の越境、雑草の繁茂、落ち葉の飛散等
 

増加する一戸建ての空き家

ではどんな空き家が増えているのか、その内訳をみてみたいと思います。
 

 
上の表も総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」からの引用になります。表をみると分かるとおり、一戸建ての空き家の増加が突出しています(表1-2)。さらに、その一戸建ての内訳をみると、「その他の住宅」が大半を占めていることが分かります(表1-3)。
 
ここでいう「その他の住宅」とは、「賃貸用の住宅」「売却用の住宅」「二次的住宅(別荘など)」以外の住宅です。例えば、転勤・入院などのため、居住世帯が長期にわたって不在の住宅や、建て替えなどのため取り壊すことになっている住宅のほか、空き家の区分が困難な住宅などです。
 
以下は平成28年2月に出された「横浜市空家等対策計画」からの抜粋です。長屋・共同住宅(いわゆるアパートやマンションなど)の空き家に「賃貸用の住宅」の割合が多いのに対し、一戸建て住宅の場合は「その他住宅」の割合が圧倒的に多いことが分かります。
 

 
同じ空き家でも、共同住宅の場合は「賃貸用の住宅」の割合が大きいため、市場で流通しているものと考えられます。一方、一戸建ての場合は「その他の住宅」の割合が大きいため、空き家問題は一戸建ての方がより発生しやすいと見てとれます。
 
また、以下の例では65歳以上の高齢者層の一戸建ての持ち家が多いことからも、一戸建てが空き家予備軍となりやすいことが伺えます。
 

※2
 

空き家のための譲渡所得の特別控除とは

「空家等対策特別措置法」が成立し、空き家の所有者に市町村が行政指導や命令を出すことができるようになりました。また、空き家防止の観点から、特定の条件のもと家が賃貸に出された場合には、借主に対して家賃の一部を国や自治体が補助するなどの対策が行われています。
 
税金の面でも、「空き家の譲渡所得の特別控除」というものがあります。これは、相続人が相続により生じた古い空き家、またはその空き家を取り壊した後の更地を、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの間に譲渡した場合、譲渡所得から3000万円を特別控除できる制度です。
 
この特別控除が適用されるためには、まず対象の物件が以下の条件にあてはまることが必要です。
 
・昭和56年5月31日以前に建築されたこと。
・区分所有建物登記がされている建物でないこと。
・相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと。
 
2つ目の条件にあるように、マンションなどの区分所有建物は対象外、つまり一戸建て住宅が対象の制度と言えます。上記以外にも、「譲渡対価が1億円以下であること」などの要件があるため、適用されるには少々ハードルの高い制度かもしれません。
 
しかし、先に述べてきたように、一戸建ては空き家問題が発生しやすいことからも、使える制度はうまく活用して、空き家防止に役立てられればと思います。
 
出典
※1 総務省統計局「日本の住宅・土地-平成25年住宅・土地統計調査の解説-」
※2 横浜市「横浜市空家等対策計画」
 
執筆者:小山英斗(こやま ひでと)
CFP(日本FP協会認定会員)
 

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