更新日: 2020.04.06 その他

奨学金を借りることで、無事に学生生活を送ることができたA君。これから始まる返済生活を前に知っておきたいこと・・

執筆者 : 林智慮

奨学金を借りることで、無事に学生生活を送ることができたA君。これから始まる返済生活を前に知っておきたいこと・・
奨学金を借りることで、無事に学生生活を送ることができたA君。3月に卒業して半年、社会人生活にも慣れてきました。
 
そして、卒業後7ヶ月目の10月から奨学金の返済が始まります。
 
林智慮

執筆者:林智慮(はやし ちりよ)

CFP(R)認定者

相続診断士 
終活カウンセラー 
確定拠出年金相談ねっと認定FP
大学(工学部)卒業後、橋梁設計の会社で設計業務に携わる。結婚で専業主婦となるが夫の独立を機に経理・総務に転身。事業と家庭のファイナンシャル・プランナーとなる。コーチング資格も習得し、金銭面だけでなく心の面からも「幸せに生きる」サポートをしている。4人の子の母。保険や金融商品を売らない独立系ファイナンシャル・プランナー。

定額返還方式と所得連動返還方式

奨学金の返還方法には次の二つがあります。
 
1、定額返還方式・・貸与総額に応じて決定された一定の金額で返還する
2、所得連動返還方式・・前年の所得に報じて返済月賦が決まる方式
 
所得連動方式は、2017年4月以降の第1種の奨学生のみが選択できる返還できる方法です。どちらの返還方法を選択しても返済総額は変わりません。一方、第2種奨学金の返還方法は定額返還方式のみです。
 
定額返還方式には月賦返還と月賦・半年賦併用返還があります。住宅ローンの月々返済とボーナス併用返済のような方法です。
 
返還期間は、貸与総額と『奨学金返還年数算出表』に定める『割賦金の基礎額』から『返還年数』を算出し、月賦返還は「返還年数」の12倍の回数で、併用返還の半年賦分は『返還年数』の2倍の回数です。また、利息が掛かる第2種も併用して借りている場合、貸与終了時が同時であれば、合計して返済期間を算出します。
 

第一種のみが選択できる所得連動返還方式

所得連動返還方式は、2017年4月以降に第一種奨学生として採用された場合に選択できます。前年度の所得により、10月から翌年9月までの返還月額が決まります。
 
定額返還方式より返済金額が少なくなったり多くなったりしますが、総返済金額はどちらの返済方法でも変わりません。よって、月額返還が少ない場合は返済期間が長くなり、多くなる場合は返済期間が短くなります。
 
返還月額の最低金額は2,000円です。たとえ前年の所得がゼロでも、月々の返済額がゼロにはなりません。
 
初年度の返済は、定額方式で算出した返済月額の半額を返済します。2,000円未満の場合は2,000円です。2年目以降の返済は、前年の課税所得に9%を掛けて12で割った額が返還月額になります。もし、返済中に被扶養者となった場合、扶養者と返済者の所得の合計により返済額を際移出します。
 
返済が困難な場合は2,000円に変更することが可能です。
 

定額方式の返済だけど、所得連動方式に変更できる?

2017年4月以降に第1種奨学金の奨学生として採用の場合は、変換方法を定額方式から所得連動方式へ変更することができます。それ以前の採用の場合は、変更ができません。
A君は2015年4月の奨学生のため、所得連動返還方式への変更はできません。
 
所得連動返還方式は、機関保証制度を選択していることが条件です。人的保証制度を選択している場合は、機関保証制度に変更する必要があります。その際、保証料を保証期間に一括で支払う必要があります。
 
一方、所得連動返還方式を選択していても、定額返還方式での返還になる場合があります。
 
・マイナンバー提出書類など、機構の定める書類を提出しなかった場合
・海外長期滞在により、機構が課税所得を把握できなかった場合
・課税所得証明を求められたのに、機構の定める期限までに提出しなかった場合
・被扶養者となった際、扶養者との合計金額で算出した返済額が、定額返還月額を超える場合
 (※機構=日本学生支援機構)
 

困ったら、まず日本学生支援機構に相談

返済が困難なときのための制度があります。
 
所得連動返還方式で、初年度に定額返還方式の半額の返済でも厳しい時は、願い出により最低返還金額2,000円で返還することができます。ただし、延滞している方、口座未加入の方の場合は、2,000円の返還の申請はできません。
 
また、返還期限猶予を願い出て、返済を先延ばしすることもできます(返還期限猶予)。減額返還は、定額返済額を1/2もしくは1/3に減額し、その分の返還期間を2倍3倍とする制度ですが、定額返還方式のみの適用で、所得連動返還方式の適用はありません。
 
返済が厳しい場合は、早めに機構に相談しましょう。
 
Text:林 智慮(はやし ちりよ)
CFP(R)認定者

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