更新日: 2019.01.10 その他

相続手続きがめんどくさいから空き家が増えている!? 日本中に広がる空き家問題の現状と課題

執筆者 : 宿輪德幸

相続手続きがめんどくさいから空き家が増えている!? 日本中に広がる空き家問題の現状と課題
近年、日本中で空き家が増え続けています。
 
最近では、刑務所を逃走した囚人の捜査に、空き家の多さが障害になっていたというニュースもありました。
 
このように大きな社会問題となっている空き家ですが、維持するにも結構な費用がかかるのです。対策はお早めに!
 
宿輪德幸

Text:宿輪德幸(しゅくわ のりゆき)

CFP(R)認定者、行政書士

宅地建物取引士試験合格者、損害保険代理店特級資格、自動車整備士3級
相続専門の行政書士、FP事務所です。書類の作成だけでなく、FPの知識を生かしトータルなアドバイスをご提供。特に資産活用、相続トラブル予防のため積極的に「民事信託(家族信託)」を取り扱い、長崎県では先駆的存在となっている。
また、離れて住む親御さんの認知症対策、相続対策をご心配の方のために、Web会議室を設置。
資料を画面共有しながら納得がいくまでの面談で、納得のGOALを目指します。
地域の皆様のかかりつけ法律家を目指し奮闘中!!
https://www.shukuwa.com/

【空き家の最大の発生原因は相続手続きの不備】

不動産の所有者が亡くなると、相続により遺産が分割されます。不動産も相続人に所有権が移転しますので、その時点で相続登記をするのが本来の姿です。
 
しかし、登記の手続きは面倒ですし、登録免許税(相続の場合0.4%)や司法書士報酬なども発生します。
 
相続登記をしなくても、誰かが住んで固定資産税を納めているうちは何の支障もありません。さらに、行政などから「相続登記をしなさい」というような督促や罰則もありませんので、しない方が多いのが実情なのです。
 
相続登記のされていない不動産は、法定相続人全員の共有となります。
 
長年登記が放置され、相続の度に共有者は増え続け、売却などの処分が必要になったときになって初めて、困難な状況が発覚します。これが「所有者不明不動産」です。
 

【所有者の認知症で空き家になることも】

高齢の所有者が施設などに入所して、誰も住まなくなった自宅が空き家になる場合もあります。施設に入ったとしても、すぐに家を処分する方は少数です。長年住んできて愛着もありますし、処分する決断はそう簡単にはできません。
 
そして、その状態で所有者が認知症になると、不動産の売買契約などの法律行為ができなくなります。そのため、本人が亡くなるまで、空き家の状態で維持せざるを得なくなります。
 

【空き家にかかる費用】

誰も住まない家でも、維持するのにはお金がかかります。空き家は人が住んでいる家よりリスクが高いため、保険料も割高になります。
 

(1)固定資産税

固定資産税の税率は1.4%ですが、小規模住宅用地(200平方メートルまで)は6分の1に、一般住宅用地(200平方メートル~家屋の床面積の10倍までの部分)は3分の1に軽減されています。
 
しかし、平成27年に施行された「空き家対策特別措置法」で、「市町村が特定空き家(状態が悪い危険な空き家)とみなし、所有者等に対し必要な措置をとることを勧告した場合は、固定資産税等の住宅用地特例の対象から除外する」こととなりました。
 
つまり、特定空き家になると、例えば、10万円だった宅地の固定資産税が60万円になったりするのです。
 

(2)保険

空き家は、自然災害で被害が発生しやすく、放火される危険も高くなります。
 
そして、管理の不備により他人に損害を与えた場合、損害賠償責任を負うことも考えなくてはなりません。この場合の所有者の責任は無過失責任(過失がなくても責任が発生する)です。
 
そこで、そのようなリスクに備えるためにまず考えられるのは、火災保険です。しかし、居住者がいる家にかけられる住宅向け火災保険には加入できず、割高な事業物件向けの火災保険に加入することになります。
 
さらに、他人に対する賠償責任を担保するため「施設賠償責任保険」の加入も必要になるでしょう。
 

(3)管理費用

住人がいない住宅は劣化が早くなります。また、特定空き家にしないためにも、定期的な点検やメンテナンスが必要になります。さらに、自分でできないなら、空き家管理の専門業者を利用することも必要になります。
 

【空き家対策】

相続手続きに不備がある空き家の問題は、共有者の誰かが問題提起して、解決にむけて行動を開始するしかありません。
 
誰が共有者であるかの調査からスタートすることになりますが、戸籍謄本などは配偶者と直系血族以外は委任状がなければ取得できず、共有者全員分の収集は非常に困難です。古い世代の登記の場合は、「職務上請求書」により、戸籍などを取得できる行政書士などの専門家へ依頼するのが確実です。
 
また、認知症による空き家に関しては、元気なうちに「任意後見」や「民事信託(家族信託)」を締結することが大事です。家族の判断で処分できる体制をつくることで、空き家を予防することができます。
 
Text:宿輪 德幸(しゅくわ のりゆき)
AFP認定者、行政書士

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