更新日: 2019.09.03 その他
夫の借金に妻は連帯責任の義務はあるのでしょうか?夫の隠れた借金をみつけた場合、あなたならどうしますか?
もし配偶者に借金があった場合、自分にも連帯責任は生じるのでしょうか。また、相手の借金を理由に離婚することは可能なのでしょうか。
結婚3年目のC子さんの例をみてみましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士/東京桜橋法律事務所
2009年弁護士登録。2016年にニューヨーク州のロースクールへ留学のため登録抹消するも、翌年復帰。
ITベンチャーを中心とした企業法務から、個人の法律問題まで、幅広く手掛ける。一歩先の展開を見通す状況分析を心掛けると同時に、依頼者の立場・心情に対する的確な理解を大切にしている。座右の銘は「生涯成長」。
目次
C子さんの事例。自分の知らないところで夫に150万円もの借金が…
28歳のC子さんは結婚3年目。
職場で知り合った同い年の旦那さんは、少しやんちゃなタイプです。お互いお酒が好きで意気投合し、付き合って2年で結婚しました。
3年経っても優しい旦那さんですが、C子さんからすると見栄っ張りだと感じることも。旦那さんは飲みに行くことが多く、稼ぎの少ない友人や会社の後輩には、つい気前よくおごってしまいます。「うちだってそんなにお金があるわけじゃないのに…」と不満をこぼすC子さんですが、それに対して旦那さんは「けちけちするな」と聞く耳を持ちません。
そんな折、C子さんの旦那宛てに一通の手紙が届きました。見慣れない会社からの手紙に違和感を持ったC子さんは、旦那宛てとわかりつつも封を切りました。その内容は、多額の延滞金が発生しているというもの。借入残高は150万円でした。
なんと、旦那さんはC子さんに内緒で150万円もの借金をしていたのです。
帰宅した旦那さんを問い詰めると、結婚前からの友人との飲み会で費用がかさみ、このような借金になったとのこと。旦那さんが反省していることを感じたC子さんは、「もう2度としない」と約束させ、C子さんの貯金を切り崩して借金を返済しました。
しかし、それから半年後のことです。再び自宅に届いた催促状で、旦那さんの借金が発覚しました。額は30万円ほどでしたが、まだ1年も経っていないのに…とC子さんはあきれています。
今回のことで、C子さんは「離婚」の2文字が頭をよぎっています。不安なことは、旦那の借金に「連帯義務」はあるのかという点です。そして、この件で離婚することは可能なのでしょうか。
*物語はフィクションです
借金を隠していた夫。妻に連帯義務はあるのでしょうか。また、これを理由に離婚は可能なのでしょうか。東京桜橋法律事務所の内藤弁護士にお伺いしました。
C子さんのケースでは、借金の連帯責任は原則ありません。債務は個人に帰属すると思われます。
ただし、民法第761条の「日常の家事に関する債務の連帯責任」をみると、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方は、これによって生じた債務について、連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨を予告した場合は、この限りでない。」と記載されています。
つまり、日常的な買い物など、生活によって生じた支払いは連帯債務になる場合があります。
また、借入金については、例えば生活費の足しにするために借入れをする場合は、通常金額は小さい範囲に収まるため、やはり日常家事の範囲に含まれるとして夫婦の連帯責任となる可能性がありますので気をつけましょう。これに対して、飲み会などの遊興費のために多額の借財をしてしまったケースでは、連帯債務になるとは考えにくいです。
離婚の理由になるかという点に関しては、借金の目的が「飲み代、ギャンブルなどの場合」で、繰り返し行われたとしたら認められる可能性があります。
C子さんのケースは、旦那さんの借金の目的が飲み代で、一度注意したにも関わらず借金をしていますので、離婚が認められる可能性はあると考えられます。
原則、妻に夫の借金の連帯責任はない。飲み代目的で借金を繰り返せば、離婚の可能性も
原則、妻に夫の借金の連帯責任はないことがわかりました。ただし、日常的な買い物で生じた支払いや少額の借金は、連帯責任の可能性があるとのことです。
また、借金の目的が飲み代やギャンブルなどで、複数回繰り返した場合は離婚の理由として認められる場合があると言います。
借金の金額や目的によって連帯責任の有無が変わりうるという点は、注意が必要ですね。家族に内緒の借金がある人は、「自分のお金だから」「相手に迷惑はかけないから」と考える人もいるかもしれません。しかし、借金は少額でも家庭のライフプランに大きく関わります。
パートナーの信頼を失わないためにも、後ろめたいことはできるだけ早く相手に打ち明けることが望ましいですね。
Text:FINANCIAL FIELD編集部
監修:内藤 悠作(ないとう ゆうさく)
弁護士/東京桜橋法律事務所