最終更新日: 2019.01.10 公開日: 2018.05.03
暮らし

都会の生産緑地が危ない2022年問題とは

東京都をはじめ大都市圏の市街化区域には、都会に農地を残す目的で、生産緑地の指定を受けた土地があります。農地として扱われるために、固定資産税も宅地に比べ安くなっています。
 
この指定を受けると、30年間は利用区分を変更できません。農地として作物を作ることが前提ですが、一部は雑木林や耕作放棄地となっているところもあります。
 
この生産緑地の多くが、2022年に生産緑地の指定が解除されるため、解決が求められているさまざまな問題があります。
黒木達也

Text:

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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黒木達也

執筆者:

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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2022年問題。宅地が大量供給される?

この市街化区域の生産緑地の指定が解除されると、その所有者は自治体への買い取り請求ができ、宅地への転換も進みます。
 
現在では、畑として利用され、野菜の生産などで都市農業の一翼を担う一方で、災害時の避難場所としての役割や、住民が自然に触れられる貴重な空間として、都市生活にかかわる大切な場所となっています。
 
1982年に施行され生産緑地の指定を受けた土地が、30年経過した2022年に、環境は大きく変わります。生産緑地が減少する可能性があるからです。こうした土地は都市近郊に多くあり、周囲を住宅地に囲まれたところもかなりあります。
 
東京都をはじめ、神奈川県、愛知県、大阪府など大都市近辺に多く見られ、東京23区で見ると、練馬区、杉並区、世田谷区、江戸川区に広く点在しています。都心部の千代田区、中央区などにはほとんどありません。
 
東京都の生産緑地の面積は、現在3000ha以上あり、その8割ほどが2022年に指定期限がきます。農地として農業を続けるためには、高齢化と後継者難が大きく影響しています。
 
生産緑地の所有者が買い取りを申し出ると、自治体は求めに応じる必要があります。財政難の自治体が買い取るケースは少ないため、実際はマンションや戸建ての開発業者に売却し、かなり宅地化が進むと思われます。
 
そうなると宅地供給が大幅に増え、結果として土地価格の下落にもつながるおそれが出てきます。
 

地価を下落させる要因にもなり得る

大都市のベッドタウンでは空き家の増加など、地価の下落要因も存在するなか、大量の宅地供給は好ましい事態ではありません。すでにこれまで、生産緑地所有者の死亡や、指定を受けていない農地を中心に、宅地化が徐々に進んできました。
 
確かに土地の購入者の立場からは、地価が下がることは安く土地が購入できるため、歓迎される面もあるかもしれません。
 
しかし、安く購入できた土地の価格が将来さらに下がる、地域によっては空き家などが増え住環境の悪化を招くといった可能性を考慮すると、購入者にとって良いことばかりではありません。
  
現在でも大きく地価が上昇している地域は、都心に限られています。こうした新たな供給圧力がなくても、地価の横這いないし下落傾向はしだいに定着しつつあります。
 
急速な宅地供給の増加を防ぐため、政府も都市緑地法の一部を改正し、2022年以降、買い取り期間の延期を可能にすることを柱とした仕組みに変更される予定です。
 

固定資産税など税制面の対応

生産緑地を解除された土地は、農地扱いではなく宅地並みに課税されます。そのため指定解除を受けたものの、当面の利用形態が定まっていないケースや、所有者の死亡による相続が発生した際の相続税の基準など、生産緑地の保有者が不利な扱いを受けないような配慮が必要になります。
 
指定解除を受けたものの、宅地化されずに固定資産税などが大幅に増額されては大変です。実際に制度実施から30年を経過し、営農者の高齢化と後継者不足は深刻だからです。
 
そのため、指定解除を希望する農家に対して、固定資産税の減免措置を実施するのか、生産緑地に与えられていた農地並みの納税猶予制度をどこまで認めるかなど、移行時期の課題も多くあります。
 
急な税制変更により、生産緑地保有者の税負担が多くなるようだと、営農をせずに生産緑地制度の延長を希望する農家が増えると思われます。特例の設置など資産課税に対する税制の整備と、生産緑地指定の延長に関する法的整備が進められています。こうした制度が確定すれば、生産緑地の宅地化が一挙に進むことは避けられると思われます。
 

生産緑地を今後どう活用するか

指定期限がきたからといって、一気に宅地化が進むと防災上の問題なども起こってきます。できれば自然に接することのできる都市空間として、できる限り残す工夫が大切です。そのためには、この生産緑地をどう活用していくかが、今後問われます。
 
農家など生産緑地の所有者が買い取りを求めた場合は、自治体が買い取り公園などにする、NPOなどに貸し出し農園として継続する、個人用の家庭菜園として自治体が貸し出す、などの地域に即した案を、個別に検討する段階にきています。
 
すべて宅地化することは避けたいものです。
 
自治体の財政負担を少なくする意味でも、NPOや会社組織により営農を続けることや、有料で貸し出し家庭菜園などにする方法は賢明な選択といえます。とくにNPO法人や会社組織により営農が継続されると、近郊野菜の供給量が増え、経済的なメリットもあります。
 
それ以外にも、定年退職者などが野菜づくりに挑戦したい、といったニーズは多いと思われ、宅地化を抑制することで、都市空間の保全に役立つプランになります。
 
実際に、東京都では農家から土地を買い取り、「セミナー農園」「シニア農園」を育成する実験を行っています。緑地の保全と高齢者の生きがいを両立させようとする試みです。こうした動きも今後増えると思われます。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職



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