更新日: 2019.01.10 その他
お宅のマンションは大丈夫?なんと全国の75%が修繕不安の実態
ある問題に取り組んでいるので、おそらく来期は9年目に突入するでしょう。理事長経験もあります。
管理組合の理事の職務はスーパーストレスフルですが、来期の大きな課題のひとつが「修繕費の改善」。今回は、この問題をとり上げてみましょう。
Text:寺門美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー、相続診断士
公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事®上級プロ夫婦問題カウンセラー
大手流通業界系のファッションビジネスを12年経験。ビジネスの面白さを体感するが、結婚を機に退職。その後夫の仕事(整体)で、主にマネージメント・経営等、裏方を担当。マスコミでも話題となり、忙しい日々過ごす。しかし、20年後に離婚。長い間従事した「からだ系ビジネス」では資格を有しておらず『資格の大切さ』を実感し『人生のやり直し』を決意。自らの経験を活かした夫婦問題カウンセラーの資格を目指す中「離婚後の女性が自立する難しさ」を目のあたりにする。また自らの財産分与の運用の未熟さの反省もあり研究する中に、FPの仕事と出会う。『からだと心とお金』の幸せは三つ巴。からだと心の癒しや健康法は巷に情報が充実し身近なのに、なぜお金や資産の事はこんなに解りづらいのだろう?特に女性には敷居が高い現実。「もっとやさしく、わかりやすくお金や資産の提案がしたい」という想いから、FPの資格を取得。第二の成人式、40歳を迎えたことを機に女性が資産運用について学び直す提案業務を行っている。
※確定拠出年金相談ねっと https://wiselife.biz/fp/mterakado/
女性のための電話相談『ボイスマルシェ』 https://www.voicemarche.jp/advisers/781
全国の75%が国の目安の水準以下
マンションの老朽化を防ぐために、大規模修繕工事は必要です。10年を一区切りの目安で行っていますが、12~15年で実施しているマンションが多いことでしょう。
業者ひとつ選択するにも、住民の意見がそろわないと進捗しません。1回目は外壁や、塗装、絨毯の張替え等。エアコンがあるマンションはエアコンの修繕・買換えも必要です。2回目は給水・排水・エレベーター。
インターホン設備や機械式駐車場があるマンションは、そちらも視野に入れなければなりません。それらは修繕費で賄うわけですが、積立金が不足したら適切な修繕はできないでしょう。
マンション管理組合は、国土交通省の管理下に属します。国土交通省は2011年に修繕積立金の指針を策定。30年間の均等払いで、15階建て未満のマンションは1平方メートルあたり月178~218円。
20階建て以上のタワーマンションは同206円を必要額の目安としました(新築入居時に払うことが多い、修繕積立基金はゼロで試算)。
もれなく、我が家のあるマンションも大きく水準を下回っていました。
新築マンション販売時の安すぎる積立金
日本経済新聞社の調査によると、全国の4分の1にあたる1万4000棟の修繕積立金を分析したそうです。そのうちなんと1万500棟が国の目安を下回ったとのこと。このうち、約900棟あるタワーマンションは8割弱も修繕費不足。国の目安に達していない物件も1割あり、深刻です。
なぜ、こんなにも多くのマンションの修繕費が不足するのでしょうか。理由は、新築時のマンションの販売価格を下げるためのようです。
戸建てと違い、マンションの購入時に考えなくてはならないのが、本体以外に「管理費・修繕積立金(一時払い金)」「駐車場・駐輪場代」「諸費用」等です。
これらを合計した金額で購入できるか検討するのですが、販売会社は少しでも安くして販売したいので、そのなかで削れる「修繕費」を低く提示しています。
なぜなら、修繕費は新築時には大きな問題にはなりません。販売時のセールスは「不足した場合は管理組合の話し合いで」と言いますが、5年以上経ち、大規模修繕工事に突入する時期になると大きく重要な費用となり、ほとんどの組合で不足が発生しているのが現実です。
ましてや「管理組合の話し合い」という壁程、硬くて厚い壁はなく、なかにはその揉め事で入院したり、引っ越しをしたりする人も知っています。
簡単ではない理事会決議
毎月、管理会社が発行している「理事会の議事録」は目を通されていますか?このなかにある「収支一覧表」は細かくチェックするのをお勧めします。
我が家のマンションは、大きなターミナル駅から徒歩7分という好条件にあり、さまざまな職種の人が自宅や職場、投資用として所有しています。税理士・会計士・FP・建築関係・会社役員・スーパー主婦、管理会社の指導の下、さまざまな視点で問題が大きくなる前に厳しいチェックが入るのです。
2年前、私が理事長をしていた際に、将来的な管理費・修繕費の赤字への転落が予測され、臨時総会を開催し値上げをしました。時は、消費税が8%に値上げをしたあと。総会では住民の同意が必要ですが、休日に開催される総会に出席するのはわずかな人数。大多数の人は、委任状の提出です。
管理費・積立金の値上げは住民の過半数の同意が必要ですが、規約の変更が伴う場合は4分の3以上の同意が必要。とにかくこれが大変なのです。
私は総会前になると、管理人と週に数回の調整をし、まずは委任状の提出の状況を確認します。そして、住民への催促をしてもらいます。
100戸以上あるので、細かな活動をしないと票は集まりません。また、場合によってはロビー活動を行います。特に投資物件で購入している人にとって、経費節減は必須。
書面で読んだだけでは欠席届と共に「反対」の意思表示が。そのような人たちには、値上げをしないことによる「資産価値の低下」を訴え、話をして歩きます。
なかなか書面だけでは本意は伝わりません。理事や、住民と協力してやっとの思いで4分の3の票を集めました。しかし、管理費の値上げはできたものの、修繕費の値上げはできませんでした。
マンション財政圧迫のダブル原因・駐車場問題
マンションの財政を圧迫しているのは、積立金の金額が低いというだけでなく、収入が予定より大幅減になったマンションも多いと思います。特に都心部で深刻なのが、車離れによる駐車場収入の激減です。
上記したように、我が家のマンションは駅近で利便性に優れた物件です。30強あった駐車場は、15年前の新築当初はキャンセル待ち状態でした。それが、数年前から空きが目立ち始め、2017年には約半数の契約率に。
年間1千万以上の予算であった駐車場の収入が、50%まで落ち込むのは大変な財政難でした。
管理費の余剰金は、修繕費に振替ができます。知人にもインタビューしたところ、多くの人から「駐車場が空いている」という答えをもらいました。そこで我が家のマンションでは駐車場の外部貸を検討。
しかし、これも簡単ではありません。住民以外の人間が出入りすること、また法人化していない管理組合で収益を上げても構わないのか? という問題も発生しました。
そこで「サブリース・サービス」を提供している会社に相談し、さまざまな問題を乗り越えて無事に契約。現在管理費は、大きな黒字転換を達成できています。サブリースとは、一括借り上げの家賃保証制度のこと。賃料相場の80~90%の収入となりますが、空きリスクがなく、会計的には目安がつくので安心です。
マンションの理事は、ボランティアで行い感謝される立場かもしれません。しかし住民の想いや志向はさまざま。実際は、数々の中傷や批判を受けるので、なり手がいないのが実情です。
Text:寺門 美和子(てらかど みわこ)
ファイナンシャルプランナー/公的保険アドバイザー/確定拠出年金相談ねっと認定FP
岡野あつこ師事(R)上級プロ夫婦問題カウンセラー