更新日: 2019.01.10 その他

「返済はいつでもいい」と言ってた先輩から突然、借金返済の請求。今月に返す義務はある?ない?

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 池田理明

「返済はいつでもいい」と言ってた先輩から突然、借金返済の請求。今月に返す義務はある?ない?
友人や知人からお金を借りた経験はありますか?本来、お金は友達などから借りない方が良いですよね。お金のトラブルで、人間関係が壊れるケースはよく耳にします。

「返すのはいつでもいい」と言われて借りたお金を、いきなり、今月返済しろと言われたらどうしますか?借りたのは申し訳ないけど、いきなり言われてもと思うかもしれません。

このような場合、法的にはどのように解釈されるのでしょうか。今月返済する義務はあるのでしょうか?
FINANCIAL FIELD編集部

Text:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

池田理明

監修:池田理明(いけだみちあき)

弁護士/東京桜橋法律事務所

第二東京弁護士会所属。
中央大学法学部卒。弁護士登録後、東京桜橋法律事務所に勤務。平成25年以降は同所パートナー弁護士に昇格し、主にIT関連、エンタメ関連の企業法務を中心として、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応している。

座右の銘は「強くなければ生きられない。優しくなれなければ生きていく資格はない。」時には、クライアント自身の姿勢を問うようなアドバイスができるよう心掛けている。

気前の良い先輩から5万円借金

今回は、都内在住、食品会社勤務、S氏(27歳)の例を紹介していきたいと思います。
 
S氏は、一人暮らしで家賃の更新と友人の結婚式が重なり、職場の先輩に5万円を借りる相談をしました。気前の良い先輩は、「返すのはいつでもいいよ」と言って、5万円貸してくれました。
 
S氏は、現在の給与から、1カ月に1万円、5カ月かけて返そうと計画していました。
 
しかし、1か月後にいきなり先輩から、どうしても今月全額返してほしいと言われました。先輩は、その理由は教えてくれず、威圧的に迫ってきます。
 

先輩 「借りた金を返すのは当然だろ。すぐに、返してくれ」

 
S氏 「先輩、返すのはいつでもいいと言ってくれたじゃないですか。1カ月に1万円のペースで必ず返しますから」
 

先輩 「ダメだ。金融機関から借りてでも、今月返してくれ」

 
S氏は、「返すのはいつでもいいよ」と言ってくれた、先輩の方が契約違反でないかと思っています。先輩には申し訳ないですが、借金の返済を今月は行わないつもりでいます。
 

果たして、S氏は、法律的に先輩に今月借金を支払う義務はあるのでしょうか?東京桜橋法律事務所弁護士の池田理明先生にお伺いしました。

「返すのはいつでもいい」と言われた経緯や2人の人間関係などによっても、結論が変わってくるかもしれませんが、もっとも一般的なケースとして想定される場面を前提とするなら、この場合、S氏は先輩から請求された時点から相当の期間が経過した後に5万円全額を返さなければならないと考えられます。
 
確かに、この事例の場合、気前の良い先輩は、かなり時間の余裕をもった分割払いを認めるような口ぶりで、支払猶予をしているようにも思えます。
 
しかし、2人の間での約束としては、結局のところ、返済時期の定めがない金銭消費貸借契約を締結していると考えるのが素直です。
 
返済期限を定めることなくお金を貸した場合、民法では、債権者(先輩)は、いつでも相当の期間を定めて返還の催告をすることができると定めています(民法591条1項)。
 
この「相当の期間」がどれぐらいかと言うと、通常は1週間程度と考えられていますので、「先輩から1週間後に返してくれ」と言われれば、S氏は1週間を経過した後は、すぐに先輩に5万円を返す義務があります。
 
もっとも、2人の会話によっては、黙示的にでも一定の(例えば次のボーナスの時まで)の支払期限を定めたと認定できるケースもあるでしょうから、その場合は、その支払期限が到来する時まで返さなくても良いことになります。
 
法律事務所には、たくさんの金銭トラブルの案件が持ち込まれます。人間関係を壊したくない人との、金銭の貸し借りは避けるのが良いでしょう。
 
また、「親しき仲にも礼儀あり」という言葉もありますから、借りる場合は、いつ返すのか、しっかりと決めておく方が、借りる方にとっても安心かもしれません。
 
Text:ファイナンシャル フィールド編集部
監修:池田 理明 (いけだ みちあき)弁護士
東京桜橋法律事務所、第二東京弁護士会所属 http://tksb.jp/

IT関連・エンタメ関連の企業法務を中心に、相続・不動産・債権回収・破産など幅広い法律事務に対応。

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