更新日: 2019.01.11 その他

売却損だった人の割合は62%!? 考えたい「物件を売る」という決断

執筆者 : 松浦建二

売却損だった人の割合は62%!? 考えたい「物件を売る」という決断
昔から家は所有したほうがよいと思う人と、賃貸のほうがよいと思う人で意見が分かれ、どちらがよいのかは永遠のテーマのようになっています。場所や時代等によって状況はかなり異なるので、どちらが得とか損とか簡単にいえるものではありません。

ここでは判断材料の1つとなりそうな、住宅購入者が所有していた家を売却した時ときの損益についてまとめてみました。
松浦建二

Text:松浦建二(まつうら けんじ)

CFP(R)認定者

1級ファイナンシャル・プランニング技能士
1990年青山学院大学卒。大手住宅メーカーから外資系生命保険会社に転職し、個人の生命保険を活用したリスク対策や資産形成、相続対策、法人の税対策、事業保障対策等のコンサルティング営業を経験。2002年からファイナンシャルプランナーとして主に個人のライフプラン、生命保険設計、住宅購入総合サポート等の相談業務を行っている他、FPに関する講演や執筆等も行っている。青山学院大学非常勤講師。
http://www.ifp.cc/

売却損だった人の割合は62%

国土交通省の住宅市場動向調査報告書では、新たに住宅を購入した人に対して、今まで所有していた家を売却したときの損益についても調査をしています。
 
直近の平成28年度の報告書では損益の分布状況が不明のため、平成23年の報告書から、平成23年度の分譲住宅(分譲戸建・分譲マンション)を購入した人の売却損益をグラフにしてみました。
 
調査での売却損益は、直前まで住んでいた住宅の取得価格から売却価格を引いて計算していて、結果を「3000万円以上の売却損」から「3000万円以上の売却益」まで500万円刻みで14段階に分けて報告しています。
 


 
この調査項目は無回答者の割合が30.3%にもなっていることから、非常に回答しづらい質問だったと推測できます。
 
回答者69.7%のうち、売却益があった人が7.5%、売却損のあった人が62.2%なので、圧倒的に売却損だった人のほうが多い結果になっています。
 
最も割合が高かったのは「500万円の売却損~±0円」の範囲で16.7%になります。
 
次に多いのは「2000万円の売却損~1500万円の売却損」で10.6%、その次が「3000万円以上の売却損」と「1500万円の売却損~1000万円の売却損」の9.1%となっています。文字で書いて伝えるのは簡単ですが、1000万円単位で売却損が出てしまったことは、当事者にとって辛いことで、特に3000万円以上の売却損は厳しい結果のはずです。
 
しかし、この調査の対象者は新しい分譲住宅(戸建てまたはマンション)を購入している人なので、みなさん売却損を何とか克服して新しい家を手に入れたのでしょう。
 
売却益が出たのはわずか7.5%で、そのうちの4.5%は「±0~500万円の売却益」であり、1000万円単位で売却益が出た人はほとんどいません。長年住んで古くなった家を売却するので、売却益を出すことが難しいのは当然かもしれません。
 

昨今の上昇トレンドで、都心では売却益を出しやすくなっている

上記で紹介した調査は平成23年度の調査(平成22年4月~平成23年3月に分譲住宅を購入した人を対象)なので、今の状況とは少し異なります。土地は経済状況等によって変動するので、年数が経過して地価が上昇することもあれば下落することもあります。
 
住宅(特に戸建ての家屋)は、築年数の経過とともに売却価格が下がりやすいです。売却損の割合が高かったのは、バブル期またはその前後に取得した物件が多かったり、戸建てが多く含まれたりしているのかもしれません。
 
昨今は都心部を中心に地価が上昇しており、所有していた家を売ると、売却益が出る場合も増えてきています。
 
マイホームは損得のために購入するわけではないでしょうが、将来売ることになったとき、高く売れて益が出ればうれしいものです。そのためには、適切なタイミングで資産価値の崩れにくい物件を購入しておきたいものです。
 
Text:松浦 建二(まつうら けんじ)
CFP®認定者、1級ファイナンシャル・プランニング技能士

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