更新日: 2019.01.10 その他

土地格差時代の到来! 将来を見据え失敗しない住まいの選択を

土地格差時代の到来! 将来を見据え失敗しない住まいの選択を
日本人の土地への信仰が徐々に変化しています。10年ほど前までは、土地は値上がりする、資産保有として最適、との考え方が根強くありました。一度購入した土地が購入価格より高く売れて当然、という時代が長く続きました。

しかし、最近では一部の地域の地価は上がっていますが、逆に下がっている地域も増えています。特に新築の戸建てを購入したいと考えている人にとっては、選択がこれまで以上に難しくなっています。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

人口減少社会で進む二極化現象

2020年の東京オリンピックに向けて、巨額の投資が行われ、東京の都心部などでは地価上昇が続いています。湾岸地域や銀座周辺などでは再開発やインフラ整備も進み、快適な街づくりが進んでいます。実際にタワーマンションなどが高額で取引されています。
 
こうした地域では路線価が2桁上昇している地点もあり、今後とも値下がりすることは少なく、悪くても横ばいで推移するかもしれません。
 
しかし、こうした地域は日本全体から見ればごく稀といえます。地方都市や農村では、地価の下落が確実に進行しています。
 
地方都市では、商業地や市街地の一部に人口が集中する傾向が強まっており、部分的な地価は上昇していますが、その周辺地域での下落は確実に進んでいます。過疎化の進んでいる農村部では、さらにその傾向が強まっているといえます。これは明らかに土地の地域格差が生まれ、二極化現象が進んでいる状況です。
 
日本全体でも、今後とも地価の上昇ないし横ばいとなる地域は少なく、多くの地域で下落傾向がいっそう強まると予測できます。
 

都市部でも進む過疎化と地価の下落

日本全体で人口の減少が進んでいますが、大都市では大型マンションをはじめとする交通インフラが整備された中心部に住まいをもつ、という居住形態の傾向がはっきりしてきました。人口の集積する地域が限定されてきています。そのため都市部でも、特に若年人口が増えている地域がある半面、高齢者が中心で人口減少が進んでいる地域も目立ってきました。
 
特に高度成長期に続々と開発が進んだ、大都市近郊のいわゆる「ニュータウン」で人口減少が現実となっています。若いときに購入して以来長く住み続けている人が多く、そのため高齢化も進んでいます。団地と呼ばれた集合住宅、駅から距離のある戸建て住宅のある地域で過疎化が進んでいる状況です。
 
このような地域では、住民が減り空き家も増え、街が衰退しています。親の世代は住んでいても、子どもたちは都心部へと移り住む傾向があるためです。こうした地域では地価の値下がりも顕著で、この傾向は今後も続くと思われます。
 

優良宅地を選ぶための条件

以前までは、多少不便な地域でも住んでいるうちに環境整備が進み、地価もしだいに上昇してくる、と考えてもなんら問題はありませんでした。
 
ところが最近では、こうした判断はできなくなりつつあります。首都圏では、極端に地価が下がる状態までにはなっていませんが、「土地を売りたい人はなるべく早く!」「土地を買いたい人は2~3年待って!」という見解が、識者の間で定着しつつあります。
 
では、土地の格差が拡大しつつあるなか、宅地やマンションを購入する立場から、どのような点に考慮したらいいでしょうか。
 

1.最寄り駅までの距離が短い

通勤や買い物などを考えると、ふだん利用する最寄りの駅までの時間は、極めて大切です。職住接近を望む人が増えており、この傾向は今後さらに強まるはずです。特に将来売却することを考えると当然のことです。戸建ての場合は、徒歩10分以内、マンションの場合は6~7分以内が、一つの目安といえます。人気が高い鉄道沿線でも、戸建てで20分以上、マンションで15分以上かかる地域は、避けたほうが望ましいといえます。
 

2.土地の安全性が確保されている

その土地は安全な地域なのかが極めて大切です。最近では大雨や地震など自然災害が非常に多くなっています。駅に近いとしても、低地で大雨などによって河川が氾濫する危険の高い土地、すぐ裏が崖になっている、または崖の真上の土地。さらに池や沼地を埋め立てた土地、急な斜面を削った土地などは、できれば避けるべきです。
 
例えば東京の地価を見ても、河川の多い低い土地より、高台のほうが高くなる傾向がはっきりしています。国土交通省が地域の安全を測定したハザードマップや、地盤の強度などの測定値を公表していますので、購入予定地域がどのような場所なのかを確認できます。これらをぜひ参考にしたいものです。
 

3.住民サービスのレベルが高い自治体

自治体による住民サービスにも違いがあります。若い世代の場合、子育て支援にどの程度力を入れているかは、一つの目安になります。保育園や幼稚園の数が十分か、待機児童の数はどのくらいか、幼児の医療費は無料なのか、といった内容を調べることが大切です。また図書館・ホールなどの文化施設や、各種運動のできるスポーツ施設の状況を見ておきましょう。
 
自治体の財政状況が、健全かどうかも考慮したいものです。人口減少や地価の下落が進めば、それだけ財政収入の減少となり、住民サービスの低下につながります。
 

4.新規の鉄道、幹線道路などインフラ整備

今後インフラ整備がどの程度進むのかを見ておくと安心です。現在は駅から徒歩で20分程度かかる地域であっても、3~4年後に5分圏内に新駅の開業が決まっていれば、将来の生活は非常に楽になります。特に、自宅の売却を考えた際に極めて重要なポイントになるといえます。幹線道路の整備も、近くを通ることで利便性は向上します。
 
以上の4点を考慮しつつ、少なくとも5年先、できれば10年先にその地域がどのようになっているかを、できる限り予測しておくことが大切になると思います。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職

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