更新日: 2019.08.20 子育て

『児童手当』と『児童扶養手当』は全く違う制度って知ってる?しかも、改正で支給減の可能性が。

『児童手当』と『児童扶養手当』は全く違う制度って知ってる?しかも、改正で支給減の可能性が。
児童手当と児童扶養手当は名称が似ていますが、異なる制度です。それぞれの違いがわかりますか。また、児童手当や児童扶養手当の改正が検討されています。詳細は、これからですが、改正の概要を確認しましょう。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

児童手当と児童扶養手当は、どう違う?

児童手当は「児童手当法」、児童扶養手当は「児童扶養手当法」により、支給条件や内容が定められています。

<児童手当>
児童手当は、日本国内に住む0歳から中学卒業(15歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の児童を養育している人に支給されます。
 
月額支給額(児童1人あたり)は、児童の年齢や出生順に応じ、3歳未満が一律、1万5,000円、3歳以上小学校終了前は1万円(第3子以降は1万5,000円)、中学生は一律1万円です。第3子以降とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)の養育している児童のうち、3番目以降をいいます。
 
たとえば、4歳、12歳、17歳、19歳の子どもを養育している場合、第1子は17歳、第2子は12歳、第3子は4歳ということになります。支給時期は、毎年6月(2月分~5月分)、10月(6月分~9月分)、2月(10月分~1月分)です。
 
所得制限があり、給与所得者の場合、世帯の中で所得の高い方の所得が、「給与所得-控除額-8万円」が一定額を超えた場合、児童手当の受給資格がなくなります。しかし、特例給付として子ども1人あたり月額一律5,000円が支給されています。
 
児童手当を受給するには申請が必要です。受給後、毎年6月に「現況届」の提出が必要です。これにより、6月分以降(翌年5月まで)の手当の支給の可否等が判断されます。「現況届」を提出しないと6月分以降の手当の支給が差し止められますので気をつけてください。



<児童扶養手当>
児童手当は児童を養育している人に支給されますが、児童扶養手当は、父母が離婚した児童、父または母が死亡した児童、父または母が一定の障害状態にある児童などの養育者に支給されます。
 
ひとり親家庭は、児童手当と児童扶養手当の両方をもらうことが可能です。子どもが18歳の誕生日の後の最初の3月31日まで(障害児は20歳未満)支給されます。
 
支給月は4月(12~3月分)、8月(4~7月分)、12月(8~11月分)です。児童扶養手当を受給するには申請が必要です。受給者の前年の所得の状況と8月1日現在の児童の養育の状況を確認するために「現況届」の提出が必要です。
 
提出しないと8月以降の支給を受けることができなくなります。
 
児童扶養手当には所得に応じて、全部支給と一部支給があります。所得は、給与所得者の場合、「給与所得+養育費の8割相当額-控除額-8万円」で計算された金額です。
 
養育費は自己申告になります。申告しないと不正受給になり、返還を求められるので注意しましょう。2017年4月以降、全部支給の手当額(月)は第1子42,290円、第2子9,990円、第3子以降は1人当たり5,990円が加算されます。
 
一部支給の手当額(月)は、第1子42,280円~9,980円、第2子9,980円~5000円、第3子以降は1人あたり5,980円~3,000円が加算されます。
 
なお、一部支給額の算出方法は次の通りです。
児童1人の場合一部支給手当額=42,280円-(X-Y)×0.0186705
児童2人目加算一部支給手当額= 9,980円-(X-Y)×0.0028786
児童3人目以降加算一人につき一部支給手当額 = 5,980円-(X-Y)×0.0017225
※X:児童扶養手当で審査する所得 
※Y:児童扶養手当所得制限限度額表中の全部支給所得額(例 扶養親族が2人であれば95万円)
※一部支給手当額は10円未満四捨五入
 
児童扶養手当を受ける人、または、配偶者及び扶養義務者(請求者と生計同一の直系血族及び兄弟姉妹)の前年の所得が一定以上ある場合は、その年度(8月から翌年の7月まで)は、手当の全部または一部が支給停止されます。
 
たとえば、本人と児童のみで生活している場合、「児童扶養手当で審査する所得」が、全部支給の限度額未満であれば、「全部支給」、一部支給の限度額未満であれば、「一部支給」となります。
 
一部支給の限度額以上であれば「全部支給停止」になります。同居の扶養義務者がいる場合は、「児童扶養手当で審査する所得」の確認に加えて、「同居の扶養義務者の所得」についても同じように扶養義務者の限度額と比較します。
 
この結果、本人の所得が低い場合でも、扶養義務者の所得が限度額以上である場合、手当は全部支給停止となります。離婚後、実家に戻る場合は注意しましょう。
 
あまり知られていませんが、20歳未満の一定の障害状態にある心身障害児を養育している父母または養育者には「特別児童扶養手当」が支給されますが、児童扶養手当との併給が可能です。
 
お子さんが障害児でしたら忘れずに「特別児童扶養手当」の申請をしてください。また、遺族年金などの公的年金等の月額が児童扶養手当の月額より低い場合、その差額を受給できます。

児童手当、児童扶養手当の改正の行方

<児童手当>
現行の児童手当の支給額は世帯で最も所得の多い人を基準に決まります。報道によると、政府は、2018年以降、この所得基準を世帯全体の所得を合算して判定する方式に切り替える方針です。
 
これにより、共働き世帯の児童手当の支給額が減額される可能性が出てきました。また、特例給付の廃止も議論されています。現行の所得制限のまま、世帯合算に切り替えると、支給減になる世帯が大幅に増えるため、所得制限の基準の引上げも検討されています。
 
児童手当は、教育費積立の財源としているご家庭が多いと思います。改正により、支給減となれば、家計の支出を見直し、教育費の財源を新たに作る必要がでてきます。
 
所得金額から控除できる控除額は、雑損控除、医療費控除、小規模企業共済等掛金控除(確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金又は個人型年金加入者掛金など)、(特別)障害者控除、(特別)寡婦(夫)控除、勤労学生控除の合計額です。
 
税控除を有効に活用することで所得を少なくしましょう。

<児童扶養手当>
報道によると、児童扶養手当の支給時期について、政府は、現行の4か月ごとにまとめて年3回支給しているのを、2か月ごとにまとめて年6回の支給にする方針を固めました。
 
家計管理をしやすくするためです。2019年度の実施を目指しています。児童手当が偶数月に支給されていることから、児童扶養手当は奇数月に支給する方向で検討されています。
 
また、年収が上がっても児童扶養手当の支給額が減らないように、来年度から、所得制限の上限も引き上げる方針です。
 
 
(プロフィール_新美昌也 )
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。

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