更新日: 2019.01.11 インタビュー

人生100年時代のビジョンマップ「心もお財布も幸せに生きよう!」

iDeCoって話題ですが、いったい何が注目されているんでしょう?

Interview Guest : 青山桂子 (厚労省年金局 企業年金・個人年金課長)

interviewer : 山中伸枝 / Photo : 岩田えり

Interview Guest

青山桂子 (厚労省年金局 企業年金・個人年金課長)

青山桂子 (厚労省年金局 企業年金・個人年金課長)

厚労省年金局 企業年金・個人年金課長

iDeCoって話題ですが、いったい何が注目されているんでしょう?
人生100年時代と言われるようになりましたが、果たして私たちはビジョンを持って「人生100年」を受け止めているでしょうか?この対談企画では、心とお財布を幸せにする専門家である山中が、様々な分野の方にお話しをお聞きし人生100年のビジョンを読者のみなさんと作り上げていきたいと考えています。

今回は、厚生労働省年金局 企業年金・個人年金課長の青山桂子様 (以下敬称略)に100年時代を支える自分年金「iDeCo(イデコ)」と公的年金についてお話を伺いました。
山中伸枝

interviewer:山中伸枝(やまなか のぶえ)

ファイナンシャルプランナー(CFP)

株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーとして、講演・相談・執筆を中心に活動。

岩田えり

Photo:岩田えり(いわた えり)

フリーランス・フォトグラファー

日本舞台写真家協会・会員。タレント・舞台俳優など人物写真を得意とする。

 

 

厚生労働省のお仕事ってどんなことをしているんですか?

山中 青山様、今日はどうぞよろしくお願いします。青山さんには、iDeCoのイベントで何度かご一緒させていただいたり、省内のiDeCoセミナーに講師として呼んでいただいたりとお世話になっているわけですが、やはり一般の方にとって厚生労働省というお役所の仕事って、分かりにくいと思うんですよね。なので、まずは厚生労働省年金局というところのお仕事を教えて下さい。
 
—青山 分かりました。厚生労働省年金局では公的年金と私的年金の二つの制度を担当しています。公的年金は国が支える年金、私的年金は自助努力で支える年金です。まず公的年金ですが、国民年金、厚生年金といった公的年金全般を受け持っている国の中央省庁ですので、公的年金の制度の企画立案をしています。
 
また公的年金の積立金はGPIFという法人が運用していますが、その運用に関する様々な業務もやっています。公的年金の給付、現役世代の保険料の徴収の実務も担当です。実際この実務をやっているのは日本年金機構という法人ですがそれに対して厚生労働省年金局で監督をして適正に制度が運用されるよう、日々仕事をしています。
 
山中 わぁ、幅広いお仕事なんですね。国の年金も、私的年金もお金の運用も給付も徴収も!まさに年金制度全般をやっていらっしゃるんですね。
 
—青山 そうですね。年金と呼ばれる制度はほぼ全部年金局というところでやっています。その中でわたしが担当してるのが『私的』な年金です。自助努力であるiDeCoを含む確定拠出年金などの制度で、わたしがいる企業年金・個人年金課という課ではそういう私的年金の部分を担当しています。
 
山中 企業年金というと、会社独自の福利厚生制度ってイメージなんですが、企業年金の方はどういう形で関わられるんですか。
 
—青山 企業年金は、確定給付企業年金という制度や、確定拠出年金も企業がやられるパターンがありますがそれらに対する監督ですね。年金基金さんとか企業さんが法令に沿ってきちっと企業年金を運営しているか、監督する仕事をしています。
 
山中  なるほど、企業年金には厚生年金基金、確定給付企業年金(DB)、確定拠出年金(DC)の3種類がありますがそれらの監督なんですね。そして個人が任意で加入できるiDeCoもですから、本当に幅広いですね。
 
—青山 併せてまさに山中さんもやっていただいているような制度の普及、つまり公的年金・私的年金を通じて国民の方によく理解していただけるような分かりやすい広報というものも、今頑張って取り組んでいるところです。
 
山中 じゃあ、広報活動も青山さんの管轄でいらっしゃるんですか。
 
—青山 はい、私的年金制度の広報の方の担当です。年金制度として言えば、ちょうど11月30日が年金の日でした。
 
山中 11月30日は「いいみらい」で年金の日でしたね!
厚生労働省さんの年金のホームページって、結構いろいろ企画があったりしますよね。漫画で年金を分かりやすく説明していたりとか・・。
 
—青山 それでも理解しにくい部分や不安が年金に対してはあるかもしれないですね。今回、年金の日を機に新しくねんきん情報アプリというものを作ったりして、より深く分かってもらうよう、常に努力をしています。
 

iDeCoって話題ですが、いったい何が注目されているんでしょう?

山中 そういった推進活動の中で今一番力を入れているのがiDeCoということですか。
 
—青山 公的年金も同じぐらい頑張ってますが、iDeCoは元々認知度がとても低かったので強力に周知をしてまいりました。
 
山中 2017年は正に「iDeCo元年」と呼ぶべき象徴的な年になりましたよね。まずは青山さんの言葉でiDeCoとはどういうものかご説明いただいていいですか。
 
—青山 法律がからむので少し固い言い方になりますけど・・・iDeCoとは、確定拠出年金法という法律に基づいて個人の方が拠出、つまりお金を出してその資産を運用する制度です。iDeCoの正式名称は、個人型確定拠出年金といいます。この制度に加入するとまず自分で掛け金の額を決めて定期的に掛け金を納めていきます。その掛け金の運用というものも、自分で商品を選んで決めていただきます。
 
その結果、掛け金と運用益とを合わせた資産が年金原資となって、60歳以降そこから年金の給付を受けていくという仕組みです。
 
山中 まぁ、言葉を選ばずに言っちゃうと、自分の将来への仕送りをすると税金が得しちゃうよっていう制度ですよね。
 
—青山 今税金と仰っていたように、制度の大きな特徴は税金のメリットがあるということです。掛け金を出すとき、運用するとき、あと給付を受けるとき・・・それぞれ税金が優遇されるというメリットがあります。掛け金の分だけ所得から控除できますし、本来なら運用益の分にかかります所得税がかかりません。
 
あと、給付の際も税金はかかるんですけれども大きな控除があって、差し引いた上での課税となるという面でも非常に税制上の負担を減らして利用できるようになっています。
 
山中 確定拠出年金ってスタートは2001年でしたか?
 
—青山 2001年ですが、個人型は2002年1月からです。
 
山中 制度が始まってから結構長いですよね。
 
—青山 そうなんです。
 
山中 でも2017年が『あえて』みたいになってくると、なにかきっかけがあったんですよね。
 
—青山 はい。制度を大きく広げました。スタート当初のiDeCo(個人型確定拠出年金)は入れる人が限られていて、主に自営業者の方と、会社に企業年金がない人だけでした。それを2016年の法律改正で対象を広げました。今回の改正で、企業年金の対象となっているサラリーマンの方、専業主婦の方、いわゆる第3号被保険者ですね、それと公務員にも対象を広げたので、ほぼ全ての国民が使えるようになりました。
 
山中 反対に、iDeCoに入れない人ってどんな人になりますか?
 
—青山 国民年金保険料の免除者は加入対象にならないです。あと国民年金に入っていても、その保険料を払ってない期間は、積み立てられないということになります。細かいですが企業型の確定拠出年金に入っているサラリーマンは会社毎にルールが決まっていてiDeCoを同時にできる人とできない人がいます。
 
山中 企業型確定拠出年金に入っている人は会社に確認ってことですね。先ほど仰った国民年金保険料を払っていない未納の方なんですけど、「iDeCoがやりたい」という人は、これから国民年金を払えばiDeCoも加入できるようになるんですよね。
 
—青山 可能です。
 
山中 何しろiDeCoは老後資金作りにおいては最強の仕組みですから、全ての人が入れるようになったということは、大きな変化ですよね。
 
—青山 本来、確定拠出年金制度は、企業型がまずあってそれが対象にならないような人が個人型に入れるという、というような補完的な役割だったとも言えるのですね。それが企業型に入っている、いないにかかわりなく、企業年金の対象になるかならないかにかかわりなく加入ができるという点では、iDeCoの位置付けが企業年金と対等になったのかなとわたしは捉えています。
 

老後を自分ごととして考える人が増えた

山中 iDeCoに加入できる人が拡大したことで、実際の加入者も随分増えたんですよね。
 
—青山 制度が拡充される直前の加入者数は、約30万人でした。2002年からの15年間での加入者です。それが2017年11月末までのデータで71万人になりました。
 
山中 えっ、倍以上になったんですね!それはすごい!
 
—青山 すごく増えましたが、まだ増えています。
 
山中 すごいですよね。実感としてはいかがですか。
 
—青山 そもそもiDeCoというのも昔からある名前ではなくて、今回の加入対象者拡大を機にもっと多くの方に知っていただこうということで愛称として付けました。それまでは本当にあまり知られてなかったのですけれども、その周知活動を、厚労省だけではなく、いろいろな金融機関の団体の方などで、普及のための協議会を作って、iDeCoという愛称を決めたり、かなりCMなども流しましたので効果が出ていると思います。
 
取り扱っている金融機関さんもずいぶん広告されたと思います。それに併せてメディアでの取り上げも増え、税制上の優遇などを強調していただいたりしたので、一気にかなり知られる制度になったなという感覚を持っています。
 
山中 税制優遇の仕組みなど制度自身は変わっていなくて、門戸が広がっただけでこれだけ広がるのかって感じですね。
 
—青山 確かに制度自体を知ってもらうことも大事ですが、現役時代から老後のことに自分で備えるということが大事だということを、認識してない方が世の中多いかなと。このため、iDeCoを通じて老後に向け自分で努力する重要性も併せて周知するようにしました。だから、老後に対する意識自体も、昔よりもかなり変わってきたようにも感じています。
 
山中 自分事として将来を意識して考える風潮が出てきたんですね。
 
—青山 そうですね。仰っていた自分自身の将来への仕送りみたいな、それをしなきゃいけないなという感覚が、たぶん前よりは広まっていることは、非常にいいことだと思っています。
 
山中 時代的にもそういったところが増えてきたっていう感じなんですね。
 
—青山 注目されるのは、今回対象範囲が広がり新規資格者となった専業主婦などだけではなく、元々加入対象だった自営業者の方とか、企業年金がない会社のサラリーマンの方が、結構新しく2017年1月以降入っているのですね。ということは、やっぱり制度が知られてなかった、加入できたのに知らなかった人は結構いるのではないかと思っています。
 
山中 そこの層の増加は確かに顕著ですよね。
 
—青山 かなり多いですね。ですから、加入対象を広げた効果にプラスして制度の意義とかが広まった効果、両方があるのかなと思っています。
 
(2)に続く  全4回掲載予定 次回:1/19予定
 


 
Interview/Text :山中伸枝 (やまなか・のぶえ)
ファイナンシャルプランナー(CFP)
株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役 
1993年米国オハイオ州立大学ビジネス学部卒業。メーカーに勤務し、人事、経理、海外業務を担当。留学経験や海外業務・人事業務などを通じ、これからはひとりひとりが、自らの知識と信念で自分の人生を切り開いていく時代と痛感し、お金のアドバイザーであるファイナンシャルプランナーとして、講演・相談・執筆を中心に活動。

人生100年時代のビジョンマップ「心もお財布も幸せに生きよう!」

  • 1: iDeCoって話題ですが、いったい何が注目されているんでしょう?