更新日: 2019.01.10 その他保険
歌舞伎俳優の市川猿之助さんの事故は労災?
こういった舞台装置に衣装が巻き込まれた事故は幾度となく耳にしますが、この場合どういった保障が適応になるのでしょうか?
Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)
CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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労災による「休業補償手当」は適用外
労災保険というのは「労働者災害補償保険法」という名の通り、「労働者」が使用者の指示のもと業務中に起こった事故に対して補償するものです。
おそらく、猿之助さんほどの俳優は労働者として雇用契約を締結しているのではなく、業務委託契約だと推察されます。労働契約と業務委託契約の違いは一言でいうと、「時間・指揮命令など拘束性が強く自由裁量の余地はない」と、「作品や成果物を提供することが優先で指揮命令や時間などの拘束性はなく自由裁量が大きい」というものです。
もちろん舞台期間中は拘束されますが、例えば稽古の時間やその間の自由度は大きい、(いい作品を提供してその結果多くの観客を招集できればいい)というものではないかと推察されます。労働者であれば、違法労働者でも適用されるのが労災ですが、業務委託であれば適用外と考えられます。当然サラリーマンに適用される健康保険からの傷病手当金も適用外です。
施設賠償責任保険でカバーされるでしょう
しかしながら、新橋演舞場を保有するのは東証一部上場の松竹ですから、当然施設賠償責任保険でいざという時の備えは万全かと思われます。すなわち、施設の所有・使用または管理に起因して他人(猿之助さん)にケガをさせたり、他人の物を壊したりしたため、法律上の賠償責任を負担することによって損害を被った場合に保険金が支払われる保険です。
カバーされる範囲は、被害者に支払うべき法律上の損害賠償金(治療費、休業損失および慰謝料を含みます)、応急手当や緊急処置などの費用その他です。この保険は「従業員が業務に従事中に被った身体障碍による賠償損害」は対象外ですが、猿之助さんは独立なさってご自身の法人をお持ちなので適用されることでしょう。
それにしても痛ましい事故でした。二度と起こらないように強く願うとともに猿之助さんの一日も早いご回復を祈念いたします。
Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、社会保険労務士
MBA(ファイナンス)、キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表