更新日: 2020.04.02 その他保険

在宅勤務中の疑問。もし部屋の中で、けがをしたら労災は適用される?

執筆者 : 遠藤功二

在宅勤務中の疑問。もし部屋の中で、けがをしたら労災は適用される?
在宅勤務中にけがを負ってしまった場合、果たして労災は適用されるのでしょうか?昨今、働き方改革の一環として、多くの企業が在宅勤務(テレワーク)の導入を始めています。
 
在宅勤務は、働く時間や場所を柔軟に活用することが可能であり、労働者と使用者双方にメリットがあります。また現在、新型コロナウイルス感染症対策として多くの企業が在宅勤務を実施しています。
 
通常、労働者は業務中もしくは通勤中にけがをした場合、労働災害保険(以下、労災)が適用されますが、在宅勤務中は労災の対象になるのでしょうか?この問題について解説します。
 
遠藤功二

執筆者:遠藤功二(えんどう こうじ)

1級ファイナンシャルプランニング技能士(国家資格)CFP(R) MBA(経営学修士)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券とオーストラリア・ニュージーランド銀行の勤務経験を生かし、お金の教室「FP君」を運営。
「お金のルールは学校では学べない」ということを危惧し、家庭で学べる金融教育サービスを展開。お金が理由で不幸になる人をなくすことを目指している。

在宅勤務中の災害は労災保険給付の対象になる

在宅勤務中に生じた災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となります。
 
厚生労働省の「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン」では、以下のように記されています。
 
「テレワークを行う労働者については、事業場における勤務と同様、労働基準法に基づき、使用者が労働災害に対する補償責任を負うことから、労働契約に基づいて事業主の支配下にあることによって生じたテレワークにおける災害は、業務上の災害として労災保険給付の対象となる。ただし、私的行為等業務以外が原因であるものについては、業務上の災害とは認められない。」
(出典:厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン 2-(5)労働災害の補償に関する留意点」※1)
 
このように、在宅勤務中のけがは、業務起因のものであれば労災が認められるのです。

業務災害とは?

労働災害保険が適用される災害には「業務災害」と「通勤災害」があります。在宅勤務中の場合は「業務災害」が適用されます。業務災害とは、労働者が業務を原因として負傷したり、疾病を得たりした場合、またはその結果死亡に至った場合を指します。
 
業務災害と認められるためには、業務と傷病に因果関係があることが必要となります。そのため、ガイドラインにある通り、私的な活動中のけがは労災認定を受けることができません。
 
では、具体的な事例にはどういったものがあるのでしょうか?厚生労働省の「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集」では、下記のような事例が紹介されています。
 
「自宅で所定労働時間にパソコン業務を行っていたが、トイレに行くために作業場所を離席した後、作業場所に戻り椅子に座ろうとして転倒した事案。これは業務行為に付随する行為に起因して災害が発生しており、私的行為によるものとも認められないため、業務災害と認められる。」
(出典:厚生労働省「テレワーク導入のための労務管理等Q&A集 Q3-4」※2)

労災申請には「事実の認定」が必要

上記に引用したようなケースで、労災申請の際に重要となるのが「事実の認定」です。仕事の時間と私的な時間を明確に区別することが必要となります。
 
例えば、意識的に仕事の開始時と終了時に上司にメールを送ったり、業務進捗を都度報告したりすることで、業務を行っているという事実を記録に残すことができます。

まとめ

普段は安全な場所と位置付けている自宅でも、「階段から足を滑らせて落ちる」「書斎のドアや引き出しに指を挟んでしまう」など、けがをする可能性がないとはいい切れません。
 
また、成果主義の評価体系を採用している企業だと、「高い成果を出していれば、家でどう過ごしても構わない」という考え方をもつ上司も少なくないかもしれません。
 
このように、時間的拘束が曖昧な仕事をされている方ほど、労災の申請という観点で考えた場合、事実の認定を意識する必要があります。そのため、まめに「報告・連絡・相談」を管理者に行うことによって、業務中と業務時間外の区別が記録に残るように工夫をするとよいでしょう。
 
[出典]
※1 厚生労働省「情報通信技術を利用した事業場外勤務の適切な導入及び実施のためのガイドライン 2-(5)労働災害の補償に関する留意点」
https://work-holiday.mhlw.go.jp/material/pdf/category7/02.pdf
 
執筆者:遠藤功二


 

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