更新日: 2019.08.29 その他保険
民間の介護保険は2種類ある!検討する前に押さえておきたいこと
確かに、実際のご相談の場面でも、このようなニーズが高まっているのを感じますが、「老後、介護が必要になったら心配。だから介護保険で備えておこう!」とすぐに結論づけてしまうのは、いささか問題があるように思います。
なぜならば、民間の介護保険などを検討する際も、これまで見てきたような「公的保障」について考慮する必要があるからです。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
民間の介護保険には2種類ある
公的保障を見る前に、そもそも民間の介護保険とは何かを確認しておきましょう。民間の介護保険の保障内容としては、大きく分けて2つのパターンがあります。分かりやすくするためにイメージで見ていきます。
〇民間の介護保険のイメージ1
まず1つ目は、簡単に説明すると、例えば、65歳を軸に、現役で働いている期間と老後を迎えた後の期間で、所定の要介護状態になった場合、一定の「介護一時金」と一定の「介護年金」が支給されるといった内容です。
〇民間の介護保険のイメージ2
2つ目は、所定の要介護状態になった場合、一定の「介護一時金」が支給されるという内容です。
1では「介護一時金」と「介護年金」、2では「介護一時金」のみが支給されるという違いがあります。介護一時金は1回限りのお金、介護年金は、毎年、年金のように支給されるお金と考えてみてください。
あくまでも分かりやすくするために説明を省いているため、その点はご了承ください。
ベースとなる公的介護保障制度とは?
それでは、民間の介護保険の基礎になる公的保障制度は何でしょうか。ご存じの通り、それは「公的介護保険制度」です。ということで、民間の介護保険と公的保障制度の関係図は次のようになります。
民間の介護保険を検討する際は、そのベースになる公的介護保険制度を前提に、組み立てる必要があります。
公的介護保険制度は、高齢者の介護を支えるための制度というイメージがあるため、若いころはなじみが薄いかもしれません。しかし、40歳から加入するようになっていることを考えると、必ずしも高齢者のためだけのものではないことが分かります。
40歳から64歳までの方が第2号被保険者、65歳以上の方が第1号被保険者ということで、この制度の加入対象となっています。
第2号被保険者では、要介護状態や要支援状態が特定疾病(老化に起因する疾病)による場合に介護サービスを受けられます。第1号被保険者では、介護サービスの受給要件は、要介護状態・要支援状態と認められた場合となっています。
介護サービスには「予防給付」と「介護給付」があります。予防給付には、「介護予防サービス」や「地域密着型介護予防サービス」、「介護予防支援」があり、介護給付には、「居宅介護サービス」や「施設サービス」、「地域密着型介護サービス」、「居宅介護支援」があります。
これらの介護サービスを受けた場合、公的介護保険制度から、原則、介護サービス費の9割が支給されるため、自己負担は1割(一定以上の所得者は2割または3割)で済みます。
ただし、日常生活費や一部の居住費・食費などは自己負担となっています。以前、健康保険制度のお話をした際、治療費などが高額になった場合に「高額療養費制度」があることをお伝えしました。
公的介護保険制度にも似たような制度があり、介護サービス費が高額になった場合、「高額介護サービス費制度」を利用すると、要件を満たせば、さらに自己負担が軽減されるようになっています。
今回は、民間の介護保険制度を検討する際は、公的介護保険制度を考慮しましょうというお話をしました。
介護サービス費にかかる自己負担が、原則、1割、高額介護サービス費制度を活用した場合、さらに自己負担が軽減されるため、この制度を土台に民間の介護保険を検討していく必要があります。次回は、公的介護保険制度について、もう少し詳しく見ていきたいと思います。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)