更新日: 2019.01.07 その他保険

介護保険制度の仕組みを知っておこう!

介護保険制度の仕組みを知っておこう!

介護保険は、高齢で身体能力が衰え介護が必要な人を、社会全体で支えるためにつくられた公的な保険制度です。2000年から介護保険制度はスタートしました。40歳以上の人は原則加入し、保険料を納める必要があります。ただ高齢者の増加に伴い、保険制度の運用にさまざまな課題も出ています。
黒木達也

Text:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

 

介護保険制度の運営は市区町村

 

介護保険は公的な保険制度の一つで、運営の主体は全国の市区町村になります。国や都道府県ではありません。加入者は日本国内に居住する40歳以上の人で、保険料を納付する「被保険者」になります。運営の主体が市区町村になるため、市区町村の事情により納める保険料は異なってきます。国民健康保険が、市区町村よりも大きな広域単位で運営が行われているのとは、事情が異なります。
そのため保険料についても、全国で比較すると大きな差があります。平均的な人の場合でも、最低額は月額2800円程度、最高額は8600円程度になります。おおむね月額5000円から6000円の金額になっています。例えば、高齢者の住民自体が少ない、介護を必要としない高齢の健常者が多い、といった特性のある地域の介護保険料は、他と比較して安くなる傾向があります。

自治体による差だけでなく、その人の年収によっても金額は大きく異なります。自治体ごとに、年収に応じて12~16段階に細かく分かれ保険料が決まられています。例えば65歳以上の人の場合、生活保護を受けている人の保険料は、月額で2000円程度ですが、年収2000万円を超す人の保険料は、月額1万8000円程度と、かなり大きな差があります。しかし65歳以上の人の平均的負担額が、すでに5000円を超えており、これ以上の負担増はしだいに難しくなっています。

 

介護保険料の納付方法は

 

介護保険の加入者は、40歳以上の人全員が対象ですが、年齢により納付方法が異なります。65歳以上の人(「第1号被保険者」という)は、受給する公的年金が年額18万円以上の場合は「特別徴収」といわれ、受給する年金からの天引きになります。年金額が18万円未満の人は「普通徴収」といって直接納付します。もし介護サービスが必要となり、それ受ける立場になっても、保険料を支払う必要があります。
現役世代となる40歳から64歳までの人(「第2号被保険者」という)は、勤務先の健康保険や国民健康保険など、自分が加入している公的な医療保険に上乗せして納付します。原則として健康保険などと一緒に天引きされるため、実際に支払っているという実感が薄いかもしれません。

 

介護認定と介護サービスの内容

 

では実際に、どのようなときに介護サービスが受けられるのでしょうか。65歳以上の人(第1号被保険者)の場合は、原因を問わず介護が必要になった際は、役所に申請をして審査を経ることにより認定を受け、介護保険が利用できるようになります。40歳から64歳までの人(第2号被保険者)の場合は、末期がん、脳血管疾患、関節リウマチなど、16の特定疾患が原因で介護が必要になった際に、認定を受ければ介護サービスを利用できます。

介護認定手続きは、認定を受けたい人またはその関係者が、市区町村の窓口(地域包括センター)に出向き申請をします。すると本人に対する訪問調査が行われ、心身の状態を調べます。それをもとに分析がされ、主治医の意見書などと合わせ、専門家の審査を受け認定がされます。結果が出るまでに申請から約1ヵ月近くかかります。認定の基準は、症状の軽い順から、要支援2、1、要介護1、2、3,4,5の7ランクとなっており、要介護5が一番重い症状になります。
介護認定のランクにより、支給される金額や受けられるサービスが異なります。在宅介護にせよ、施設介護にせよ、一部を自己負担し、その認定ランクに応じたサービスを利用できます。とくに在宅の場合、定期的な訪問介護、福祉器具の貸与、自宅改造のための補助などから利用できます。介護保険の範囲を超えるサービスを受けたい場合は、すべて自己負担となります。

 

自己負担割合は1割から3割

 

実際に介護サービスを受ける場合、介護保険から全額支給されるわけではありません。その金額の1割から3割は自己負担する必要があります。この負担率は年収により決まります。これまで年収の少ない人は1割負担、単身で年収280万円以上の人は2割負担となっていました。2018年8月以降、単身で年収340万円以上の人については、新たに3割負担に変更されました。340万円未満の人は従来通り2割負担です。実際に利用している人を調べてみると、約9割が1割負担となっています。
介護保険制度は、高齢化の進行により財政的には困難な環境になりつつあります。団塊の世代といわれる終戦直後に生まれた人たちも、これから75歳を迎えようとしています。独居高齢者や認知症高齢者の増加も確実です。介護保険が成立した2000年度では、介護サービスにかかる総予算は3・6兆円程度でしたが、2015年度には9・8兆円と大幅に拡大し、2017年度では10兆円を優に超える金額になっています。今後も増加傾向が続くのは確実です。

介護サービスを受けたいと希望する人は、着実に増えてくるはずです。制度を維持するためには、認定基準をこれまで以上に厳しくする、軽度者向けの家事援助・生活支援は廃止する、40歳以上の人の保険料を値上げする、保険加入者を40歳より若い世代まで引き下げる、といった方策も検討されています。ただ制度そのものの抜本的改善策は、まだ見つかっていないのが現状です。

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