腕を骨折したときの医療費が「20万円」でした。生命保険の保険金を受け取りましたが、「高額療養費制度」は利用できますか?
配信日: 2025.06.14

では、そのようなときに「高額療養費制度」は併用できるのでしょうか?本記事では、高額療養費制度の概要から、生命保険と併用可能かどうか、制度を利用する際の注意点までわかりやすく解説します。

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目次
高額療養費制度とは? 自己負担額を軽減できる公的制度
高額療養費制度とは、公的医療保険に加入している人が、同じ月に医療機関で支払った医療費の自己負担額が、一定の「自己負担限度額」を超えた場合、その超過分が払い戻される制度です。
たとえば、70歳未満で年収が約370万円~770万円の人の場合、1ヶ月あたりの自己負担限度額の計算式は「8万100円+(総医療費-26万7000円)×1%」です。自己負担割合が3割の場合、総医療費が66万7000円だと、自己負担額は20万100円になります。
ただ、高額療養費制度が適用される場合、自己負担限度額は8万4100円となり、差額の11万6000円が払い戻されることになります。
この制度の目的は、急なけがや病気による医療費負担を軽減し、誰でも必要な医療を受けられるようにすることです。
保険金をもらっていても、高額療養費制度は使える?
結論から言うと、生命保険の給付金を受け取っていても、高額療養費制度は利用できます。
なぜなら、高額療養費制度は「実際に医療機関の窓口で支払った額」に基づいて判断されるため、保険金を受け取ったかどうかは関係ありません。保険給付金はあくまで契約者が民間保険会社との契約に基づき給付されるものであるため、公的な医療費助成とは別の扱いです。
一方で、医療費控除(確定申告での税金の軽減)を受ける場合は注意が必要です。医療費控除の申告時には、保険金などで補てんされた金額を差し引いて計算しなければなりません。この点が高額療養費制度との大きな違いです。
高額療養費制度を利用する手続きと注意点
高額療養費制度を利用するには、以下のいずれかの方法で手続きします。
・事後申請方式
病院で一度支払いを済ませたあと、健康保険組合や市区町村に申請して払い戻しを受ける方法です。
・限度額適用認定証を使う方法
事前に加入している医療保険に申請して「限度額適用認定証」などを病院に提出すると、会計時に自己負担限度額を超える支払いが不要になります。また、マイナ保険証を利用できる医療機関であれば「限度額適用認定証」などの手続きや提出は不要です。
手続きに必要な書類や申請先は、加入している保険の種類(協会けんぽ、健康保険組合、国民健康保険など)によって異なります。
また、高額療養費制度には「1ヶ月で上限を超えた場合」という条件があります。月をまたいだ場合は、それぞれ個別にカウントされます。申請期限は診療を受けた月の翌月の初日から2年間で、払い戻しには少なくとも3ヶ月程度かかるため注意しましょう。
まとめ:自己負担を減らすために制度を正しく活用しよう
医療費が高額になったとき、生命保険の給付金を受け取っていたとしても、高額療養費制度はしっかり活用できます。手続きをすれば、自己負担額の軽減が可能です。
また、税金の負担を減らす「医療費控除」も併せて検討することで、経済的なダメージをさらに抑えられます。ただし、医療費控除を受ける際は給付された保険金を差し引く必要がある点に注意してください。
急なけがや病気は、誰にでも起こり得ます。だからこそ、こうした制度を正しく理解し、少しでも経済的な負担を軽くする工夫をしておきましょう。
出典
全国健康保険協会 高額な医療費を支払ったとき(高額療養費)
全国健康保険協会 健康保険限度額適用認定申請書
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー