高額療養費制度が変わる? 「年収400万円」の負担は増えるのでしょうか?
配信日: 2025.06.07


1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者
“東京都出身。2008年慶應義塾大学商学部卒業後、三菱UFJメリルリンチPB証券株式会社に入社。
富裕層向け資産運用業務に従事した後、米国ボストンにおいて、ファイナンシャルプランナーとして活動。現在は日本東京において、資産運用・保険・税制等、多様なテーマについて、金融記事の執筆活動を行っています
http://fp.shitanaka.com/”
高額療養費制度とは?
高額療養費制度とは、1ヶ月にかかった医療費が高額になった場合、一定の自己負担限度額を超えた分が、後から払い戻される制度です。自己負担限度額は、年齢や所得に応じて決まっています。
がん治療で高額な医療費がかかる人、所得が低く満足な治療が受けられない人、もう働いておらず収入がない高齢者など、多くの人にとって、高額療養費制度は医療を受けるための支えとなっているものです。
高額療養費制度の具体的な医療費について、確認していきましょう。例えば、70歳未満で、現在年収が500万円の人の場合、高額療養費制度の月単位の上限額は、以下のとおりとなっています。
8万100円+(医療費-26万7000円)×1%
仮に、手術や入院などで1ヶ月に50万円の医療費が発生した場合、高額療養費制度を使うと、自己負担額は8万2430円となります。高額療養費制度によって、患者の負担額が大幅に軽減されることが分かります。
また、高額療養費制度では、自己負担額は世帯で合算できます。加えて、高額療養費として払い戻しを受けた月数が、1年間(直近12ヶ月間)で3月以上あったときは、4月目から自己負担限度額がさらに引き下げられます。
このように、高額療養費制度は、治療に前向きに取り組んでいる人にとって、経済的に大きな支えとなる制度です。
どんな見直しが行われているの?
次に、制度の見直しについてチェックしていきます。2025年に国会で議論された高額療養費制度の見直しとは、患者が支払うべき上限額の引き上げについてのものです。日本の高齢化や薬剤の高額化に対応するため、段階的に毎月の自己負担上限額を引き上げていくという見直しです。
年収ごとに決められた具体的な引き上げ幅の予定は、厚生労働省の資料によると以下のとおりとなっています。
住民税非課税世帯 :プラス2.7%
~年収370万円 :プラス5%
年収370~770万円 :プラス10%
年収770~1160万円:プラス12.5%
年収1160万円~ :プラス15%
今回の見直しが行われれば、低所得者に配慮しながらも、負担能力(年収)に応じて、全ての被保険者の負担が増えることになります。
高額療養費制度の今後の予定
当初、今回の改定は2025年の夏にスタートする予定でした。しかし、患者団体からの反対意見や説明不足との指摘から、いったん見送りとなっています。
今後も国会等でさらに議論が重ねられると考えられますが、高齢化や医療費の高額化に伴い、患者の負担増など何らかの対応を行わなければならない現状は変わりません。恐らく、近い将来、高額療養費制度の上限額の引き上げが実施されるのではないかと予想されます。
まとめ
現在の高額療養費制度の概要や、国会で行われた見直しについて、理解は深まったでしょうか。医療費の改正は、私たちの生活に密接に関わっています。今後のニュースをしっかりとチェックし、医療費の自己負担額がどのくらい増えるのか、いつから実施されるのか、注目しておきましょう。
出典
厚生労働省保険局 高額療養費制度の見直しについて
執筆者:下中英恵
1級ファイナンシャル・プランニング技能士(資産設計提案業務)、第一種証券外務員、内部管理責任者