自損事故で「20万円」の修理見積が! 保険を使うと“等級ダウン”で、毎年の保険料が今の「6万円」からアップすると聞きました。自腹のほうが得だと聞いたのですが、総コストはどれだけ変わりますか?
配信日: 2025.06.01
任意の自動車保険では、等級によって保険料が決まる仕組みとなっています。保険を使うと原則として等級が下がり、翌年以降の保険料が上がる可能性が高いです。そのため、保険を利用することで修理費が補償され金銭面で短期的には助かっても、長期的に見ると結果的に損をする場合もあり得ます。
では、修理代がいくらなら保険を使ったほうが得になるのか、どう判断したらよいのでしょうか。
本記事では、修理費用と保険料の合計を3年間でシミュレーションし、自腹と保険利用、どちらが家計に優しいのかを検証します。また、意外と見落とされがちな「免責金額」の影響についても解説するので、ぜひ参考にしてください。

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジェを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。
任意保険の等級制度の仕組み
自動車の任意保険には「等級制度」があり、前契約における事故の有無や件数に応じて、1等級から20等級まで段階的に保険料が変動します。無事故を続けると毎年1等級ずつ上がっていき、等級が高いほど保険料は割安になります。
しかし、事故を起こして保険を利用すると、等級が下がるのが一般的です。等級は、事故の内容に応じて1件あたり3等級または1等級ダウンとなりますが、中には等級が下がらない「ノーカウント事故」と呼ばれるものもあります。
3等級ダウンする事故を起こしてしまった場合は、翌年以降3年間「事故有係数」が適用され、同じ等級であっても保険料が高くなります。
こうした等級制度や事故有係数の影響をふまえると、「保険を使うかどうか」の判断は、修理費用から、事故によって変動する保険料までを見据える必要があります。
自腹か保険利用、どちらが得になる?
1年契約で年間保険料が6万円、修理費が20万円、事故有係数の適用期間が3年間という前提で、保険を使った場合と使わなかった場合の3年間の総コストを比較してみましょう。
●現在の等級 20等級(保険料 6万円/年)
●保険使用時 3等級ダウン+事故有係数適用(3年間)
●保険料 1年目 約9万1000円(事故有17等級)
2年目 約8万7000円(事故有18等級)
3年目 約8万1000円(事故有19等級)
●合計 25万9000円
●修理費用 20万円(等級は維持)
●保険料 6万円×3年=18万円
●合計 20万円+18万円=38万円
このケースでは、保険を利用して修理したほうが、約12万円安くなります。ただし、任意保険の契約内容によっては「免責金額」が設定されていることがあります。その場合、実際に保険から支払われる金額は免責金額を差し引いた額です。
免責金額とは?
車両保険では、契約時に「免責金額(自己負担額)」を設定できます。免責額を高く設定すると保険料は安くなり、低ければ保険料は高くなる傾向があります。
例えば、「免責5万円」の契約で修理費が20万円だった場合、保険会社が補償するのは15万円で、残りの5万円は自己負担です。そのため、シミュレーション結果でみれば、保険利用時の総支出は免責金額の5万円を追加した約30万9000円となり、自腹で支払った場合と比較するとその差が約7万円に縮まります。
まとめ
20等級で自損事故を起こし20万円の修理代がかかった場合では、自腹ではなく保険を利用したほうが得になります。ただし、契約に免責金額が設定されている場合は、自己負担が発生するため、結果が逆転する可能性もあります。事前に契約内容をよく確認しておきましょう。
また、等級がもともと低い場合は、事故有係数の影響で無事故と比べて保険料の差が大きくなる傾向があります。そのため、自身の現在の等級も確認したうえで、保険を使うかどうか慎重に判断することが大切です。
出典
一般社団法人日本損害保険協会 損害保険Q&A 問23自動車保険の「等級」について教えてください。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー