従業員が3人しかいない病院でパート。従業員が50人以下でも「月8万8000円」以上稼いだら「社会保険」に入らないといけない?
配信日: 2025.04.17


CFP(R)認定者
大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
http://www.caripri.com
社会保険の基本情報
社会保険とは、健康保険や厚生年金保険などを含む公的保険制度のことです。企業規模や労働時間によって加入条件が異なります。
社会保険の適用基準ですが、2024年10月以降、勤務先の従業員数が51人以上の場合、パート・アルバイト等の短時間労働者の要件に合致する従業員を社会保険に加入させる必要があります。
短時間労働者とは、「週20時間以上」「月額8.8万以上」「継続して2ヶ月以上雇用される見込みのある者」「学生でないこと」という要件を満たす人が対象となります。ここから「従業員数50人以下の場合の短時間労働者には加入義務はない」というのが原則になります。
ただし、企業が任意で社会保険制度を適用している場合で、労働者が希望し、労使協定が成立すれば加入することもできます。
社会保険に加入した場合の影響
必須ではなくても、社会保険に加入することで、どのような影響があるのでしょうか。プラス面とマイナス面から確認します。
プラス面として、将来の老齢年金の受け取りが増えること、健康保険の保障が充実することがあげられます。傷病手当金という制度が適用になります。健康保険に加入していれば、病気やケガで働けなくなった際に、一定期間給与の代わりに支給される給付金のことです。
業務外の病気やケガが原因で働けなくなった場合(なお、業務時間内のケガは労災対象になりますので含まれません)、連続する3日間の待機期間があり、その後も4日目以降も働けない状態が続き、給与が支払われていないか、または給与が支給されても傷病手当金より少ない場合に、1日あたり= 直近12ヶ月の平均給与の3分の2の金額が、最長で1年6ヶ月間支給されます。
その結果、経済的な負担が軽減されますから、 安心して療養に専念できます。
一方、マイナス面として社会保険に加入すれば、健康保険料と厚生年金保険料の負担が発生する分、手取り収入が減ります。さらに、配偶者控除や扶養控除の適用から外れる可能性があります。
必須ではないけれど、加入を希望するかどうかの決め手
必須ではないなら、決め手にする目安としてどう考えればよいでしょうか。社会保険料を考慮した手取り額を計算して決められるでしょう。
例えば、月収9万円で社会保険に加入した場合、おおむね約15%が天引きされると考えてよいでしょう。つまり、手取り額としては、9万円 × 0.85 = 約7万6500円になるというイメージです。
なお、詳細は、標準報酬月額(月収)、介護保険も含むかどうかによって異なります。ただ、この減少分を考えても、健康保険上の手当や将来の年金の受け取りを重視するなら、社会保険に加入することを選択します。
どちらが適しているかは、家庭の状況や将来のライフプランによって変わるでしょう。
まとめ
従業員50人以下の企業では、月8万8000円以上稼いでも社会保険加入義務はありませんが、希望によって加入することは可能です。社会保険に加入することによって手取り額は減少しますが、一方で将来の年金や医療保障が充実するというメリットもあります。
家計管理の観点から、扶養内かフルタイムかを選択するときは、収入と支出のバランスを考えることが大切です。どちらの選択が最適かは、個々の家庭の状況によります。無理なく働けるスタイルを選び、計画的に家計を管理することが重要といえるでしょう。
出典
全国健康保険協会 令和6年3月分(4月納付分)からの健康保険・厚生年金保険の保険料額表
日本年金機構 令和2年9月分(10月納付分)からの厚生年金保険料額表(令和6年度版)
執筆者:柴沼直美
CFP(R)認定者