更新日: 2019.06.28 その他保険
細かすぎて伝わらない?ガン保険の違い
ガン(悪性新生物)か初期ガン(上皮内新生物)かで保険金の支払い対象になる場合とならない場合がある、診断給付金支払いが一度だけと複数回、ガン先進医療特約で技術料以外の交通費・宿泊費などの諸費用が支払われる特約と支払われない特約がある、といった違いは有名です。
ただ、後述するような細かい違いはあまり知られていません。ガン保険を選ぶ際は、それらも参考にしてみてください。
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者
宅地建物取引士
くらしとお金のFP相談センター代表
https://fplifewv.com/
国家公務員や東京でのFP関連業の実務経験を積み2005年に出身地の宮城県仙台市で起業。
2010年から現在まで東北放送ラジオにてお金やライフプランについてのレギュラーコーナー出演中。
全国経済誌「週刊ダイヤモンド」の保険特集に毎年協力。独立起業後に住宅ローンを借りて、土地を購入しマイホームを建てた経験から、相談者にリアルなマイホーム購入・住宅ローンについてのアドバイスも行える。本当に安心して購入できるマイホーム予算についてアドバイス多数。
東日本大震災以前から防災・減災の観点からのマイホーム購入アドバイスを行い、相談者の減災につなげる。
自治体や企業等からのライフプラン研修の講師を務める際にはクイズ・ゲームを取り入れ受講者に楽しんでいただくことが得意。
2児の父であり、仙台で毎年「子育てママの家計塾」を開催して子育て中の家庭に実体験から育児の悩みに答える。
学習塾にほとんど通わせずに自身の子どもの進学校合格へ導いた経験から「お金をかけない子育て」についてもアドバイスを行っている。
保険料払い込み免除
ガン保険には定期保障と終身保障の商品があります。高齢時にガンになるリスクを考えて、終身保障で加入している方は多いでしょう。終身保障の保険で保険料支払いも終身の契約をしている場合、保険料払い込み免除に該当すれば、以後の保険料を支払わなくてすみます。
たとえば保険料月額3000円のガン保険に加入していて、40歳で保険料払い込み免除になった場合、仮に80歳まで生きた際の残り40年間の保険料は144万円にもなります。ガン保険を選ぶ際に比較するポイントから外してはいけないのが、保険料払い込み免除の条件です。
では、どんな条件の保険料払い込み免除があるのか。大きく分けて次のとおりです。
(1)所定の身体障害、高度障害に該当した場合
(2)ガン(悪性新生物)と診断された場合
(3)特定疾病(主に三大疾病)で所定の状態になった場合
(4)初期ガン(上皮内新生物)と診断された場合
(5)特定障害や要介護状態に該当した場合
多くの保険で保険料払い込み免除は(1)~(5)の単独や組み合わせが条件となっています。特定疾病はガン・急性心筋梗塞・脳卒中で、初期ガンは含まないことがほとんどです。急性心筋梗塞と脳卒中は主に60日以上の障害状態を指し、保険会社によっては入院や手術で該当することもあります。
ガンは治る時代となり、ガンになっても治療して、その後長く生きる方は増えています。たとえば、ガンと診断されて給付金100万円を受け取って、治療費や生活費の一部をまかなうことができればとても助かります。
一方で、ガンは再発が怖い病気です。完治したからといってガン保険を解約するのは、必ずしも得策ではありません。先ほどの例なら80歳まで生きた場合、保険料払い込み免除にならなければ40歳から144万円の保険料を払って保障を維持することになります。ただ、免除になれば保険料負担は以後0円です。これは大きな違いです。
ガン治療通院給付金の日数制限
ガン治療は長期入院をして治す時代から、短期入院と通院で治す時代になりました。それを受けて、各保険会社がガン治療通院給付金の商品を用意しています。この内容も細かい違いがあります。
(1)通院日数無制限
(2)退院後〇日以内の通院(入院前〇日以内の通院)
(3)通算〇日以内の通院
(4)入院していたことを条件
(5)所定の治療を受けた場合の通院
ガン治療通院給付金も(1)~(5)の組み合わせで用意されています。これらの組み合わせも複雑で、後述する治療方法によって該当する日数も変わってきます。
ガン治療通院給付金が強調されたパンフレットに、小さな文字で「退院後〇〇〇日以内の通院に限る、ただし通算〇〇〇日分まで」などと記載されていることがあります。注意しないと、通院給付金はどんな通院でも無制限で支払われるものだと思い込んでいた、なんてことになりかねません。
ガン治療通院給付金の対象となる治療
ガン治療通院給付金を何日分受け取れるかは、どんな治療を受けたかによっても変わります。手術・放射線治療・抗ガン剤治療であれば日数無制限となっているガン治療通院給付金はよくありますが、抗ガン剤治療について経口投与を含む商品と含まない商品があります。
当然、含む方が給付金の支払い対象が広くなります。昨今の抗ガン剤は点滴・注射で投与されることが多いですが、今後、医療の進歩により患者の負担が少ない経口投与が主流となる可能性もあります。
ほかにもホルモン療法、免疫療法、緩和療法など様々な治療法があります。これらの治療が給付金の支払い対象になっているかどうかも気を付けたい違いです。また、通院に往診・訪問医療による治療を含むのかどうかの違いもあります。今後、社会の高齢化が進み在宅医療制度が充実してくる可能性も考慮しましょう。
このように細かくみていくと、ガン保険は保障条件や内容がとても複雑です。保障範囲が広い方が万が一の際に助かりますが、その分保険料が高くなりがちです。後で細かい保障内容を知らなかったなんてことにならないように、必要な保障と保険料をしっかり考えてガン保険の契約をしてください。
執筆者:西村和敏(にしむらかずとし)
ファイナンシャルプランナー CFP(R)認定者