更新日: 2020.04.06 生命保険

生命保険の「貯蓄型」と「掛け捨て型」の違いって?目的別にみる生命保険の選択。

執筆者 : 菊原浩司

生命保険の「貯蓄型」と「掛け捨て型」の違いって?目的別にみる生命保険の選択。
公益財団法人生命保険文化センターが3年ごとに発表している統計によると、近年は生命保険の世帯加入率・死亡時の保険金契約額、・世帯ごとの保険料のいずれも低下傾向となっています。
 
生命保険は本当に必要なくなってきているのでしょうか。必要だとすると、保険料の支払い方は「貯蓄型」と「掛け捨て型」のどちらを選ぶべきなのでしょうか。加入するタイミングは…?
 
今回は、生命保険に関するさまざまな疑問に対してご説明させていただきます。
 
菊原浩司

執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)

FPオフィス Conserve&Investment代表

2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
特に人生で最も高額な買い物である不動産と各種保険は人生の資金計画に大きな影響を与えます。
資金計画やリスク管理の乱れは最終的に老後貧困・老後破たんとして表れます。
独立系ファイナンシャルプランナーとして顧客利益を最優先し、資金計画改善のお手伝いをしていきます。

http://conserve-investment.livedoor.biz/

生命保険の目的とは

生命保険の目的は、「発生する確率は低いが、ひとたび発生してしまうと致命的となる事故」に対して、少額の自己資金で対策を行うことが本質です。
 
例えば、若年者でも病気による休業・入院・手術などは比較的発生しやすいため、生命保険のひとつである「医療保険」に加入する動機づけになるかもしれません。
 
しかし、こうした病気やけがは社会保険の高額療養費や休業給付金を利用できることもあるので、家計収支に致命傷となる金銭的負担が生じにくくなっているはずです。
 
保険金は、保険事故が生じない限り受け取ることはできません。保険料の一部は、保険料控除として還付される部分がありますが、大部分の金額は保険料として納付されてしまいます。
 
保険への加入は、基本的にはコストと認識したほうが良いでしょう。どのような事故が生じると致命的かを把握し、必要な保険を必要な期間のみ利用することが大切です。
 

生命保険の加入・見直しのタイミング

一般家庭における「致命的な事故」として考えられるのは、お子さまが誕生し、教育費の支出が増加していく時期に世帯の稼ぎ手が死亡してしまうことなどです。この場合、遺族年金などの給付金も支給されますが、それだけでは十分な金額にならないこともあります。
 
その際は、遺された家族の生活費を保障するため、生命保険への加入を検討する必要があります。
 
また、夫婦の収入を合計して家計支出を賄っているケースでは、どちらか一方の死亡により収入が減少してしまうリスクがあります。そのため、夫婦両方が生命保険に加入しておく必要があります。
 
逆にマイホームを購入する際に住宅ローンを契約し団体信用生命保険に加入していた場合は、住宅ローンの契約者が死亡した際に残債がゼロになります。以降は住居費に関する支出を抑えることができますので、死亡保険金を減少させる契機になります。
 

貯蓄型と掛け捨て型の違い

生命保険料の支払い方には、「貯蓄型」と「掛け捨て型」の2種類があります。同じ死亡時の保障として単純比較してしまいがちですが、この両者の保険の性質は大きく異なります。
 
「貯蓄型」は保険事故が生じなかった場合、満期時に返戻金を受け取ることができます。ただし、支払う保険料に対して契約できる死亡保険金の額が小さくなってしまうため、死亡保障の効果は若干弱くなってしまいます。
 
一方、「掛け捨て型」の場合は、保険事故が生じない限り保険金の支払いを受けることができません。しかし、少額の保険料で大きな死亡保険金が契約できるため、貯蓄型よりも死亡保障に主眼を置いた保険となっています。
 
一見すると返戻金のある貯蓄型の方が有利に感じられるかもしれませんが、返戻金は年々増加し、死亡保険金は据え置きのままですので、保険としての効果は徐々に低下してしまいます。
 
例えば、死亡保険金300万円、毎年解約返戻金が20万円ずつ増加する10年満期の生命保険に加入した場合、1年目に保険金が支払われた場合は貯蓄部分20万円+死亡保険金280万円の合計300万円となりますが、9年目に支払われた場合は貯蓄部分が180万円+死亡保険金120万円となります。
 
また、支払った保険料が全額貯蓄されるわけではありません。契約者が支払った保険料は、保険金の支払い準備に充てられる「純保険料」と、保険会社の運営費用となる「付加保険料」に分けられます。この付加保険料の部分が差し引かれることで、貯蓄のパフォーマンスを低下させてしまいますし、途中解約の場合は元本割れを起こす可能性もあります。
 

まとめ

保険の本質は「低確率でも発生すると致命的な事故」への備えであり、ありきたりなリスクに備えるのは不向きです。貯蓄型と掛け捨て型は死亡時の保障という点で同一視しがちですが、保険の目的が異なります。
 
死亡保障に主眼を置くのならば掛け捨て型が適していますが、基本的に保険はコストであり、必要な保険に必要な期間だけ加入することが大切です。必要な死亡保険金は、新たに家族が増えない限り年々低下していきますので、契約内容を定期的に見直すことが大切です。
 
特にマイホームを購入した場合は団信に加入するため、生命保険を見直す重要なタイミングとなります。
 
出典
(公財)生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」
 
Text:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級 

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