更新日: 2023.02.07 自動車保険
保険料が高いので「任意の自動車保険」に加入していません。「自賠責保険」だけで問題ないですか?
筆者は過去に車のディーラー営業の経験がありますが、車を購入しても保険料まで手が回らないから任意保険に入らないという人もいました。
そこで実際に事故が起こった時どれくらいの賠償額がかかるのか、事前に把握しておけば保険に入る必要があるのかどうか知ることができます。本記事では車の保険制度も含め解説していきます。
執筆者:齋藤彩()
自賠責保険についておさらいをしよう
私たちが保有している自動車には2つの保険制度があることはご存じだと思います。いわゆる強制保険と任意保険に分けられるのですが、ここでは強制保険とも呼ばれる自賠責保険について確認していきましょう。
自賠責保険は被害者救済を目的として、公道を走行する自動車が加入している保険です。補償内容は交通事故の相手方を保証する「対人賠償」のみで、補償金額は傷害による損害120万円、死亡による損害3000万円、後遺障害による損害4000万円と定められています。
交通事故が起きて相手方が死傷した場合は自賠責保険による補償が行われ、自賠責保険の範囲を超えた部分については自己負担あるいは任意保険で補償をします。
「自賠責保険で大半の補償はできる」という勘違い
自賠責保険で傷害120万円、死亡3000万円、後遺障害4000万円が補償されるなら、任意保険はいらないと考える人もいるかもしれません。一見すると十分すぎる補償に見える自賠責保険ですが、事故の重大さによってはカバーしきれないということもあり得ます。
例えばけがをさせてしまった場合では、上限120万円なら大けがでも問題なさそうに見えます。しかし、交通事故でけがをした場合、健康保険は適用されず治療費は10割負担となります。
つまり入院や手術をするとあっという間に120万円の治療費を超えてしまいます。これに加え慰謝料や仕事を休んでしまった際の補償(休業補償)もした場合は自賠責保険では足りなくなることも想定されるでしょう。
さらに相手方の車などを壊してしまった場合は修理しなければなりません。自賠責保険は「対人賠償のみ」の保険ですから、車の修理費などは自己負担です。数十万円から数百万円の出費となる可能性があります。
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実際に起きた高額賠償の事例
最悪のケースを想定した場合、どれくらいの賠償金が必要になるのかということも知っておくとよいでしょう。ここでは実際に発生した事故における高額賠償の事例を複数ご紹介します。
人身事故のケース
まずは人身事故における高額賠償が発生したケースを3つ紹介します。
・41歳男性、医師、死亡事故の賠償額:約5億2800万円
・21歳男性、大学生、後遺障害の賠償額:約3億9700万円
・29歳男性、会社員、後遺障害の賠償額:約3億8200万円
上記はあくまで一例ですが、事故の相手方の属性(職業や年齢)によって賠償額が大きく変わってきます。
物損事故のケース
次に物損事故における高額賠償の事例です。
・高速道路上での追突事故で、追突されたトラックの積荷(洋服・毛皮等)に対する賠償額:約2億6000万円
・踏切内での電車との衝突事故に対する賠償額:約1億1000万円
・大型貨物車への追突事故:約2700万円
・高級スポーツカーへの追突事故:約1200万円
このように対物事故の場合、相手方の車だけでなく家屋をはじめとした財物についても賠償義務が発生する可能性があります。特に高額な車に対する補償は1000万円単位での賠償義務が生じる場合もあることを覚えておきましょう。
任意保険に加入しなくてもいい人は限られる
前項で高額賠償の事例について触れました。任意保険は事故が起こらなければ使うことはない、いわゆる「掛け捨て」になります。事故が起こらないのであれば保険料は無駄になりますが、加入せずに事故を起こすと高額な賠償が生じる可能性があります。
手持ちの資金で賠償できるという人であれば任意保険に加入しなくても問題ありませんが、実際には数千万円から数億円の現金を保有している人は多くはないでしょう。
保険は「万一の時のために備える」ものですから、保険料が高いからといって加入しないのはハイリスクであるといえます。車は時として凶器になる危険な乗り物です。車を乗る人のマナーとして、相手方への配慮をするように心がけましょう。
出典
一般社団法人日本損害保険協会 自動車保険の加入率推移
一般社団法人日本損害保険協会 自賠責保険
株式会社損害保険ジャパン 高額賠償事案判例(人身事故)
株式会社損害保険ジャパン 高額賠償事案判例
執筆者:宇野源一
AFP