更新日: 2019.01.10 その他保険
保険金や満期金は運用の結果で決まる変額保険で運用は可能か?
3年ほど前まで「保険でお金を貯めたい、運用したい」という「ニーズ」に応えていたのは「低解約返戻金型終身保険」と言われる商品でした。
その商品は今もありますが、マイナス金利の影響を受けて「ニーズ」には応えることができなくなってしまいました。
その代わりに脚光を浴びている商品が「変額保険」ではないでしょうか?
(なお、本稿における変額は、保険料が平準払い(毎月払いor毎年払い)の商品を指し、主に金融機関等で取り扱われている一時払いの変額保険は対象としていません)。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役
専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。
そもそも変額保険とは?
生命保険は終身・定期・養老と3つのタイプに分けることができるのは、ご存知の読者もいらっしゃると思います。変額保険は終身・養老の2つのタイプがあります。
ここでは、まず終身タイプの変額保険について。
保険の期間は、契約してから終身、つまり生涯に亘り続く保険です。そして、毎月もしく毎年の保険料はずっと同じ金額です。と、ここまでは(変額ではない)一般的な終身保険と変わりません。
違う点としてはまず、保険金額は最低保証の額はあるものの、運用の成果によっては増えることもあり、また運用の成果によっては増えた保険金が減ってしまうこともあります。
そして、解約した時に受け取ることができる解約返戻金も運用の成果によって金額が決まりますので、解約のタイミングによっては、解約までに払った保険料の総額を上回る解約返戻金を受け取れることもあれば、その逆もあり得ます。解約返戻金に最低保証の金額はありません。
続いて、養老タイプの変額保険です。
満期がある、つまり保険の期間が定まった商品であることと、保険料はずっと変わらない、という点は(変額ではない)一般的な養老保険と同じです。違う点としてはまず、保険金額は最低保証の額はあるものの、運用の成果によっては増えることもあり、また運用の成果によっては増えた保険金が減ってしまうこともあります。
そして、解約した時に受け取ることができる解約返戻金と満期時に受け取ることができる満期金も運用の成果によって金額が決まりますので、払った保険料の総額を上回る解約返戻金を受け取れることもあれば、その逆もあり得ます。
解約返戻金や満期金に最低保証の金額はありません。
運用のリスクを抑えるために…ドルコスト平均法という考え方
先述の通り、変額保険は「運用の成果によっては…」という投資と同じ側面、つまり自己責任な点があります。そして「運用の成果」が、なるべくマイナスにならぬよう、つまりリスクを抑えた運用としてドルコスト平均法という考え方があります。
変額保険は言うまでもなく生命保険です。生命保険は大抵、毎月26日とか27日に、保険料が口座引落しになり、また先述の通り、保険料の金額はずっと変わらない商品です。なのでドルコスト平均法という投資手法を取ることができそうです。
ドルコスト平均法とは「定時定額投資」とも言って、「決まった時期(=定時)…例えば毎月末とか毎月初」に、「同じ金額で同じ商品」に投資し続けていくことです。
変額保険で運用は可能か?
「運用を目的に変額保険」を契約することは、筆者はさまざまな側面で疑問を感じます。しかし、本稿は字数などの都合もあるので「費用」という側面から考えてみたいと思います。某生命保険会社のサイトでは、変額保険の「費用」というページを見ると保険関係費として5つの費用が挙げられています。
そこでは、死亡保障などに必要な費用は、被保険者の年齢・性別などにより異なり、具体的な金額や上限額を表示することができないとされています。
つまり、毎月、支払う保険料のうち「費用として、いくら引かれるのか?」、すなわち「(毎月の保険料の中から)いくら投資に回るのか」がハッキリしない、ということです。
さらに「費用が一定の金額」か否かも定かではないので、「ドルコスト平均法」という投資手法が可能なのかも分からないのです。
ドルコスト平均法という投資手法を活かす「つみたてNISA」
変額保険と同じ「ドルコスト平均法」という投資手法を活かすのなら、「つみたてNISA」という選択肢があります。
「つみたてNISA」の対象になっている商品は、いずれも徹底したローコスト、つまり徹底的に費用を抑えた商品です。また、その費用も「(概算値ではありますが)いくら掛かった」のかを明示してくれることになっています。
「いくら投資に回っている」のかがハッキリしている、透明度の高い商品とも言えます。
まとめ
変額保険はセミナーなどをきっかけに検討される方が多いようです。しかし、そのセミナーは「売らんがため」になっていないでしょうか?
リスクだけでなく費用などについての詳しい説明も行われているのでしょうか?そもそも、なぜ「保険で運用」なのでしょうか?
マイナス金利の今だからこそ、視野を広げ、選択肢の幅を広げてみても良いのではないでしょうか?
ちなみに筆者は運用が大好きで、もう20年近くやっていますが、「変額保険で運用しよう」などとは一度も考えたことはありません。
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師