更新日: 2019.01.10 自動車保険

便利さの中にある課題。AIによる自動運転に、損保会社は対応できるか?

執筆者 : 束野浩

便利さの中にある課題。AIによる自動運転に、損保会社は対応できるか?
最近の自動車は、購入する以外にもリース、タイムシェア等により、所有や利用方法の選択肢も増えました。さらに自賠責保険(強制)や自動車損害保険、JAF等に加入されている人も少なくありません。

また従来のガソリン車(ハイブリッド車)から、電気自動車、燃料電池車に今後切り替わることが予想されています。

自動運転技術の発展は環境技術より進化が早く、自動車メーカー以外の新規参入も進んでくると思います。

完全自動運転の時代はいずれ来ると思いますが、それまでの間、人間(ドライバー)VSシステムとの共存の時代において、自動車保険の在り方、考え方、契約方法等、損害保険会社は自動車保険をどのように換えて対応していくのか、大きな課題を抱えているのではないでしょうか?

警察庁が今年1月4日に発表した平成29年自動車死者数(24時間以内に死亡した人数)は、と3694人、昭和45年を100とした場合、平成29年は22となり約1/5程度となり、人口10万人当たりの死者数は3人以下になりました。

自動運転技術の進展や飲酒運転等の激減により、今後死者数は減ると考えられます。

これらのことについて、消費者の視点で少し考えてみたいと思います。
束野浩

Text:束野浩(つかの ひろし)

ロングステイ財団登録アドバイザー

ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者
鹿児島県出身。電機メーカに入社後、銀行の情報システム営業を経て、平成25年FPとして独立。転勤族かつ趣味の旅行が高じて、渡航歴40数回。日本全国に宿泊した経験を活かし、ロングステイに関する個別相談やセミナー講師を務めている。日本FP協会福岡支部の幹事やマンション管理組合理事長、九州ロングステイ同好会の幹事の経験を活かしつつ、年金支給開始年齢65歳時代となるまでに、定年前からどのような準備をすれば良いのか等、健康年齢までにやっておきたい事、定年後の生活レベル向上へのアドバイスなどを中心に活動中。

安全運転技術が進むと自動車保険は本当に安くなるのか

自動車保険は、いろいろなリスクに対応するための金融商品なので、事故が発生したときの経済的損失を補填してくれます。
 
しかし、事故がない場合は万一のときの心の支えであり、消費者としては掛け捨ての生命保険と同じイメージとして考えるしかありません。
 
自動車を運転するためのリスクには大きく2つあります。
 
(1)運転者の人為的過誤や失敗(ヒューマンエラー)による補填
(2)車両本体の問題、天候や道路の問題、整備時のトラブル
 
自動車保険は、人や物の賠償、相手・自分の車両の修理が一般的です。実際にはもっと細かい内容の保険もあります。車の保険料は運転する人の、年齢性別、車種、免許証、使用目的、年間走行距離」等をもとに、細かく算出されます。
 
しかし自動運転(SAE)のレベルが、限りなく高度な自動運転や完全自動運転となった場合には、自動車保険の考え方を180度考え直す必要があります。それは運転するのが人間ではなく、コンピューターシステムだからです。
 
例えば、運転免許をもっていない子どもや老人をはじめ、酔っ払っている人も自宅まで勝手に運んでくれます。運転免許証も、運転者もいらないということです。自動運転の車が故障した場合、自動運転のレッカー車が修理工場まで運んでくれるでしょう。
 
自動車保険は前述したとおり大きく2つありました。人的リスクがなくなり、事故率が減れば保険金額も安くなります。
 
結果、従来の自動車保険は確実にマーケットが縮小します。人間が運転するのは、趣味の世界となり、運転するときだけ保険料を払うことになるため、保険料が高くなるかもしれません。
 

完全自動運転の車の自動車保険料は誰が払うのか?

従来の自動車保険は、所有者(担保先)、使用者が車単位で、1年更新する契約が一般的でした。最近では使う日(1日〜)だけネットで加入する自動車保険が登場、カーシェアリングのように使用する車種を問わない保険も出てきました。
 
さて、完全自動運転の車を所有した場合はどうでしょうか。従来どおりの保険で対応はできると思いますが、運転手がコンピューターなので、トラブルが発生した場合に所有者の責任はどうなるのでしょう?
 
例えばコンピューターのバグで異常走行、GPSのトラブル、道路の白線を間違って走行、故意に安全システムのセンサーを破壊等、自動車メーカー、道路の管理者、通信設備の会社等の企業責任の問題が関連してくることも考えられます。
 
従来の車と高度な自動運転の車が事故を起こした場合、事故を処理する交通警察官がどのような事故処理をして、その報告内容を保険会社がどのように判断し査定するのか? という問題もあります。
 
考えるだけで気が遠くなりそうです。
 
Text:束野 浩(つかの ひろし)
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、ロングステイ財団登録アドバイザー。