介護保険料が値上げ? 知っておきたい介護保険のこと
配信日: 2020.04.23
そこで、介護に関する負担を軽減するため、公的な医療保険の一つとして「公的介護保険」が整備されています。
公的介護保険の保険料は、加入者全員が負担する制度とは現状なっておらず、国民・組合を問わず健康保険に加入している方が40歳以上となった場合に、負担の義務が生じます。
近年は高齢化の深化により、公的介護保険金の支払額の増加が問題視されており、それに伴って現役世代が負担する公的介護保険料の取り扱いについても変化が生じ始めました。
直近では2020年4月から、大企業が運営する健康保険組合において緩和措置が終了するため、公的介護保険料が年間1万円以上増加するといったケースも出始め、2019年の消費税率改正と相まって現役世代の負担感が一気に増してきました。
とはいえ、公的介護保険は加入義務がありますし、いざ介護に直面した場合には極めて心強い制度でもあります。今回は、公的介護保険の仕組みと今後の保険料の動向について解説していきたいと思います。
執筆者:菊原浩司(きくはらこうじ)
FPオフィス Conserve&Investment代表
2級ファイナンシャルプランニング技能士、管理業務主任者、第一種証券外務員、ビジネス法務リーダー、ビジネス会計検定2級
製造業の品質・コスト・納期管理業務を経験し、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)のPDCAサイクルを重視したコンサルタント業務を行っています。
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公的介護保険の概要
公的介護保険は居住している自治体が保険の契約者となり、40歳以上になると徴収が始まります。公的介護保険の給付対象は、65歳以上の「第1号被保険者」と40歳以上65歳未満の「第2号被保険者」に区分されます。
第1号被保険者は原因を問わず、第2被保険者の場合は特定疾患(がん・脳血管疾患・関節リウマチなど)により、要支援・要介護状態の認定を受け、対象者の状態に沿ったケアプランに基づき、介護サービスを受けた場合に原則1割の自己負担額を差し引いた分の費用について保険給付を受けることができるようになります。
公的介護保険で重要なポイントは「要介護度の認定」となります。
要介護度の認定は要支援1から2と要介護1から5の7段階となっています。数字が大きくなるにつれて身体的な状況が悪化し、より広範な介護が必要となるため、利用できる介護サービスや利用限度額が引き上げられることになります。
要介護の認定は自治体が実施しており、介護サービスを希望する対象者と面談を行い、その状態から、全国共通の基準などを参考にして要介護度の認定を行うこととなっています。
公的介護保険料は今後も値上がりする?
公的介護保険料は自治体が契約先となるため、居住している場所や所属している健康保険制度によって異なります。
健康保険制度は、大企業が運営しその従業員や家族などが所属する「健康保険組合」と、単独では健康保険組合を維持できない中小企業の従業員や家族などが所属する「協会けんぽ」、または、健康保険組合や協会けんぽに所属していた退職者や自営業者など、前出の2つの健康保険制度の対象ではない人が所属する「国民健康保険」の3つに大別されます。
公的介護保険料は所得に応じて負担額が増加する総報酬割を採用していますが、2020年4月から大企業が運営し、所得の高い人が多く所属する健康保険組合において公的介護保険料の緩和措置が終了するため、保険料負担が大きく増加することになります。
この他にも、公的介護保険は利用する高齢者が増加し、働き手が減少するほど負担額は増加していきます。2022年度には団塊の世代が75歳以上に達するため、介護費用が大きく増加すると見込まれており、今後も保険料負担の増加傾向は続いていくでしょう。
まとめ
公的介護保険は、加齢や傷病などで要介護状態になったときにはとても心強い制度なのですが、人口動態の変化などにより現役世代の負担増が続いてしまっています。
また、公的介護保険料以外にも、2019年の消費税率の改正や2020年の給与所得控除の縮小など、家計への負担が増加しています。一つひとつは小額の負担増かもしれませんが、積み重なりによる影響は決して無視してよいものではないと考えます。
今後も増加すると見込まれている社会保険料などに備え、家計の中長期的な見直しを行ってみることをお勧めします。
執筆者:菊原浩司
FPオフィス Conserve&Investment代表