更新日: 2019.06.14 自動車保険

1日自動車保険を利用する前に知っておきたいこと

執筆者 : 横山琢哉

1日自動車保険を利用する前に知っておきたいこと
友人から車を借りるときや、実家に帰ったときだけ両親の車を借りて運転するようなとき、1日単位で補償を得ることができる自動車保険(以下、1日自動車保険と呼びます)を利用している人も多いのではないでしょうか。
 
1日自動車保険を利用すれば必要なときだけ割安な保険料で補償を得られ、万が一のときも所有者の保険を使わなくて良いというメリットがあります。
 
ただし、1日自動車保険を利用するうえで知っておくべき点があります。今回はこの点について解説します。
 
横山琢哉

執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)

ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)
フリーランスライター

保険を得意ジャンルとするFP・フリーライター。
代理店時代、医療保険不要論に悩まされた結果、1本も保険を売らずに1年で辞めた経験を持つ。
FPとして、中立公正な立場から保険選びをサポートしています。

1日自動車保険のメリット

1日自動車保険は1日単位(商品によっては12時間単位)で利用できるので、わずかな保険料で必要な補償を得ることができます。
 
年単位で契約する自動車保険は運転者を限定すると保険料が安くなるので、めったに運転しない人を運転者の範囲に含めると保険料が割高になってしまいます。しかし、1日自動車保険を利用すればこの点は解消できます。
 
また、1日自動車保険に加入しておけば万が一のときに所有者の保険を使わなくて済むので、所有者の等級が下がりません。保険を使うと単に等級が下がるだけでなく、一定の期間は「事故あり等級」が適用されて同じ等級でも高い保険料になるので、この点もメリットになります。
 
以上をふまえると、1日自動車保険はとても合理的な商品といえます。
 

1日自動車保険は人身傷害補償が用意されていない商品が多い

記事執筆時点(2019年4月)において、1日自動車保険を扱っている保険会社は以下の4社です。
 
・東京海上日動火災保険「ちょいのり保険」
・三井住友海上「1DAY保険」
・あいおいニッセイ同和損保「ワンデーサポーター」
・損保ジャパン日本興亜「乗るピタ!」
 
1日自動車保険では、搭乗者(運転者と同乗者)の補償については「搭乗者傷害保険」と「自損事故保険」の2種類となっていることがほとんどです。
 
人身傷害補償を用意しているのは「乗るピタ!」のみで、しかも保険料が高い上位プランでないと補償されません。
 
この点は、自動車を所有していて何度も自動車保険の契約をしたことがある人なら気になるのではないでしょうか。
 

人身傷害補償の付帯率はきわめて高い

年単位で契約する自動車保険における人身傷害補償の付帯率は、とても高いです。
 
損害保険料率算出機構によると、人身傷害補償の普及率は69.3%となっており、多くの人が人身傷害補償を契約していることがわかります。
 
人身傷害補償は相手方のある事故において、過失割合が決まらなくても保険金を受け取れる点や、治療費だけでなく休業損害なども含めてトータルに補償を受けられるのでメリットが大きいです。
 
人身傷害補償は年単位で契約する自動車保険において、搭乗者の補償を得るスタンダードな手段といって差し支えないでしょう。しかし、1日自動車保険ではそうとはいえない状況です。
 

搭乗者傷害補償では補償が不十分になることも

搭乗者傷害補償は定額払いのため、実際の損害に見合った保険金を受け取れないことがあります。
 
搭乗者傷害補償の保険金額は4社とも1000万円ですが、実際に1000万円が支払われるのは搭乗者が死亡するか後遺障害が残るようなケースのみで、単なるケガの場合は最大でも100万円となっています。
 
こうした数字はホームページにおいて明記されておらず、約款の細かい記載を確認しないとわかりません。この点は自損事故傷害補償も同様です。
 
同乗者については自賠責保険や対人賠償保険からも保険金が支払われるので問題になりにくいでしょう。しかし、相手方(自動車)のある事故で過失割合が高い場合や単独事故の場合、運転者の補償として十分とはいえないのではないでしょうか。
 

心配しすぎかもしれませんが……

実際に事故が起きたとき、以上で指摘した点が問題になる可能性はかなり低いでしょう。
 
しかし、1日自動車保険を利用する人は運転技術が未熟な人や運転機会の少ない人が多いはずです。そのため、車を貸す立場なら少し不安を覚えるのではないでしょうか。
 
もし心配なら少しくらい保険料が高くても、人身傷害補償のある商品を選ぶのが良いでしょう。
 
出典:損害保険料率算出機構「2018年度 自動車保険の概況」
 
執筆者:横山琢哉(よこやま たくや)
ファイナンシャルプランナー(日本FP協会 AFP認定者)