更新日: 2020.04.07 生命保険
あなたの古い生命保険に潜むトラブルの種
また、かなり昔に加入した生命保険では、保険金受取人が特定の人ではなく、「相続人」などとなっているケースもあります。これらはトラブルの元です。受取人のチェックをし、問題があれば再指定しましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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受取人が「相続人」となっているケース
例えば、契約者・被保険者が父親、保険金受取人は相続人という生命保険の保険金は、どういう割合で保険金を受け取るのでしょうか。
この点につき、平成6年7月18日の最高裁判決において、
「保険契約において、保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の相続人と指定した場合は、特段の事情のない限り、右指定には、相続人が保険金を受け取るべき権利の割合によるとする旨の指定も含まれているものと解するのが相当である」
としています。
つまり、相続人は、法定相続分の割合で保険金を受け取ることになります。例えば、相続人が母親、長男、次男の3人の場合、母親が2分の1、長男、次男がそれぞれ4分の1ずつの割合で保険金を受け取ることになります。
なお、これらは相続人固有の財産(みなし相続財産)であり、この保険金には非課税財産の適用(500万円×法定相続人の数)を受けることができます。
受取人が被保険者よりも先に死亡しているケース
被保険者以外の人が死亡保険金受取人に指定されている場合で、この受取人が被保険者よりも先に死亡しているケースを考えてみましょう。
例えば、契約者・被保険者が父親、保険金受取人は父親の母親という生命保険の保険金は、どういう割合で保険金を受け取るのでしょうか。
この場合は、保険金受取人が死亡した時点で、契約者は受取人の再指定をすべきでしたが、再指定をしないうちに被保険者が死亡した場合には、保険金受取人の相続人が保険金を受け取ることになります。
このときの保険金の受取り割合は、相続分ではなく、民法472条の規定によって、相続人で均等分割されます。上記のケースでは、保険金受取人である父親の母親の相続人は多数にのぼっていることが推測できます。
このような保険金の分け方は父親が意図していないと考えられるので、受取人が被保険者よりも先に死亡した場合は、この時点で保険金受取人の再指定をしておくと良いでしょう。
なお、受取保険金はみなし相続財産となり、相続税の非課税財産の適用(500万円×法定相続人の数)を受けることができます。
受取人が被保険者のケース
被相続人が自分自身を被保険者及び保険金受取人としているケースは、どのように考えたら良いでしょうか。この場合には、相続人は被相続人の保険金請求権を相続によって取得することになります。つまり、受取保険金は、みなし相続財産ではなく、本来の相続財産になります。
したがって、法定相続分または遺産分割協議によって各相続人の取得分が決定されます。また、この場合も、相続税の非課税財産の適用(500万円×法定相続人の数)を受けることができるとされています。
受取人が「妻・何某」となっているケース
例えば、契約者・被保険者が夫、保険金受取人が「妻・何某」となっている場合、契約後離婚した場合に「妻・何某」は保険金受取人としての地位も失うのでしょうか。
この点について争われた事案(最判昭和58年9月8日民集37巻7号918頁)があります。
判旨の一部を抜粋すると
「生命保険契約において保険金受取人の指定につき単に被保険者の『妻・何某』と表示されているにとどまる場合には、右指定は、当該氏名をもって特定された者を保険金受取人として指定した趣旨であり、それに付加した『妻』という表示は、それだけでは、右の特定のほかに、その者が被保険者の妻である限りにおいてこれを保険金受取人として指定する意思を表示したもの等の特段の趣旨を有するものではないと解するのが相当である」
としています。
つまり、
「『妻』という表示は、単に氏名による保険金受取人の指定におけるその受取人の特定を補助する意味を有するにすぎないと理解するのが合理的である」
ということです。
古い契約では、上記で見てきたようなケースが放置されたままになっている場合があります。これらはトラブルの元ですから、老親の保険証券を見直し、保険金受取人がどうなっているのか確認しましょう。
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー