更新日: 2019.06.14 医療保険
医療保険が必要・不必要と意見が分かれるワケ
最終的にはどちらがご自分の考えにより近いかという観点で選ぶことになると思いますが、本稿ではなぜ不要、必要両方の説が出てくるのかを解説します。
執筆者:金澤佳也(かなざわ けいや)
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、2級DCプランナー
宅地建物取引士、証券外務員1種、2種メンタルヘルスマネジメント検定
「安心して100年暮らせる」ためのアドバイス。
社会保障制度を踏まえたうえでiDeCo、NISA、保険の使い方のアドバイスを得意とする。
医療保険の歴史
医療保険がいつ頃から日本に出現したかご存知でしょうか? 実は1970年代でまだ50年程度の歴史なのです。生命保険は明治時代から始まって120年以上たっていることに比べると、まだその半分程度なのです。
一番初めの医療保険は、「特約」にすぎず、生命保険に加入しないと付加することができませんでした。その後、1970年代半ばに外資系生命保険会社が日本に進出するにあたり政府の規制緩和もあり、ようやく医療保険単体の商品が出現したという歴史になっています。
また、医療保険を論じる上では、社会保険制度も無視することができませんのでそちらも少し解説します。
ご存知の通り日本の国民皆保険制度は高度経済成長期にある1958年に国民健康保険法が制定されたことから始まりました。国民が加入している健康保険を大きく分類すると3つです。被用者保険、国民健康保険、後期高齢者医療制度です。
それらの内容の変化を見てみると、国民の約6割が加入している「健康保険組合」又は「協会けんぽ」については、自己負担割合が当初はゼロであったものが、定額負担(60年代)1割(1984年~)→2割(1997年~)→3割(2003年~)と増加してきました。
一方で国民の約3割が加入している国民健康保険は、5割と3割の混在→3割(1963年~)と減少しました。
最後に国民の約1割が加入している後期高齢者医療制度は、2008年からの新しい制度で自己負担割合は1割(現役並所得者は3割)ですが、かつての「老人福祉法」(1973年~)のもとでは自己負担ゼロ、「老人保健法」(1982年~)のもとでは数百円の定額負担となり、2001年からは自己負担割合1割と増加してきました。
これらを踏まえた上で、民間の医療保険の有用性を考える。
公的医療保険制度が充実しているから、医療保険は不要という説に対しては現時点の制度が今後も維持されるという前提であれば、同意できる部分もあると考えられます。
高額療養費制度があるので、月単位の負担額は計算できますし、負担額の数年分を貯蓄運用しておけばその他の用途にも流用できるという面はあるでしょう。
しかしながら、医療費にはお見舞いや入院時の自己負担額(食事療養費や差額ベット代等)といった統計などでは表れにくく、不明確な部分が多いという点、治療が長期にわたる病気にり患した場合などはどうでしょうか? そのような場合については果たして不要と言い切れるでしょうか。
さらには社会保障改革と叫ばれている今、医療保険制度が現在と同様の状況で維持あるいは今後より高齢者に有利な改正という状況が発生する可能性は高いでしょうか?
シンプルに歴史を振り返れば、利用者負担は増加している状況、かつ政府などの財政は悪化していることを鑑みれば、むしろ今より悪い状況を想定しておく方が将来的に安心につながる可能性が高いといえるでしょう。
そのために民間の医療保険に加入し、仕事をしている間に保険料を支払い終えてしまうという選択肢も、老後の医療費に備えることにつながるのではないでしょうか?
まとめ
民間の医療保険の要・不要論は大前提となる公的医療保険がどのような推移になるかをどう考えるかが一番大切です。これまでの歴史を踏まえ、かつ、今国会などでどのような議論がされているかを見ることが近道だといえます。
これを機会に保険に加入されている方は、ご自分の医療保険が将来の自分を支えてくれるか、加入されていない方は加入しないでも大丈夫か、について考えてみてはいかがでしょうか。
執筆者:金澤佳也(かなざわ けいや)
トラスト 代表取締役
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP、2級DCプランナー
宅地建物取引士、証券外務員1種、2種メンタルヘルスマネジメント検定