更新日: 2020.03.09 生命保険
「掛け捨ての生命保険は損」って本当?貯蓄性のある生命保険に入ったほうが良いの?
執筆者:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。
ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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生命保険は預貯金とは違う
貯蓄性のある生命保険は、保障に貯蓄性を備えた保険です。保障と貯蓄性を備えた保険には、終身保険や養老保険があります。保障よりも貯蓄性を重視した保険には、個人年金保険や学資保険があります。
終身保険は、解約の時期によっては多額の解約返金を受け取ることができます。養老保険は、中途解約の場合は解約返戻金、満期時には満期保険金を受け取ることができます。
しかし、一般に、契約後、早期に解約した場合には、通常は、解約返戻金はないか、あっても僅かな解約返戻金しかありません。したがって、解約時、多額の解約返戻金を受け取るためには、長期間保険料を払い続ける必要があります。
また、予定利率の低いときに加入すれば、一般の生命保険は、契約時の予定利率で固定されますので、保険料を何十年払っても、支払った保険料の総額以上に解約返戻金を受け取ることができないというケースもあります。
いつ、解約しても元本割れすることはない預貯金と保険とは根本的にしくみが違います。
予定利率を理解していますか?
よくある勘違いに、例えば、予定利率2%という場合、支払った保険料全額を2%で運用してくれると思っているケースがあります。
保険料には、保険金や解約返戻金に充てられる「純保険料」と保険会社の経費に充てられる「付加保険料」があります。このうち「付加保険料」は運用に回されません。支払った保険料から「付加保険料」などが差し引かれた残りが予定利率で運用されるのです。
したがって、「付加保険料」などの部分が大きいと、予定利率がよっぽど高くないと、満期時に元本割れするというケースがあります。予定利率は預貯金などの金利とは違いますので勘違いしないようにしましょう。
貯蓄性のある生命保険は高金利時に加入する
先述した通り、一般の生命保険は、契約時の予定利率で固定されます。したがって、低金利のときに貯蓄性の生命保険に加入するのは不利です。逆に高金利の時に加入すれば、予定利率も高いので得ということになります。
「お宝保険」ということばを聞いたことがあると思いますが、これは、予定利率が高い時に加入した生命保険のことです。こういう保険は、保険料の支払いが負担になったときに解約せずに、「払済保険」への変更を検討すると良いでしょう。
ただし、貯蓄性のある生命保険は、掛け捨ての生命保険(定期保険、医療保険など保障重視の保険)に比べ、保険料がかなり割高になります。
掛け捨ての生命保険は損?
貯蓄性のある生命保険は、掛け捨ての生命保険に比べ、割高な保険料を払い続けなければならないリスクがあります。なぜなら、中途解約した場合には、元本割れするだけではなく保障も失うことになるからです。貯蓄性のある生命保険は継続しなければ意味がありません。
高い保険料は家計を圧迫します。長い人生の中では、結婚、出産、教育、住宅購入など、大きなお金がかかります。支払保険料の額が多すぎて、これらライフイベントに必要な貯蓄を十分にできないようでは本末転倒です。
保障と貯蓄は、別々に考え、保障は、保険料の安い掛け捨ての保険で備え、貯蓄は他の金融商品を検討するほうが、無理なく保険を継続できるでしょう。
また、同じ保険料を支払うのであれば、掛け捨ての生命保険のほうが大きな保障を買うことができます。このように、掛け捨ての保険は一概に損とは言えません。
もちろん、高い保険料でも無理なく支払えるという方は貯蓄性のある生命保険に加入するのも良いと思います。ただし、予定利率が高い時に加入しましょう。
Text:新美 昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー