更新日: 2019.01.10 生命保険

知っておきたい生命保険の見直しの方法…払済保険と延長保険

執筆者 : 大泉稔

知っておきたい生命保険の見直しの方法…払済保険と延長保険
「保険の見直し」と言うと、「加入済みの保険を解約して、時代に合った新しい保険に加入する」というイメージをお持ちの方が多いかも知れませんが、他の見直しの方法はないのでしょうか?
大泉稔

Text:大泉稔(おおいずみ みのる)

株式会社fpANSWER代表取締役

専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師
明星大学卒業、放送大学大学院在学。
刑務所職員、電鉄系タクシー会社事故係、社会保険庁ねんきん電話相談員、独立系FP会社役員、保険代理店役員を経て現在に至っています。講師や執筆者として広く情報発信する機会もありますが、最近では個別にご相談を頂く機会が増えてきました。ご相談を頂く属性と内容は、65歳以上のリタイアメント層と30〜50歳代の独身女性からは、生命保険や投資、それに不動産。また20〜30歳代の若年経営者からは、生命保険や損害保険、それにリーガル関連。趣味はスポーツジム、箱根の温泉巡り、そして株式投資。最近はアメリカ株にはまっています。

加入済みの保険に充足感あり?なし?

生命保険文化センターの調査によると「加入している生命保険の保障内容に対する「充足感あり」は38.2%、同じく「充足感なし」は32.3%となっています。(平成27年度 生命保険に関する全国実態調査〈速報版〉)。加入している生命保険に充足感の無い方は、見直しの余地がある、ということなのでしょうか?
 

そもそも、「保険の見直し」って、どうするの?

読者の皆さまは「保険の見直し」と言うと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
 
「現在、加入している生命保険を解約し、今の私や時代に合った商品を選んで、新たに契約する」という感じでしょうか?
 
もちろん、そういう方法もありですね!
 

ところで、予定利率と言う言葉を、お聞きになったこと、ありますか?

予定利率とは生命保険の保険料を計算する要素の1つです。「生命保険会社は資産運用による一定の収益をあらかじめ見込んで、その分だけ保険料を割り引いています。その割引率を予定利率と言います。」(生命保険文化センターより引用)。
 
つまり、生命保険は予定利率が高い方が、保険料が安くなります。
 
そして、金融庁が発表する標準利率を基に、保険会社は商品ごとに予定利率を決めます。
 
予定利率は平成13年には1.75%でしたが、平成25年に1.00%、そして、平成29年には0.25%にまで引き下げられています。
 
加入済みの生命保険の予定利率は変わることがありません。なので、平成13年~平成24年に掛けて契約した終身保険や個人年金保険などは、今でも、加入した当時の予定利率なのです。また、満期を迎えていない養老保険や定期保険なども、加入した当時の予定利率です。
 
特に、保険の期間が長い、終身保険や個人年金保険は予定利率の影響が大きいです。
 
しかし満期を迎え更新した定期保険や転換を行った終身保険などは、更新や転換した時点の予定利率で保険料を計算します。
 
つまり、昔、契約した生命保険は「(高い予定利率という意味で)お宝な保険」と言えるのではないでしょうか?
 
もし、保険の見直しが「現在、加入している生命保険を解約し、今の私や時代に合った商品を選んで、新たに契約する」と言うことですと、(先述の)お宝な保険を解約してしまうことになります。
 

「お宝な保険」を解約せずに保険を見直す方法は?

お宝な保険を解約してしまうのは、「お宝な」だけに、もったいないですよね。
 
特に、終身保険のように「終身保険で保障を確保しつつ、解約返戻金で老後資金を確保したい」という方にとっては、「お宝な保険」を解約したくないですよね。
 
しかし、ご自身や家族の事情、経済環境の変化で、保険の見直しをしたい、「お宝な保険」と言えども、保険料の払込を続けていくのが難しい、ということもあるでしょう。
 
そんな方のために「払済保険」と「延長保険」という選択肢があります。
 

「払済保険」と「延長保険」とは?

「払済保険」や「延長保険」とは、どちらも商品名なので、新たに契約することはできません。終身保険や個人年金保険、養老保険、長期定期保険などの「解約返戻金がある保険」に既に加入している方が「払済保険」や「延長保険」に変更することができる制度です。
まず、払済保険から見ていきましょう。
 
既に加入している「解約返戻金がある保険」、例えば、終身保険を払済保険に変更すると、どうなるでしょうか?
 
まず、払済保険に変更するためには健康告知などは不要です。払済保険に変更すると、以後の保険料の支払いは不要になります。
 
保険の期間、つまり終身なのは変わりません。が、保険金額は縮小し、特約は全てなくなります(ただし、リビングニーズ特約は残ります)。そして、予定利率は契約時の予定利率が、そのまま適用されます。
 
なお保険金額が縮小するのに合わせるように解約返戻金も減りますが、その後は、予定利率に基づき、解約返戻金は将来に向かって増えていきます。
 
続いて、延長保険です。
 
既に加入している「解約返戻金がある保険」、例えば、終身保険を延長保険に変更すると、どうなるでしょうか?
 
まず、延長保険に変更するためには健康告知などは不要です。延長保険に変更すると、以後の保険料の支払いは不要になります。
 
保険金額は契約時の金額と変わりませんが、保険の期間が終身から「一定の期間(15年間とか、60歳までとか)」に短縮し、特約は全てなくなります(ただし、リビングニーズ特約は残ります)。
 
そして、予定利率は契約時の予定利率が、そのまま適用されます。
 
なお、延長保険に変更するのは、(保険料の支払いのない)定期保険への変更とも言えますので解約返戻金はありませんが、変更した時に解約返戻金を受け取ることができる場合があります。
 

留意点とまとめ

「払済保険」や「延長保険」に変更することができない商品があります。例えば、特定(三大)疾病保険です。また、税制適格特約付きの個人年金保険(=個人年金保険料控除の対象になっている個人年金保険)は契約してから10年間は変更することができません。
 
その他に、低解約返戻金型の保険の一部の商品など。
 
ちなみに、約款には「できること」は書いてあっても、「できないこと」は書いていないと思われます。なので、「払済保険」や「延長保険」への変更を希望する場合は、保険会社に確認した方が良いでしょう。
 
Text:大泉稔(おおいずみ みのる)
株式会社fpANSWER代表取締役 専門学校東京スクールオブビジネス非常勤講師

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