更新日: 2020.05.07 その他相続
120年ぶりの民法大改正。2020年4月から生活のルールはどう変わった?
この民法は1896年に制定されて以来、何度も改正を重ねてきましたが、その基本的構造はほとんど変わらないままでした。
しかし、この度大きな見直しが図られ、実に120年ぶりともいえる大改正がなされました。その大改正された民法が、いよいよ4月1日からスタートしました。
執筆者:佐々木達憲(ささき たつのり)
京都市役所前法律事務所弁護士
相続・事業承継を中心とした企業支援と交通事故が主要対応領域。弁護士としての法律相談への対応だけでなく、個人投資家兼FPとして、特に米国株投資を中心とした資産運用に関するアドバイスもご提供。京都を中心する関西圏に加え、毎月沖縄へも通っており、沖縄特有の案件も数多く手掛けている。
民法とはどの様な法律?
民法という法律が、私たち市民の生活で使われている基本的ルールといわれても、実感がわかないという方もおられるのではないでしょうか。
しかし、民法は実はとても私たちの身近なところで使われています。
例えば、皆さんがお店でお金を払って物を買う際、どの様な契約が取り交わされているかご存じでしょうか。あるいは、賃貸マンションに入居した際やお金の貸し借りをした際、実はそれらのやり取りをする際の契約のルールは、民法という法律に明確に定めがあります。
あるいは、交通事故に遭いケガをした場合、治療費等賠償金を請求できるのも、民法に根拠が定められています。
さらには、相続が発生した場合の取り分等、家族関係のルールについても、この民法という法律にて定められているのです。
民法がすごく身近な法律だというイメージに、なりませんか?
今回の大改正で変わったこと
4月1日から開始された大改正では、民法のうち主に債権法と呼ばれる分野が大きく変わることとなりました。
特に、定型約款・保証・時効・法定利率といった分野が重要な改正といわれています。
上記を見ただけでは、何だか難しそうな言葉が並べられている、と感じてしまう方もおられると思います。
なるべくイメージしやすい概念として、「法定利率」を例に取り上げてみます。
・法定利率の改正 ~5%の固定金利から緩やかな変動金利制へ~
お金を貸す際に、利息を支払う約束はしたものの、その利息を何%にするか約束していなかった場合、利息の計算はどうなるのでしょうか。
あるいは、交通事故に遭って損害賠償金を請求することになったけれども、事故発生日から支払いの日まで時間がかかった場合の、遅延損害金は?
これらについて、改正前の民法では、一律年利5%と定めていました。でも、低金利が続く現在、年5%の金利なんて、現実的ではありませんよね。
そこで見直しされた結果、改正により4月1日からはいったん3%へと引き下げされることとなりました。でも、それだけではありません。今後3年ごとに市中金利の変動を確認し、市中金利が大きく変動する場合には、それに合わせて法廷利率も見直されることとなったのです。
その結果、交通事故の遅延損害金については、被害者が受け取る金額が減ることとなりますが、その代わりに中間利息控除というものも見直されるため、逸失利益というものは増額する可能性が高くなります。
私たちの生活に大きく関わる大改正
その他にも、これまで契約の世界でよく使われていた定型約款というものが明文化される、一部の保証契約において公証人による保証意思確認が必要となる、時効の考え方がこれまで大きく変わる等、4月1日からの民法大改正では、私たちの生活に大きく関わる変動がたくさんあります。
これらは、私たちの身近なルールの変更ですので、ぜひ注目してみてください。
(参考)
法務省 法定利率に関する見直し
執筆者:佐々木達憲
京都市役所前法律事務所弁護士