更新日: 2020.02.21 その他相続
相続人全員が相続を放棄…相続財産はどうなってしまうの?
しかし、相続する財産が正の財産より負の財産の方が多い場合、つまり借金の方が多い場合については、多くの場合、相続の放棄を選択します。
相続財産のすべて(正の財産も)を放棄するという選択です。限定承認という選択もありますが、ここでは相続人全員が相続放棄をした場合、最終的にその相続財産はどこへいってしまうのか?これを解説します。
執筆者:内宮慶之(うちみや よしゆき)
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング技能士1級
会計事務所では、税務会計コンサルティングの他、資産税や相続事業承継の経験も豊富。
現在、相続及びライフプラン全般における相談業務、講演、執筆、非常勤講師などの業務を中心に活動している。高等学校での講演も多く金融経済教育にも尽力している。
平成30年度日本FP協会『くらしとお金の相談室』相談員、大阪市立住まい情報センター専門家相談員、修学支援アドバイザー(大阪府教育委員会)にも就任している。
相続の放棄とは
相続の放棄とは、正の財産も負の財産もすべて相続しないという選択です。正式な相続放棄には期限が定められており、その相続人が「その相続の開始があったことを知った日から3ヶ月以内』に被相続人の住所地に所在する家庭裁判に申告しなければなりません。なお、相続開始前の相続放棄は認められません。
具体的なシチュエーション
一般的な核家族のイメージです。
4人家族 ⇒ 父・母・兄・弟 ※父が亡くなった場合
◇第一順位の相続人
母と兄と弟 ⇒ 全員が相続放棄
◇第二順位の相続人
父の父母 ⇒ 既に他界
◇第三順位の相続人
父の兄弟姉妹 ⇒ 同じく全員が相続放棄
全員が相続放棄した場合の相続財産の行方
相続人全員が放棄した財産は持ち主が存在しない財産となります、民法では持ち主が存在しない財産のことを、「無主物」といいます。
民法では持ち主が存在しない財産について誰の所有になるのかを規定しています。無主物先占、遺失物拾得、埋蔵物の発見、等々規定されていますが、相続財産についてはどれにもあてはまりません。
結果、相続財産は「無主物」には該当しないということになります。民法では、特別な規定の適用により所有者が存在しない相続財産を規定しています。
所有者が存在しない相続財産自体が人格をもつ
相続人全員が相続放棄を選択し、所有者が存在しない相続財産は、その相続財産自体が人格をもちます。法律上法人格を取得し、「相続財産法人」として法律上「人」として取り扱われます。
相続財産法人の処理
財産自体が人格をもち、法律上の「人」として取り扱われたとしても、財産がひとりでに自身を処理できるわけもなく、ではどのように処分されるのかということですが、「相続財産管理人」というリアルな人を家庭裁判所が専任します。
この「相続財産管理人」(以後、「管財人」)が、法律上の「人」である、所有者が存在しない相続財産を管理し処分を進めていきます。
管財人の仕事
管財人はその所有者が存在しない相続財産について、清算を行います。その財産を精査し借金等の支払いをします。負債清算後、もし正の財産が残っており、家庭裁判所が認める特別の縁故者※等がある場合については、その特別縁故者に引き渡されます(家庭裁判所の判断による)。
まとめ
最終的に、借金(負債)清算後も正の財産が残っている場合については、特別の縁故者に引き渡されますが、その引き渡し額(全部または一部)は家庭裁判所の判断により決定されます。特別の縁故者に引き渡された後、なお残る財産については、国庫に帰属することになっています。
反対に負債が残る場合については、破産免責等の処理がなされるようです(借金[負債]清算の際、受遺者[遺言により相続財産を取得する者]が存在する場合についてはここではふれておりません)。
※特別の縁故者とは
・生前被相続人と生計を一にしていた
・被相続人の生前、看護療養に貢献した
・その他、生前被相続人と特別の縁故があった
・法人(学校法人、公益法人、宗教法人等)も縁故者になれる
⇒特別の縁故者として財産分与を請求するためには、家庭裁判所に申し立てが必要です。
執筆者:内宮慶之
内宮慶之FP事務所代表
CFP認定者(日本FP協会所属)、ファイナンシャルプランニング
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