更新日: 2019.11.05 その他相続

相続法の改正によって配偶者が得することとは?

相続法の改正によって配偶者が得することとは?
相続法は、1980年(昭和55年)に改正されて以来、大きな見直しがされていませんでしたが、2018年(平成30)7月に関連する法律が成立しました。ちなみに相続法とは、人が死亡した場合に、その人(被相続人)の財産がどのように継承されるなどに関する基本的なルールであり、民法に定められています。
 
このたびの相続税の大きな改正には、わが国における平均寿命が延び、社会の高齢化が進展するなどの社会経済の変化が生じており、そのような変化に対応するためといった背景があります。
 
今回は、その改正の中で、被相続人の死亡により残された配偶者への生活配慮等の観点から2つの改正が行われたので、それについて詳しく見ていきたいと思います。
 
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

配偶者居住権の創設(2020年4月1日(水)施行)

■配偶者居住権とは

配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者に終身または一定期間、その建物に無償で居住できる権利のことです。

■改正によるメリット

(1)従来は、不動産の評価額は一般的に高額であるため、遺産分割で配偶者が自宅を相続すると現金や株式などのその他の資産を相続できずに生活資金が確保できなかったが、配偶者居住権の創設により生活資金が確保しやすくなります。
 
(2)遺産分割により自宅を処分せざるを得ないケースが発生するなど、配偶者が自宅に住めなくなってしまう問題が解消できます。
 
つまり、この配偶者居住権の創設により、配偶者は自宅に住み続けることができるだけではなく、自宅以外の現金などの流動資産を相続しやすくなり生活資金を取得できます。

■具体例

これを具体的な簡易的な例で見てみましょう。相続人が配偶者と子、遺産が自宅2000万円と預貯金3000万円の場合。配偶者の取り分は、以下のとおりです。
 
<改正前>
(2000万円+3000万円)÷2=2500万円
例えば、配偶者が自宅に住み続けると自宅(2000万円)以外に預貯金の500万円が相続となり、子は、遺産の半分である預貯金の2500万円を相続します。このケースですと、配偶者は住む場所は確保できますが、その後の生活費が不足する可能性があります。
 
<改正後>
配偶者居住権1000万円、預貯金1500万円を配偶者が相続することができます。つまり、住む場所もあって、生活費も確保することができます。ちなみに、子は負担付所有権1000万円(※)、預貯金1500万円を相続します。
 
(※)ここでは、簡易的に「建物敷地の現在価値 - 負担付所有権の価値 = 配偶者居住権の価値」としました。
 

居住用不動産の贈与等に関する優遇措置(2019年7月1日(月)施行)

■法律の内容

婚姻期間が20年以上である夫婦間で、居住用不動産(居住用建物またはその敷地)の遺贈または贈与がされた場合については、原則として、遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。

■改正によるメリット

配偶者は、生前贈与を受けた自宅を遺産分割の対象にされずに、住居を確保できるようになり、事実上、自宅を取得した配偶者の相続分が大幅に拡大されることになります。

■具体例

相続人が配偶者と子2名(長男と長女)。配偶者に居住用不動産の持ち分のうち2分の1である2000万円を生前贈与、その他の資産が6000万円の場合。配偶者の取り分は以下のとおりです。
 
<改正前>
配偶者の遺産分割時の取り分:(8000万円+2000万円)×1/2 − 2000万円=3000万円
生前贈与された2000万円も遺産分割の対象になります。
最終的な取得額:3000万円+2000万円=5000万円
 
<改正後>
配偶者の遺産分割時の取り分:(6000万円+2000万円)×1/2=4000万円
最終的な取得額:4000万円+2000万円=6000万円
生前贈与された2000万円は遺産分割の対象にならないため、配偶者の取り分が、このケースの場合では1000万円増えることになります。
 
以上、相続税の改正のうち配偶者にとってメリットのある2つの法律について紹介しました。実際の相続にあたっては、弁護士や税理士、司法書士などの専門家に相談するのもよいでしょう。
 
なお、税務署や税理士会などが行っている無料相談もありますので、専門家に相談する前に、まずは無料で相談をすることからはじめるとよいでしょう。
 
(出典)
法務省「相続に関するルールが大きく変わります」
法務省「相続税法の改正」
 
執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー


 

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