更新日: 2019.09.27 相続税
生命保険の相続税が非課税になる受取人は誰?
また生命保険(死亡保険)には、相続税の非課税枠があるため、相続税の節税対策として使えるというメリットもあります。今回は、相続税の節税対策としての生命保険(一時払い終身保険)について考えてみましょう。
目次
節税対策として死亡保険に入る目的は
節税対策としての死亡保険は、相続財産、特に現金がたくさんあり相続税の非課税枠を超えてしまうため、相続時に妻や子の相続税の負担を減らしたいという方が使います。
また、財産の大半が不動産で金融資産があまりない方が納税資金を確保するために生命保険を利用する場合もあります。葬儀の費用やとりあえずの生活費として利用することも、もちろん可能です。
相続税がかかる仕組み
相続税の基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。したがって、この基礎控除額を超える財産がある場合には、相続税が課税されるということになります。
例えば、法定相続人が3人いる場合では、「3000万円+600万円×3人=4800万円」が基礎控除額となり、4800万円以下の相続財産について非課税となります。また、相続税は累進課税になっており、相続財産が多いほど税率は高くなっていきます(※1)。
保険料の負担者によって税金が変わる
相続税対策として死亡保険を利用する場合、保険料の負担者が誰かによって、相続税対策の対象にはならないこともあります。以下のケースで見てみましょう。
ケースA:被保険者が(夫) 契約者・保険料負担者が(妻)で 受取人が(妻)の場合
ケースB:被保険者が(夫) 契約者・保険料負担者が(夫)で 受取人が(妻)の場合
「ケースA」は所得税の、「ケースB」は相続税の対象になります。誰が保険料負担者になるかにより、対象となる税金は変わります。相続税において節税対策の対象となるのは、この場合、「ケースB」となります。
生命保険の相続税が非課税になる受取人と非課税枠は?
生命保険金(みなし相続財産)が非課税となるのは法定相続人が対象です。非課税枠は「法定相続人の数×500万円」となっています。例えば、法定相続人が3人(妻と子供2人)の場合の非課税枠は、「500万円×3人=1500万円」となります。
生命保険の税金はどうなるの?
妻が受取人の場合は、1億6000万円までは配偶者特別控除があるので非課税です。一方、子が受取人の場合は、生命保険の非課税枠を超えた部分はみなし相続財産として、相続税の累進課税の対象となります。
どのくらい変わる? 相続税の計算例
相続税の計算方法は、「相続財産の総額」から「基礎控除額等」を差し引いて「各相続人の相続分の税率」をかけて計算します。具体例を元にして計算してみましょう。
<具体例>
「夫婦と子供2人の家族で夫が死亡した場合の相続税」
・相続財産が1億円(現金)
・法定相続人は妻と子供2人の3人
・死亡保険(1500万円)は被保険者が(夫)契約者・保険料負担者が(夫)受取人が(妻)
相続財産を法定相続分通りに相続するというケース
課税価格 1億円
相続財産(現金1億円+死亡保険1500万円=1億1500万円)-生命保険金非課税額(500万円×3人=1500万円)=1億円
課税遺産総額 5200万円
課税価格(1億円)-基礎控除額(3000万円+600万円×3人=4800万円)=5200万円
法定相続分に応じた取得金額 5200万円
妻 5200万円×1/2=2600万円
子 5200万円×1/4=1300万円
子 5200万円×1/4=1300万円
相続税の総額 630万円
法定相続分に応じた取得金額が、1000万円より多く3000万円以下の場合、相続税率は15%、控除額は50万円ですので、以下のようになります。
妻 2600万円×0.15-50万円=340万円
子 1300万円×0.15-50万円=145万円
子 1300万円×0.15-50万円=145万円
妻は配偶者特別控除(1億6000万円)が使えますので実質的に相続税はゼロとなり、相続税の合計は子供2人分(145万円×2人)の290万円となります。
納付税額 290万円
子 145万円×2人=290万円
まとめ
生命保険の非課税額は相続財産より引かれることになり、「法定相続人の数×500万円」分の金額を上限として課税価格が減額されますので、有効に活用しましょう。
なお、2次相続(妻の死亡による相続)が発生したときには、子供に生命保険を相続しておいた方がトータルの税金が安くなる場合もありますので、検討の必要があります。
ちなみに、平成29年度で見ると、被相続人数(死亡者数)約134万人に対し相続税が課税された被相続人数(死亡者数)は約11万2千人で、課税割合は8.3%となっております(※2)。
平成27年度以降の相続税の基礎控除額の縮小に伴い、相続税が課される被相続人の数は平成26年度の約4%強に比べると、倍近くになっています。相続税も身近な税金になってきましたね。
出典
(※1)国税庁 No.4155相続税の税率
(※2)国税庁 平成29年度分の相続税の申告状況について
執筆者:小久保輝司
幸プランナー 代表