<相続税対策> 財産は少なく債務が多い。相続の放棄が出来るか
配信日: 2017.10.19 更新日: 2019.01.08
ファイナンシャルプランナーCFP(R)認定者、相続診断士
大阪府出身。同志社大学経済学部卒業後、5年間繊維メーカーに勤務。
その後、派遣社員として数社の金融機関を経てFPとして独立。
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通常の場合が「単純承認」
相続が発生した時点では、相続財産の実情がわからない場合が、現実にはかなりあります。
事情が正確にわかり、明らかに相続財産が多いときは、そのまま相続します。これが「単純承認」という最も一般的な相続の方法です。
しかし、果たしてそのまま相続してよいのかを考えるケースもあります。相続の意思表示は3か月の猶予期間があるため、その間に各相続人は中身を調べ、意思表示をしなければなりません。この3か月間を「熟慮期間」といい、一度意思決定をすると変更ができません。この間に何もしない場合は「単純承認」をしたとみなされ、負債を含めすべての財産を引き継ぐことになります。
多少借金があっても、プラスの財産が多いことがはっきりしている場合は、どちらも相続する「単純承認」を選択します。ただし、マイナスの資産のほうが多いときは、単純承認をしてはいけません。マイナスの資産も抱えてしまうからです。
債務が多ければ「相続放棄」を
相続財産を点検し、明らかに債務のほうが多くなるときは、相続を一切しない方法が選択できます。これを「相続放棄」といいます。被相続人が持っていた多額の負債を、相続人の責任で承継させることは不合理だからです。放棄するときは、相続人は3か月以内に「相続放棄申述書」を家庭裁判所に提出します。この手続きは、各相続人がそれぞれ個別に行います。
この書類が受理されると相続放棄が認められますが、その後の取り消しは出来ません。他の相続人や第三者に対して、変更すると迷惑をかけてしまうからです。ただし、第三者に脅迫された場合や、未成年が法定代理人の承諾なしに放棄をした場合は、放棄を取り消すことができます。しかし、相続放棄をした後に、相続財産の処分や隠匿の事実が判明すると、放棄自体が取り消されます。単純承認として扱われ、すべての債務を承継しなければなりません。
財産を精査し判断する「限定承認」
相続が発生した時点で、プラスの財産とマイナスの財産の両方があり、精査しないとすぐには判断できないケースもあります。遺産の額や種類が判明するまで、ある程度の時間がかかるためです。相続放棄をした後に、多額の銀行預金が見つかり「相続放棄などしなければよかった」と悔やんでも、その後の変更はできません。その逆に、単純承認を選び、その後に多額の負債が出てきたときは、悲劇的な事態になります。
プラスもあるが、おそらくマイナスの財産のほうが多いと思われるときや、どちらが多いか不明なときは、「限定承認」という相続方法が選択できます。これは、かなり現実的な方法で、相続するプラスの財産の範囲内でマイナスの財産も承継します。財産の内容を検討できますので、限定承認は非常に有効な相続方法です。
実際に精査を行い、プラスの財産が多くなれば、マイナスとなる債務をすべて返済した後に、差し引いた残りの財産を相続します。逆にマイナスとなる債務が多ければ、プラスの財産ですべて精算した後に、残りの「相続放棄」をします。相続人全員が財産目録を作成し、家庭裁判所へ提出する必要があります。