親の遺産をあてにしていたのですが、まさかの貯金「ゼロ」! 都内にある実家の相続税が払えないのですが、手放すしかないですか?

配信日: 2025.06.19

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親の遺産をあてにしていたのですが、まさかの貯金「ゼロ」! 都内にある実家の相続税が払えないのですが、手放すしかないですか?
親の遺産を相続することになったものの、現金はほとんどなく、不動産だけが遺された……。そのようなときは、相続税の支払いが必要になるケースがあります。もし相続税を支払えないという場合、実家を相続することはできないのでしょうか?
 
今回の記事では、相続税が支払えない場合はどうなるのか、そしてそのようなときの方法や対策について解説していきます。

相続税が支払えないとどうなる?

相続税の支払いができない場合、まず何が起こるのでしょうか?
 
相続税は、親が亡くなってから10ヶ月以内に支払う必要があります。この期限を過ぎて支払わないでいると、延滞税が発生し、その額は時間の経過とともに膨らんでいきます。最終的に支払いが滞ったままだと、税務署は差押えの手続きを進め、不動産が公売にかけられることも。つまり、実家を手放すようなこともあるのです。
 
では、相続税の支払いが難しい場合、どのような選択肢があるのでしょうか。国が用意している救済策としては、「延納」や「物納」という制度があります。さらに、自分で取れる具体的な方法としては、不動産担保ローンの活用や不動産の一部売却などもあります。以下で、それぞれの特徴を見ていきましょう。
 

国の救済措置とは?

相続税の納付は、原則として現金一括払いです。しかし、現金での納付が難しい場合、特例として「延納」が利用できる場合があります。延納とは、相続税を分割払いで納付する制度です。納付を待ってもらう分、利子税が発生するため、支払額は当初の相続税額よりも増える点には注意が必要です。
 
延納を利用するためには、以下の要件を満たす必要があります。

・相続税額が10万円を超えること
 
・金銭で納付することが困難な事由があり、かつ、その納付を困難とする金額の範囲内であること
 
・延納税額および利子税の額に相当する担保を提供すること(不動産、動産、有価証券など)
 
・期限までに延納申請書に担保提供関係書類を添付して、税務署長に提出すること

延納でも支払えない場合、不動産や有価証券などの財産で納税する「物納」が認められることがあります。ただし、物納できる財産の価額は国税庁の評価額となるため、思っていたよりも評価額が低くなるケースや、逆に評価額が相続税額を超えてしまう場合もあります。
 
また、物納できる財産は限られており、管理が困難な不動産や市場価値が低いものは却下されることがあります。さらに、「不動産しか遺産がないが、実家を相続したい」という場合には、実家自体を物納に出してしまうと、結果的に実家を手放すことになるため、有効な手段とはいえません。
 

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実家を守るための選択肢

相続税が発生したとき、「現金が足りないけれど、実家は手放したくない!」という場合でも、いくつかの方法があります。
 
ここでは、延納以外の2つの選択肢をご紹介します。
 
■不動産担保ローンの活用
 
実家を売却せずに相続税を支払いたいなら、不動産担保ローンを活用する方法があります。これは、相続した実家を担保にして金融機関からお金を借り、その資金で相続税を支払うというものです。
 
不動産担保ローンを利用できれば、相続した不動産を売却せずに相続税を支払うことができます。ただし、返済が滞ると実家が競売にかけられるリスクもあるため、返済計画を慎重に立てることが重要です。また、借入金額や金利は金融機関によって異なるため、複数の金融機関で見積もりを取ることをおすすめします。
 
■不動産の一部売却
 
土地が広い場合や使われていない部分がある場合には、その一部を売却して相続税の支払資金を確保する方法も考えられます。例えば、大きな土地を分けて売却することで、売却益を相続税に充てることができます。
 
ただし、この方法には注意点があります。まず、一部を売却するには分筆(区画を分ける手続き)が必要になることがあり、測量費や登記費用が発生します。
 
さらに、売却益が出た場合には譲渡所得税もかかるため、売却した金額のすべてを相続税の支払いに使えるわけではありません。また、敷地が細長い土地や道路に接していない土地などは分筆が難しく、売却が困難なケースもあるため、事前の資金計画が重要です。
 

まとめ

相続は予期せぬタイミングで訪れることもあり、親子間で事前に話し合えていないケースも少なくありません。実際に相続が発生してから「現金が足りない! 相続税が払えない!」と慌てることもあるでしょう。
 
しかし、今回ご紹介したように、相続税の支払い方法にはさまざまな選択肢があります。延納や不動産担保ローン、一部売却など、実家を手放さずに済む方法も考えられます。
 
相続税の支払い方法に迷ったときは、ひとりで悩まずに専門家に相談してみてください。税理士やファイナンシャルプランナーのサポートを受けながら、あなたの状況に合った最適な方法を見つけましょう。
 

出典

国税庁 No.4205 相続税の申告と納税
国税庁 No.4211 相続税の延納
国税庁 延納・物納申請等
国税庁 土地や建物を売ったとき
 
執筆者 : 富澤佳代子
1級ファイナンシャルプランニング技能士・CFP®認定者/中小企業診断士

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