祖母から毎年「100万円」振り込んでもらえることになりました。贈与税対策だそうですが、祖母名義の口座で保管してもらった方がいいですか?
配信日: 2025.06.14

実は、この対応を間違えると、後々大きな税務トラブルを招くおそれがあります。今回は、贈与税対策における「名義預金」のリスクや正しい贈与の受け取り方について詳しく解説します。

行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
「もらったつもり」が一番危ない? 名義預金リスクとは
「お金は孫のために」という気持ちがあり、事実上は祖母から孫への贈与があったとしても、祖母の名義口座でお金を管理している間は、贈与が成立していないとみなされる可能性があります。
すでに贈与されてしまい預金名義人のお金ではないが、名義上はそのままになっている状態の預金のことを俗に「名義預金」と言います。つまり、お金のある口座の名義が祖母である場合、実質的には孫のお金であっても、税務上は祖母自身の財産とみなされる可能性があるということです。
名義預金と判断されると、主に2つのことが起こりえます。
・祖母が亡くなったときに、名義預金は祖母の遺産と扱われ、財産となる
・贈与が成立していないため、贈与税の非課税枠(年110万円)を活用できなかったことになる
つまり、「孫に毎年してきたはずの贈与」が無効とされ、まとめて相続財産として課税される可能性が高いのです。
場合によっては、高額な相続税やペナルティ課税が課せられることもあります。加えて、祖母の相続人が孫に代わってその預金を相続していき、肝心な孫に1円もお金が渡らないということも起こりえます。
正しく贈与を成立させるために必要なこと
では、祖母から孫への贈与を確実に成立させるためにはどうすればよいのでしょうか?ポイントは「財産の支配権を孫自身が持っているか」です。具体的には、次のような対応が重要です。
1.振込先は孫名義の口座にする
まず、振り込みは孫本人の名義の銀行口座にしてもらうべきです。祖母名義の口座にプールしておくと、名義預金とみなされてしまう危険性が高まるからです。
2.お金の管理も孫が行う
通帳・キャッシュカード・印鑑なども、孫自身が保管し、自由に引き出し・使える状態にしておくことが重要です。たとえ実際には使わずに貯金していたとしても、「使える権限がある」ことがポイントになります。
3.贈与契約書を作成する
できれば、贈与契約書も作成しておくと安心です。形式は簡単なもので構いません。「祖母が孫に対し、いつ、金100万円を贈与した」といった内容を記載した書面に双方が署名・捺印をして残しておけば、税務調査や遺産分割の際に贈与の事実を証明しやすくなります。
これらの対応をしっかり行っていれば、祖母の善意が正しく対外的にも対内的にも「贈与」として認められる可能性が高く、将来の相続時にも安心です。
贈与税の非課税枠と注意点
ここであらためて、贈与税の基本ルールも押さえておきましょう。日本では、年間110万円までの贈与には贈与税がかかりません(※)。
今回のように毎年100万円を贈与される場合、110万円以内であれば贈与税の申告も納税も不要です。ただし、注意したいのは、ほかにも贈与を受けている場合は合算して考えることです。
例えば、祖父からも50万円、叔母からも30万円贈与を受けたとすれば、100万円+50万円+30万円=180万円となり、基礎控除(110万円)を超えるため、贈与税の申告が必要になります。
将来を見越して贈与を受ける場合でも、「節税になるから大丈夫」と思い込まず、税制改正や具体的な金額感にも気を配ることが大切です。
まとめ
正しい贈与として成立させるためには、事実上の贈与があったとしても、贈与者名義のままの預金にしておくべきではありません。そうすることで、そのお金は祖母のものと判断され、自身がそのお金を受け取れないなど不要なトラブルを生じさせるおそれもあります。
祖母からお金をもらうということがあるのであれば、せっかくの善意を無駄にしないためにも、しっかりと形式的にな面の体裁も整え、将来の相続も含めてトラブルにならないよう準備をしておきましょう。
出典
(※)国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合
執筆者 : 柘植輝
行政書士