築25年の実家を相続し「2000万円」で売りに→半年後、不動産会社から「1500万円なら売れる」と連絡が! さすがに“もったいない”? ランニングコストも考えると売ったほうがいいのでしょうか?
配信日: 2025.06.11

しかし、空き家であってもランニングコストはかかるため、多少値引きしてでも早めに売却を進めたほうがいい場合もあります。本記事では、築25年の空き家になった実家を2000万円で売り出した人を例に、早めに売却したほうがいい理由などを解説します。
空き家にかかるランニングコスト
空き家を所有し続けていると、経済的なデメリットが発生します。その1つはランニングコストがかかることです。主なコストには、大きく分けて税金と維持管理費用があります。
まず、不動産を所有すると、毎年1月1日時点の所有者に固定資産税などの税金が課税されます。物件の条件によって税額は大きく変わりますが、戸建てなら土地・建物の固定資産税だけでも、年間10万~15万円ぐらいが一般的です。
価値が目減りする築25年ぐらいの建物については、税金も多少安くなる傾向はありますが、土地には劣化がなく、毎年課税されることに変わりはありません。
次に、維持管理費用ですが、金額が大きなものに建物の修繕費用があります。特に外壁や屋根といった建物の主要部分に不具合が生じると、一度に多額の費用がかかりがちです。マンションであれば毎月修繕積立金で徴収されますが、戸建てなら一定の金額を自分でプールしておく必要があります。
このような修繕費用は、建物の築年数や老朽化の程度によって大きく変わりますが、年間20万~30万円程度は見込んでおくほうが望ましいでしょう。空き家は、人が住んでいる家に比べ風通しが悪くなりがちで、建物が傷みやすい点にも注意が必要です。
ほかに、火災保険やシロアリ駆除などにも費用がかかります。もし、空き家になった実家が遠方で、こまめに除草や庭木の伐採などができないようなら、その外注費用の負担もあるでしょう。そう考えれば、ケースによっては、ランニングコストが年間50万円ぐらいになってもおかしくありません。
「誰も住んでいない空き家に、そんな費用をかけなくてもいいのでは」と考える人もいるかもしれません。しかし、空き家の適切な管理を怠ると、周辺環境に悪影響を与えるため、自治体から「特定空家」に指定されることがあります。
そうなると、税金の負担が一気に増えたり、過料を科されたりする可能性もあります。このように、空き家の所有には常に一定の経費が伴い、管理を怠ることにも、さまざまなリスクがあると認識することが大切です。
築25年以降、売却価格は下がりやすい
ランニングコスト以外にも、空き家を所有し続ける経済的なデメリットがあります。それは、一定の築年数が経過している戸建てでは、時間の経過による価格下落が大きくなりやすいことです。特に今回のような築25年の物件に関しては、その傾向がハッキリしています。
図表1に示しているのは、東日本不動産流通機構が公表している首都圏での「中古戸建住宅の築年帯別平均価格」です。もともと、築年によって価格は下落しますが、特に築25年ぐらいを境に成約価格の下落幅が大きくなっています。
図表1
公益財団法人東日本不動産流通機構 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)
例えば、築21~25年の戸建であれば、成約価格の平均は4122万円です。それに対し、それから10年経過した築31~35年の戸建は2964万円となり、1000万円以上価格が下がっています。これは、1年売却が遅れただけで100万円以上価格が下がると考えることも可能です。
このように、空き家でもランニングコストは必要な上、売却が遅れることで価格の下落が大きくなります。また、図表1の成約物件と新規登録物件の価格差を見ると、売り出した当初の価格より成約価格がかなり安くなり、築21~25年の物件ではその価格差は567万円です。
もちろん、不動産の売却では、個々の物件の状態や市況によって価格は大きく変動します。そのため、2000万円で売り出した実家の価格を、一気に500万円値引きして1500万円で売るのが妥当かどうかは、一概には言えません。
ただ、一定の築年数が経過した空き家の売却においては、売却の遅れに伴う経済的なデメリットが大きくなりやすい点には注意が必要です。
まとめ
空き家になった実家であっても、売却するなら高く売れるに越したことはないでしょう。ただ、価格に固執して売却が遅れると、税金などのランニングコストがかさむほか、築年数の経過による物件価格の下落で、経済的な損失が大きくなりがちです。
不動産の売却は金額が大きく、価格を下げる決断は容易ではありませんが、売却を依頼している不動産会社と相談の上、価格を再検討してみてはいかがでしょうか。
出典
公益財団法人東日本不動産流通機構 築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2024年)
執筆者:松尾知真
FP2級