父の遺産を兄が「6000万円」、私が「4000万円」相続しました。「相続税分は出す」と兄が言ってくれるのですが、贈与にはなりませんか?

配信日: 2025.06.10

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父の遺産を兄が「6000万円」、私が「4000万円」相続しました。「相続税分は出す」と兄が言ってくれるのですが、贈与にはなりませんか?
兄弟で父親の遺産を相続した際、受け取っている金額に差があると、善意で多く受け取っている側の人が「相続税はこちらが全額負担する」と言ってくれるケースもあるでしょう。
 
しかし、税金の肩代わりは、贈与税が課される場合があるため注意が必要です。
 
今回は、税金の肩代わりで贈与税が課される可能性がある理由や、課された場合の税額例などについてご紹介します。
FINANCIAL FIELD編集部

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相続税の肩代わりは贈与扱いになる場合がある

相続税を代わりに支払ってもらうと、相続税の金額分を贈与したとして贈与税の課税対象になる可能性があります。
 
通常、贈与されたか否かは、民法第549条の「贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる」の内容に沿っているかが判断基準です。
 
しかし、状況によってはお互いに贈与と認識していなくても、贈与とみなされる場合があり、「みなし贈与」と呼ばれています。相続税の肩代わりが贈与と判断されると、金額によっては肩代わりしてもらった側が贈与税の支払いをすることになります。
 

みなし贈与になると税額はいくら?

みなし贈与と判断されると、贈与税がいくら課されるか計算してみましょう。
 
条件は以下の通りです。
 

・相続人は長男と次男
・遺産1億円のうち6000万円を長男、4000万円を次男が相続
・債務や葬式代などは考慮しない
・次男の相続税を長男が肩代わり
・長男と次男はともに成人している

 
まずは、相続税額を求めます。
 
子ども2人が相続人のときの基礎控除は「3000万円+600万円×2人」となり4200万円です。1億円から基礎控除を引いた5800万円が課税対象になります。
 
複数人で相続するときの1人あたりの税額は、法定相続分で分けた場合の税額を求めたあとに、実際の相続割合で合計税額を分割した金額です。子ども2人で相続するときは2分の1ずつのため、2900万円がそれぞれの課税金額になります。
 
国税庁によれば、2900万円の税率は15%、控除額は50万円で、相続税額は1人385万円、2人の合計額は770万円です。
 
実際の相続割合は長男が5分の3、次男が5分の2のため、相続税額が長男462万円、次男が308万円になります。
 
次男が長男に308万円の相続税を肩代わりしてもらい、贈与だと判断された場合は、贈与税の基礎控除110万円を差し引いた198万円が課税対象です。
 
国税庁によると、税率は10%で、贈与税は19万8000円が課されます。なお、贈与税は1年間の贈与合計金額を基に計算するため、肩代わりしてもらった分以外に贈与がある場合、税額は変動する可能性があるでしょう。
 

一時的な立て替えなら課税されない可能性も

相続税を代わりに支払ってもらうと贈与税の課税対象になる可能性がありますが、一時的に立て替えてもらい、あとでお金を返すのであれば課税されないこともあります。
 
国税庁の公式サイトでは「親と子、祖父母と孫など特殊の関係がある人相互間における金銭の貸借は、その貸借が、借入金の返済能力や返済状況などからみて真に金銭の貸借であると認められる場合には、借入金そのものは贈与にはなりません」と示されているためです。
 
例えば、次男が長男に対して書面に「相続税を一時的に立て替えてもらい、期日までに返済する」といった旨の内容を記してお互いに所有したうえで支払ってもらえば、課税されないでしょう。
 
ただし、お金が工面できたときや出世払いのような約束の仕方では、通常の贈与と判断される可能性があるため注意が必要です。
 

完全に肩代わりしてもらったなら贈与税の課税対象になる可能性がある

税金を肩代わりしてもらうと、その金額分を贈与されたとして贈与税が課される場合があります。
 
今回のケースでは、兄から相続税の308万円を贈与されたとして、19万8000円の贈与税が課されるでしょう。
 
ただし、肩代わりではなく一時的な立て替えで後日返済する予定であれば、お金の貸し借りとして贈与税は課されない可能性があります。今後返す予定がある場合は、贈与税とみなされないためにも、いつまでに返すのかなどを書面に残しておくとよいでしょう。
 

出典

e-Govポータル法令検索 民法(明治二十九年法律第八十九号) 第三編 債権 第二章 契約 第二節 贈与 第五百四十九条(贈与)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版) 財産を相続したとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問) No.4420 親から金銭を借りた場合
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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