親の遺産を巡って兄弟で対立、「不動産を売る」かどうかで意見が割れています。どのように解決すればよいのでしょうか?

配信日: 2025.06.09

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親の遺産を巡って兄弟で対立、「不動産を売る」かどうかで意見が割れています。どのように解決すればよいのでしょうか?
相続で最も悩ましいことの一つに、不動産の処分(この場合の「処分」とは、「所有する(使用する)」「賃貸する(活用する)」「売却する」ことをいいます)があります。不動産になじみのある方は別として、「不動産を相続しても、どうしたらよいか分からない」と思われる方が大半ではないでしょうか。
 
遺産としての不動産を巡っては、意見が対立することも珍しくありません。そこで本記事では、「遺産分割の方法にはどのようなものがあるのか?」「不動産(遺産)について意見が分かれている場合、どのように解決すればよいか?」について解説します。不動産を相続する可能性のある方は、ぜひ最後までお読みください。
中村将士

新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

私がFP相談を行うとき、一番優先していることは「あなたが前向きになれるかどうか」です。セミナーを行うときに、大事にしていることは「楽しいかどうか」です。
 
ファイナンシャル・プランニングは、数字遊びであってはなりません。そこに「幸せ」や「前向きな気持ち」があって初めて価値があるものです。私は、そういった気持ちを何よりも大切に思っています。

遺産分割の方法にはどのようなものがあるのか?

遺産分割の方法には、以下の3種類があります。

(1)現物分割
(2)代償分割
(3)換価分割

遺産分割といえば、不動産は長男が相続し、預貯金は次男が相続するというように、遺産をそのままの状態(現物)で分割することを、まずイメージするのではないでしょうか。この最も一般的といえる分割方法を「現物分割」といいます。
 
しかし、現物分割の場合、相続人間で相続した財産の金銭的価値(経済的価値)が不釣り合いになってしまうことがあります。例えば、長男が相続した不動産は3000万円の価値があるのに対し、次男が相続した預貯金は1000万円しかないという場合です。
 
この不釣り合いを解消する方法として、長男が次男に対してお金を支払うということが考えられます。このように、遺産を現物で相続するものの、金銭的価値として不釣り合いになってしまった分をお金で清算(代償)する分割方法を「代償分割」といいます。
 
また、このような不釣り合いが生じるのは、不動産のような分割しにくい資産を現物分割するからだと考えられます。言い換えれば、分割しにくい資産を売却し、そのお金を分割すれば、遺産分割の不釣り合いは生じないということです。
 
例えば、遺産が不動産3000万円・預貯金1000万円で、相続人が長男と次男であった場合、現物分割だと不釣り合いが生じてしまいます。
 
そこで不動産を3000万円で売却して、その後、預貯金4000万円(1000万円+3000万円)を2000万円ずつに分割すれば、不釣り合いは生じません。このように、相続財産を売却(換価)して、そのお金を相続人間で分配する分割方法を「換価分割」といいます。
 

不動産(遺産)について意見が分かれている場合、どのように解決すればよいか?

相続を前に、相続財産となる不動産をどうするかについて考えておくことは、相続対策をするうえでとても重要です。特に、その不動産が実家のみといった場合、遺産分割でもめる可能性があります。
 
本記事のタイトルは、「親の遺産を巡って兄弟で対立、『不動産を売る』かどうかで意見が割れています。どのように解決すればよいのでしょうか?」です。この場合の対立の原因として、以下のことが考えられます。

●不動産を売りたい(手放したい)方と売りたくない(手放したくない)方がいる
●遺産を公平に分割することができない

不動産を売りたくない方がいる場合、換価分割による解決は難しいでしょう。換価分割は、不動産を売ることを前提としているからです。
 
不動産を売らずに相続する場合、不動産の名義(所有者)を誰にするのかが問題となります。不動産の名義については、1人の名義とする「単独名義」や複数人の名義とする「共有名義」があります。
 
不動産を手放したい方がいる場合、現物分割(共有名義)による解決は難しいでしょう。共有名義の不動産の売却は共有者全員の合意が必要であり、売りたくない方がいると契約は成立しません。不動産の「持ち分」を売却することも可能ですが、共有者以外の方が購入することはほとんどないため、やはり解決は難しいでしょう。
 
残る解決策として、不動産の名義を単独名義にするということが考えられます。単独名義にできる分割方法は、現物分割と代償分割ですが、遺産を公平に分割することができない場合、現物分割による解決は難しいでしょう。
 
代償分割は、不動産を単独名義にして他の相続人にお金(代償金)を支払うことで、相続人間の利害を調整することができます。不動産を売りたくない方が不動産を取得し、不動産を売りたい方は現金を取得します。代償金により不公平感も解消されるため、本記事における問題の解決策としては、有効なのではないでしょうか。
 

まとめ

本記事では、「遺産分割の方法にはどのようなものがあるのか?」「不動産(遺産)について意見が分かれている場合、どのように解決すればよいか?」について解説しました。まとめると、以下のようになります。

●遺産分割の方法には、(1)現物分割、(2)代償分割、(3)換価分割がある
●不動産(遺産)について意見が分かれている場合、代償分割を検討する

多くの方にとって、自宅以外の不動産を所有することは、ほとんどないかもしれません。そのため、相続によって自宅以外の不動産を所有する可能性が出てきたとき、その不動産を所有するべきか売るべきかを悩むと思われます。相続人が複数人の場合、不動産をどうするかについて、意見が分かれることもあります。本記事が、問題解決の一助となれば幸いです。
 

出典

日本司法支援センター 法テラス 遺産分割の方法(遺産の分け方)には、どのようなものがありますか。
 
執筆者:中村将士
新東綜合開発株式会社代表取締役 1級ファイナンシャル・プランニング技能士 CFP(R)(日本FP協会認定) 宅地建物取引士 公認不動産コンサルティングマスター 上級心理カウンセラー

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