80代の親が「山林」を所有しています。このままだと私が相続する予定なのですが、管理できそうにありません。どうすればいいでしょうか?
配信日: 2025.06.09

「相続しても管理できそうにない」という不安を抱える人は少なくありません。本記事では、山林を相続する前に知っておきたい基本的なポイントと、管理が難しい場合の具体的な対処法について解説します。

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目次
山林を相続する予定だけれど管理が不安……まず知るべき基礎知識
山林とは、不動産登記事務取扱手続準則によると「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」と定義されています。
つまり、地形や人工林・自然林といった区別に関係なく、耕したり肥料を与えたりせずに、竹や樹木が自然に育っている土地で、日本全国に点在しています。所有しているだけで直接的な利益は生まれにくく、実際には放置されているケースも珍しくありません。
ただし、山林にも固定資産税がかかる場合があります。また、木が倒れて他人の土地に被害を及ぼしたり、林道が崩れたりといったリスクもあり、「相続した以上は管理責任を負う」という点は軽視できません。
そのため、「自分では管理できそうにない」と感じたら、相続前の段階で対応策を検討することが大切です。
相続放棄、売却、名義変更……山林に関する主な対処法とは?
山林の相続にあたり、以下のような選択肢があります。
1. 相続放棄をする
家庭裁判所で申請を行うことで、相続全体を放棄できます。ただし、不動産以外の財産(預金など)も一切受け取れなくなる点には注意が必要です。
2. 他の相続人に相続してもらう(遺産分割協議)
他の兄弟や親族と話し合い、山林を別の人が引き継ぐ形にする方法です。ただし、管理責任が移るため、他の人が引き受けるかどうかが問題になります。
3. 売却する
山林の利用価値が低い場合は、買い取り手を見つけることは難しいといえます。しかし、場所や面積、森林資源の状態によっては、林業者や資材会社などが買い取ってくれることがあります。市区町村や民間業者に「不要林相談」を行ってみるとよいでしょう。
4.制度を利用する
2023年4月27日から「相続土地国庫帰属制度」が施行されました。申請して承認を受けた場合は、一定の負担金を支払うことで土地を国に引き取ってもらえます。
また、業者に料金を支払って土地を引き取ってもらうサービスもあります。ただし、詐欺被害の報告もあるため、利用する前に不動産などの専門家に相談しましょう。
一方で、実際には相続登記をせず、放置している人もいますが、2024年4月1日から相続登記が義務化され、正当な理由がないまま放置すると罰則の可能性があるため注意しましょう。
「相続しない選択」には期限や注意点もあるので要確認
相続放棄には原則として「自己のために相続の開始があったことを知ったときから3カ月以内」という期限があります。この期間を過ぎてしまうと、相続したとみなされてしまい、税金や管理責任が発生するおそれがあります。
また、放棄したいからといって「山林だけを放棄する」という選択はできません。相続放棄はすべての遺産に対して一括で行う必要があるため、現金や不動産など他の資産がある場合は慎重に判断しなければなりません。
早めに親と話し合って財産の全体像を確認しておくこと、必要に応じて司法書士や弁護士など専門家に相談することが、後悔を避けるポイントになります。
まとめ:放置せず、早めに選択肢を整理しよう
山林の相続は、一般的な不動産とは違い、「相続しても活用できない」「手間ばかりかかる」と感じる人が多い分野です。
とはいえ、放置してしまうと固定資産税が発生する場合や、登記義務に違反するリスクもあります。「今はまだ大丈夫」と思わず、早めに家族と話し合っておくことが大切です。
自分で管理できそうにないと思ったら、放棄・売却・譲渡など複数の選択肢を検討し、必要に応じて専門家の力も借りながら、無理のない形で将来に備えておきましょう。
出典
裁判所 相続の放棄の申述
東京法務局 相続登記が義務化されました(令和6年4月1日制度開始)~なくそう 所有者不明土地 ! ~
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー