更新日: 2019.06.28 贈与
教育資金をもらった場合、贈与税が非課税になる制度って?
「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、祖父母・父母などから子や孫などに、結婚や妊娠、出産、育児にかかる資金(1000万円以下)を贈与した場合、贈与税が非課税になるという制度でした。
一方、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」は、同じく祖父母・父母などから子や孫などに、教育資金(1500万円以下)を贈与した場合、贈与税が非課税になる制度です。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とは
簡単に、この制度のポイントを見ていきましょう。
〇期間
平成25年4月1日から平成31年3月31日まで
〇贈与者
祖父母・父母など(受贈者の直系尊属)
〇受贈者
30歳未満である者
〇非課税対象額
1500万円
〇資金の使い道
教育資金
・学校等に対して直接支払われる金銭(入学金や授業料、入園料、保育料、学用品の購入費、修学旅行費、給食費など)
・学校等以外に対して直接支払われる金銭(塾代や習い事などにかかる費用など)
・その他(定期券代や留学などにともなう渡航費など)
この制度の目的は、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」と似ていて、少子化対策や教育の経済格差の是正、子育て世帯の教育費負担の軽減などがあげられると思います。
確かに、この制度を使って、おじいちゃん・おばあちゃん、お父さん・お母さんから贈与を受けられるなら、子どもや孫にとっては十分な教育を受けられる可能性が広がります。
特に大学などの高等教育には多額のお金がかかるため、お子さんやお孫さんのいるご家庭にとっては大助かりです。しかし、おそらくですが、この制度は一般的にそれほど活用されていません。
実務的にも、この制度は「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」とともに案内することがありますが、関心はあれども子育て世帯でこの制度を活用しているというご家庭には出会ったことがありません。内容としては悪くはないんですけどね。
平成31年度の税制改正により、23歳以上は教育資金の範囲が限定されることに
平成31年度の税制改正案では、どうやら少し内容に変更があるようです。適用期間の終了が、平成31年3月31日から2年間延長される見込みです。
そして、ここが重要なのですが、23歳以上の者の教育資金の範囲が、(1)学校等に支払われる費用、(2)学校等に関する費用(留学渡航費用等)、(3)学校等以外に支払われる費用で、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講するために支払われるもの、に限定されるそうです。
原則的に受贈者は30歳未満の者とされていますが、23歳以上の者に対しては、上記(1)~(3)について制限されます。
これは、一般的には大学を卒業した以降の人が対象となるため、例えば、大学院に通う、海外の大学に留学する、より高度で専門性の高い学問を学ぶ、といったことを望む学生に対する支援なのかもしれません。
ただ、「結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」にしろ、「教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置」にしろ、少子化対策や財産の移転、教育費負担の軽減などが目的になっているといっても、一般的な世帯にとっては馴染みの薄い制度のように思えます。
たくさんお金を持っている高齢者世帯から子育て世帯に資産を移すという意味では、経済上の利点はあるかもしれません。しかし、贈与税という、それほどメジャーではない税金を活用する慣習が薄い状況では、あまり効力がないのかもしれませんね。
次回は、「高校の無償化」についてお伝えしていきます。
執筆者:重定賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)