夫の遺産が「1億8000万円」! 子ども2人と私で相続したのですが、配偶者の私は「税金」がかかりませんよね?
配信日: 2025.06.07

ただし、適用条件や必要書類があるため、実際に利用する際は忘れないようにしましょう。今回は、配偶者控除の概要や控除を適用する際の税額の計算例などについてご紹介します。

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配偶者が利用できる控除
相続税の基礎控除は「3000万円+法定相続人数×600万円」です。基本的には、相続財産から基礎控除を差し引いてから税額を計算します。しかし、夫や妻が遺産を相続する際にかかる税金は、基礎控除のほかに「配偶者控除」も差し引いて計算できます。
国税庁によると、配偶者控除は、実際に取得した正味の遺産額が1億6000万円または配偶者の法定相続分に相当する金額のどちらか金額が高い方までは相続税がかからない制度です。
もし、1億6000万円を超えた金額の相続があっても、法定相続分の範囲であれば控除されます。ただし、配偶者控除は申請しないと適用されません。国税庁によると、配偶者控除の申請は相続税の申告書に適用を受けることを記載したうえで、以下の書類を用意します。
・戸籍の謄本など
・遺産分割協議書の写しもしくは遺言書の写し
・相続人全員の遺産分割協議書に押印された印鑑証明書
控除を適用するときの相続税の計算方法
国税庁によると、相続税額は、以下の手順で計算できます。
(1)遺産総額から葬式費用や債務などを引く
(2)暦年贈与のうち相続の対象になる財産を加算する
(3)基礎控除額を引く
(4)(3)の金額を法定相続分通りに相続した場合の各相続人の税額を計算する
(5)(4)の税額を合計し、実際の相続割合に応じて各相続人に当てはめる
(6)実際の相続割合に応じて分けられた税額から、配偶者控除を始めとする適用される控除を差し引く
例えば、妻と子ども2人で1億8000万円の遺産を法定相続分で相続したとしましょう。なお、葬式費用や債務、暦年贈与などは考慮しないものとします。
法定相続人数は3人なので、基礎控除額は4800万円です。相続財産から4800万円を引いた1億3200万円を法定相続分で妻と子どもで2分の1ずつ分けた場合の各相続人の税額は表1のようになります。
表1
法定相続分 | 税率、控除額 | 税額 | |
---|---|---|---|
妻 | 6600万円 | 30%、700万円 | 1280万円 |
子ども | 3300万円 | 20%、200万円 | 460万円 |
子ども | 3300万円 | 20%、200万円 | 460万円 |
※筆者作成
税額の合計は2200万円です。これを、法定相続分通りに再分配すると妻は1100万円、子どもは550万円ずつになります。
今回は法定相続分通りに相続しているため、配偶者控除により妻に相続税はかかりません。そのため、実際の相続税の負担は子ども2人の550万円ずつ、合計1100万円となります。
子どもも相続するときの注意点
配偶者と子どもで相続をした際、子どもにのみ税金がかかるケースもあることから、配偶者が子どもの税金を負担しようと考える方もいるでしょう。しかし、税金の肩代わりは、その金額分を贈与したと判断される可能性があるので、注意が必要です。
もし、贈与した金額が基礎控除の年間110万円を超えていると、超えた金額に対して税金が課されます。今回のケースで税金を肩代わりし、贈与と判断された場合で、子どもが成人しているとすると、子ども1人につき「550万円-110万円」の440万円が課税対象です。
国税庁によれば、税率は20%、控除額は30万円のため、子どもはそれぞれ58万円の贈与税を支払うことになります。
配偶者は法定相続分相当額か1億6000万円までなら税金がかからない
相続税の配偶者控除では、法定相続分相当の金額か1億6000万円のうち高い方の金額までなら、相続税はかかりません。ただし、配偶者控除を適用するには相続税の申告書に必要事項を記入したうえで、必要な書類を用意しましょう。
複数人で相続するときは、一度基礎控除のみで各相続人の税額を計算してから、最後に配偶者控除を適用します。そのため、配偶者控除の金額がほかの相続人の税額に影響を及ぼすことはありません。
なお、自分に税金がかからないからと子どもの相続税を代わりに負担すると、贈与とみなされる可能性があるため注意しましょう。
出典
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版)家族と税 配偶者からの相続と税額軽減(配偶者控除)
国税庁 パンフレット「暮らしの税情報」(令和6年度版)財産を相続したとき
国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー