兄がいるけど「父の介護」は、専業主婦の“自分だけ”が担当! それでも相続は「平等」に分配される? 介護した分、自分が多くもらえないのでしょうか? 介護負担の“相続への影響”とは

配信日: 2025.06.07

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兄がいるけど「父の介護」は、専業主婦の“自分だけ”が担当! それでも相続は「平等」に分配される? 介護した分、自分が多くもらえないのでしょうか? 介護負担の“相続への影響”とは
超高齢社会が進行し、介護は社会問題のひとつとなっています。親の介護についても子どもたちで平等に行いたいものですが、居住地の問題や親子関係によって、誰かの負担が大きくなることもあるでしょう。
 
このようにきょうだい間での介護の負担が異なる分、せめて相続を多くもらいたいと思う人もいるかもしれません。法律上、介護の負担を相続の受け取り額に反映させることはできるのでしょうか。本記事では、「介護負担」は相続においてどのように影響を与えるのかについて解説していきます。
新川優香

相続人は誰がなるもの?

民法上、法定相続人には優先順位があります。亡くなった人に配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人となり、亡くなった人の子・孫・父母・祖父母・きょうだいが状況に応じて相続人となります。
 
仮に家族関係が「父・母・兄・妹」で、母がすでに亡くなっている場合、父の遺産の相続権は子どもである「兄・妹」にあります。また、相続人が子のみの場合は、子の人数に応じて平等に分配されるので、兄と妹はそれぞれ全体の2分の1ずつを相続分として受け取ることになるのです。
 

「介護」したら、遺産は多くもらえる?

基本的にきょうだい間での相続は平等に分配されます。
 
しかし、亡くなった人の看護や介護、事業の手伝いなどの貢献が、ほかの相続人と明らかに異なる場合は「特別な貢献をした」として、その貢献が相続に反映されることがあります。これを「特別寄与分」といいます。ただし特別寄与分が認められるには、単純に「兄よりもたくさん介護をした」という漠然としたものではなく、いくつかの要件が必要です。
 
ひとつめは「財産の維持に貢献したか」という点です。子が介護をしたことによって、外部ヘルパーを利用しなかった、あるいは最低限の利用で済んだため、介護費用を抑えることができた場合、財産維持に貢献したと判断されるでしょう。
 
ふたつめは「介護を無償で行ったか」です。もし介護のために実家に行くたびに父から「お礼だから受け取ってくれ」となんらかの「報酬」を受けていた場合は、すでに介護に対する対価を受け取っているとみなされます。そのため相続で差をつける必要がないと解釈されてしまうこともあるでしょう。
 
最後に、「介護等の貢献の度合いが相続人間で明らかに不公平」と思われるときです。今回のように兄は一切介護に関与せず、妹が介護のほとんどを担っていた場合、妹の貢献が相続に反映されやすくなります。
 
ただし、特別寄与分は当然に認められるものではなく、遺産分割協議の際に自身で「貢献による寄与分」を主張しなければなりません。もしも協議でまとまらない場合は、家庭裁判所に請求することもできます。
 

相続について生前から話し合っておくべきポイント

遺産相続に関して、法定相続通りに分配するのでは「不公平」が生じるのではないかと危惧することもあるでしょう。このような場合は、いざ相続が始まってから自分の権利を主張するのではなく、生前から話し合っておくことをおすすめします。
 
今回のようにきょうだい間で就業形態の違いや居住地の距離の問題で、親の介護の関わり方が異なり、一方に大きな負担がいくことは珍しくありません。このような場合は、あらかじめ相続を多くもらうこと条件に介護を担う旨を話し合う、相続の割合について「遺言書」として親に文面を作成してもらうのもいいでしょう。
 

介護は子にとって負担となりやすいが、相続で考慮されることも

介護は長く続くこともあり、体力面でも金銭面でも大きな負担となることがあります。本来は子であるきょうだいで平等に負担できるのが理想ですが、個々の事情で誰かに大きな負担がいくこともあるでしょう。
 
相続の「特別寄与分」は、そんな相続人の不平等を少しでも解消するためのものです。相続の問題は場合によっては親族でもトラブルになることもあります。後回しにせず、親が健在なうちから親子、きょうだい間で介護の負担やそれに伴う費用の捻出先、相続の割合について納得のいくように話し合っておくことも大切です。
 

出典

e-Gov法令検索 民法
 
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級

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