孫が民間学童クラブに通っています。習い事の送迎があり助かるそうですが、月額5万円もするので全額援助したいです。税金はいくらかかりますか?
配信日: 2025.06.04


田久保誠行政書士事務所代表
特定行政書士、CFP®、1級ファイナンシャル・プランニング技能士
宅地建物取引士、2級知的財産管理技能士、著作権相談員
行政書士相談センターの相談員として、相続等の相談業務や会社設立、許認可申請業務を中心に活動している。「クライアントと同じ目線で一歩先を行く提案」をモットーにしている。
目次
孫に教育資金を援助すること
まず、孫へ教育資金を援助することは、孫への生前贈与です。贈与とは、贈与者(この場合は祖父母)と受贈者(孫)との契約で、双方の意思が合致すれば契約が成立する諾成契約です。
一般的に贈与には贈与税がかかりますが、一定の要件を満たせば贈与税はかかりません。今回はその要件に当てはまっているかどうかを確認してみます。
入学金や学費等の教育資金は?
まず、祖父母や親等の扶養義務者からの生活費や教育費に関して、通常必要と認められるものについては贈与税の課税対象になりません。
<相続税法第二十一条の三>
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの。
通常必要と認められる教育費とは、具体的には、子や孫を教育するうえで通常必要と認められる学費や教材費、文房具、通学費(定期券代等)修学旅行の費用等が挙げられます。
学童の費用はどうなるの?
学童の費用が通常必要と認められるものかどうかに関してですが、こちらも贈与税の対象にはなりません。
ちなみに、その費用のなかには、施設内の備品・図書を購入するために徴収する費用、傷害・賠償保険料の負担金、暖房費や光熱水費のような施設費等のように通常領収される費用についても同様に費用に含むことができます。
また、おやつ代など活動で使用する物品の費用も、これらの主体の名義で領収書が出るものについては贈与税の対象となりません。
具体的にはどのように支払えば非課税になるの?
やみくもにお金を出してしまうと、贈与税が発生することもあります。ご相談者さまが学童の費用を出すのであれば、「毎月5万円」をその都度払っていく必要があります(都度贈与)。その際は使途が客観的に明確になるように領収書を保管しておき、支払いは振り込みにして贈与額や贈与日を明確にしておくことをお勧めします。
また、ご相談のケースであれば年間60万円(5万円×12ヶ月)となりますので、ほかに贈与をしなければ贈与税の暦年贈与を利用してもよいかもしれません。ただし、複数年にわたる暦年贈与は「定期贈与」にあたる場合があるため、注意する必要があります。
「定期贈与」とは、定期的に一定額の贈与をする契約を結ぶことです。
例えば、小学校1年生から6年生までの6年間に60万円ずつ贈与するといった場合です。そうなるとご相談のケースでは、合計360万円の定期金に関する権利を贈与したとみなされて、税金が課されてしまいます。
さらに、将来的に大学等の授業料等を負担する場合、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」の条件内であれば1500万円まで贈与税はかかりません。これは、「必要な都度贈与する」場合と異なり、現時点で孫が大学等に入っていない場合でも、将来の大学費用を一括で渡しておくことが可能です。
「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」には、以下の4つの注意点があります。
1. 専用口座の開設と領収書提出が必須
2. 受贈者が30歳を過ぎると残資金に贈与税がかかる
3. 贈与者が死亡した場合、相続税が適用となる
4. 適用金額は受贈者1人あたりで決まる
どの方法を選ぶのかは、ご自身の資産状況等によって変わる
今回のご相談は「学童」ということで、額的にも贈与税の暦年贈与でも問題ありませんし、「教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置」のうちの一部を使うことも可能です。非課税になることは重要な要素ですが、ご自身の資産状況を考えたうえでどの方法を選択するか決めるのがよいでしょう。
出典
デジタル庁 e-GOV 法令検索 相続税法
文部科学省 教育資金の一括贈与に係る贈与税非課税措置について
執筆者:田久保誠
田久保誠行政書士事務所代表