母から「毎年110万円までの贈与なら税金はかからない」と言われましたが、本当に大丈夫でしょうか?
配信日: 2025.06.02

ただ額を守ればいいというものではなく、正しく手続きをしないと、のちのち相続時にトラブルになる可能性もあります。
本記事では、贈与税の基礎控除の仕組みや、非課税で贈与を受ける際の注意点、相続時に問題を残さないための対策について解説します。

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贈与税の基礎控除とは? 110万円まで非課税の仕組み
贈与税とは、親や親戚などの個人から財産をもらったときにかかる税金です。しかし、税法上、1年間に110万円までは「基礎控除」として非課税となっており、これを超えた分にのみ贈与税が課税されます。
例えば、母から1年間に100万円の現金をもらった場合、それは110万円以下なので贈与税はかかりません。一方で、130万円をもらった場合は、110万円を超える20万円に対して贈与税が発生します。
この基礎控除は「1人の受贈者」ごとに適用されるため、複数の人から贈与を受けた場合は、合計額が110万円を超えていないかを確認する必要があります。例えば、母から60万円、父から70万円の贈与を受けた場合は合計130万円となり、20万円分が課税対象となります。
また、贈与は暦年(1月1日〜12月31日)単位で判断されるため、贈与のタイミングにも注意が必要です。
非課税でも必要な手続きと注意点
「税金がかからないなら何もしなくていい」と思われがちですが、非課税の贈与であっても、後のトラブルを避けるためにいくつかの手続きをしておくことが重要です。
まず、贈与契約書の作成は非常に大切です。これは親子間であっても、贈与が「贈与者の意思」に基づいて行われ、「受贈者が受け取った事実」があることを証明するものになります。簡単なもので構いませんので、「誰が・いつ・いくら・どのように贈与したか」を書面に残しておきましょう。
贈与は、口座振込での行うことをおすすめします。現金手渡しの場合、後から証拠が残らず、「名義預金(形式だけ名義を変えたお金)」とみなされてしまうことがあるからです。銀行振込であれば、贈与が実際に行われた証拠として残ります。
そして、受け取った財産は自分で管理することも重要です。贈与を受けた本人が自由に使える状態でなければ、税務署から「実質的な贈与ではない」と判断されることもあります。
相続時に問題が生じないための対策
生前に贈与を受けていても、贈与の記録が曖昧だったり、贈与者が実際に財産を管理していたりするような場合は、相続時に「これは本当に贈与だったのか?」と疑問を持たれ、相続財産として扱われることがあります。
特に注意すべきなのは、名義預金です。これは、名義は子どもでも、実際の管理や通帳・印鑑の保管が親であった場合などに問題になります。税務署は過去の預金の動きや、贈与時の管理状況まで調べることがあるため、受け取ったお金は必ず自分で管理しましょう。
また、毎年同じ金額を贈与するようなパターンにも注意が必要です。一見すると問題なさそうですが、税務署に「はじめから数年分まとめて贈与する意図だった」と判断されると、定期贈与とみなされ、全額に対して贈与税が課されることがあります。
これを避けるには、毎年贈与契約書を作成し、その都度贈与の意思を明確にし、金額や贈与のタイミングを毎年変えるなど、定期的・計画的な贈与とみなされないように工夫をすることが有効です。
安心して贈与を受けるために
贈与税の基礎控除110万円は確かに存在しますが、「税金がかからないから安心」と思い込んで手続きを怠ると、思わぬリスクを背負うことになります。贈与契約書を作る、振込記録を残す、財産は自分で管理するなど、これらの基本を守ることが、後々のトラブルを防ぐ鍵です。
また、贈与と相続は密接に関係しており、親が亡くなったときに問題にならないよう、今から記録をきちんと残しておくことが大切です。不安がある場合は、税理士などの専門家に相談するのもよいでしょう。安心して贈与を受け取るために、少しの手間を惜しまないことが、将来の大きな安心につながります。
出典
国税庁 No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー