更新日: 2020.04.07 贈与
無利子で返済期間を定めずお金を貸したことにした。これで贈与税対策はばっちり?
原則として、贈与税は1年間で受けた贈与の合計額が110万円を超える場合、その超える部分について発生します。そこで、節税のため譲り受けた財産を形式上借りたことにしたらどうでしょうか。
借りたことにしてしまえば譲り受けたことにはならないため、贈与税は発生しないように思われます。しかし、本当にそれで贈与税を節税することができるのでしょうか。
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士
2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。
広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。
形式上は貸し付け、実質は贈与
Aさんは父親から自由に使えるお金として2000万円の贈与を受けました。
しかし、それでは110万円を超える部分(1890万円)に贈与税がかかってしまいます。そこで、父親は次の条件によって形式上Aさんに2000万円を貸し付けたことにしました。
・利子は発生しない
・返済期限は定めない
さて、このような条件で貸し付けたことにすれば、Aさんに対して贈与税は発生しないのでしょうか。
形式上貸し付けたことにしても贈与税は回避できない
結論から述べると、この事例のAさんは贈与税を回避することができません。確かに借りたお金はいつか返さなければならず、その点で贈与とは明確に異なります。
しかし、今回のAさんと父親の間の貸し借りには、利子の発生もなければ返済期限も定められていないうえ、貸し付けというのもあくまで形式上の話です。
利子の発生もないうえ、返済期限もなく、さらに形式上においてのみの貸し付けとあれば、これはもはや実質的に贈与であるというほかなりません。そこで、国税庁ではこのような事例に対し、次のような見解を示しています。
実質的に贈与であるのにもかかわらず形式上貸借としている場合や「ある時払いの催促なし」又は「出世払い」というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます。(国税庁 タックスアンサーNO.4420から引用)
つまり、この事例におけるAさんと父親の、お金の貸し付けは贈与としてみなされ、2000万円の贈与があったものとして(非課税分を差し引いた1890万円に)贈与税が発生する。
ということになるのです。
借入額や利子にも注意
仮に、父親がAさんに対して返済期限をきちんと定めてお金を貸し付けたものの、無利子としていたらどうでしょうか。
この場合、Aさんは利子を払わないという利益を得たということになり、その利益相当額に贈与税の発生する可能性があります。次に、Aさんの収入に対して借りた金額が過大であったらどうでしょうか。たとえば、Aさんが長年無職であって、今後返すアテもないような場合です。
このように返済能力からみて借入金額が過大であるような場合も贈与とみなされてしまう可能性があります。
贈与でない場合であっても個別具体的な事情次第では贈与と判断され、贈与税が発生してしまう可能性があることを覚えておいてください。
参考:国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)贈与税 No.4420 親から金銭を借りた場合
贈与税についての相談は最寄りの税務署などへ
贈与税から逃れる目的で贈与を貸し付けと偽ることや、本当に貸し付けていたとしても返済能力の有無などによっては贈与とみなされてしまい、贈与税の発生してしまうことがあります。
ただし、すべての贈与に対して贈与税が発生するわけではありません。
扶養義務者(親子や夫婦間など)から受ける生活費の援助など、一定の条件に該当する場合には贈与税の発生しないことがあります。
参考:国税庁 タックスアンサー(よくある税の質問)贈与税 No.4405 贈与税がかからない場合
とはいえ、予期しない贈与税の発生は将来設計に影響を及ぼしかねません。贈与税が発生してしまうか心配な場合は、最寄りの税務署などへ相談した方がいいでしょう。
出典:
国税庁タックスアンサー(よくある税の質問)贈与税 No.4420 親から金銭を借りた場合
国税庁タックスアンサー(よくある税の質問)贈与税 No.4405 贈与税がかからない場合
執筆者:柘植輝(つげ ひかる)
行政書士